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魔王倒しちゃった  作者: ダンディー
3章 友達作ります。
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5の二乗 指との戦い、そして少年の決意

俺は1つあることに気づいた。


ヴィリアの呪いは、従来呪いとは少し違う。呪いと言うよりかは、寄生と言った方が、正しいのではないか?


なぜなら、呪いからはヴィリアとは違う魔力を感じられるからだ。


だから瞬間移動を使って俺はヴィリアの背中に手を当てた。


そして、思いっきり自分の魔力をヴィリアに流し込んだ。


こうすればヴィリアの魔力の許容量が限界を越え、呪いをヴィリアの体から追い出すことができるのではないか?と思ったのだ。


ぶっちゃけ、普通の人は他人に魔力を流し込むなんて芸当は出来ない。


しかし、俺は魔石の魔力測定をごまかす際に魔力の操作を習得していた。


というのは、魔石の前で魔力を圧縮しても何も意味が無い。だから、俺は圧縮した魔力を体の、魔石から1番遠い部分に遠ざける修行をしていたのだ。


そのおかげで魔力を他人に与える!なんてことも出来るようになってしまったのだ。


何はともあれ、過去の修行が今役に立ったのが、幸いだ。


俺がヴィリアに魔力を流し込んでいると、1つ奇妙な点に気づく。


この人...


限界魔力量多くない?


いつまでたっても魔力量が限界を超えない。


そんなことあるのか?


もう20分の1は流し込んでいるぞ。


んー...


もうちょっと頑張るか。


そう考えていると、突然ヴィリアに魔力が入らなくなったのを感じた。


ようやく来た。ヴィリアの限界だ。


「すまないヴィリア。もうちょっと耐えてくれ!」


俺は無理やりヴィリアの体に、魔力流し込む。


すると。


出てきた。


呪いの元凶が。


そして、俺は驚愕した。


ヴィリアも驚愕していた。


ヴィリアの体の中から出てきたのは、なんと指だったのだ!


「なんだこれ?」


俺はつい、口から言葉を出してしまう。


その直後、ぶおおおおおん、と大きな音が当たりを響かせる。


ものすごい威圧。


ものすごい気配。


まるでアニメのラスボスのような存在感。


指は次第に人の形へと変わっていく。


そして、言葉を発した。


「我の眠りを妨げるのは誰だ!我の敵は誰だ!」


そこから発せられたのは圧倒的な魔力。俺じゃなかったら動くこともままならないだろう。


「我の眠りを妨げるものはどんなものでも許されない。名乗り出ろ。我が眠りを妨げたものよ。」


俺はやつを睨む。巨大なプレッシャーを抱えながら。


「お前か私の眠りを邪魔した者は?」


呪いの正体は俺対して指を指した。


俺は10年前、魔王を倒してから、初めて冷や汗をかいた。


世の中には化け物が存在するもんだな。


不幸中の幸いか。ここはあまり人が通らないため、被害者は出なかった。


しかし...


これ程の魔力を浴びると、一般人は耐えられないだろうな。シュナでさえも気を失うかも。


さて、こいつに対してどう返すのが正解なのだろうか?


はいそうです。そんなこと言ったら、おそらく街中で強力な魔力をぶっぱなされるだろう。


ほかの返事でも、ろくな逃げ道はない。ならば、


「テレポート。」


俺は静かに言う。


半径10メートルにいる生物を別の場所へ移動させる魔法、『テレポート』を使った。半年に1度しか使えないのが難点だが、なかなか便利な魔法だ。


俺はこれを使って、呪いの指と、気絶しかけているヴィリアを巻き込んで、広い平原へとワープした。


街に被害を騙さないためだ。


ぶっちゃけこれまで言ってなかったが、俺が住んでいるのは王都だ。


そんなとこで魔法を撃たれたら、被害はただじゃ済まないだろう。


だから、ヴィリアを巻き込んででも、他の場所へ移動させてもらった。


「え...?なん..で?ここ....は...?」


ヴィリアは、気絶しかけてるのに無理に言う。

だから俺はヴィリアに返した。


「ヴィリア、ゆっくり寝てて。もう今日は疲れたでしょ。」


そりゃ魔王の20分の1の魔力を体内にぶち込まれたんだ。気を保っている方がすごい。


俺がヴィリアに喋りかけた直後、呪いの指が喋りだした。


「俺を無視しているのか?ガキ。」


俺は答えない。


「ならば、貴様ら2人と灰にしてやる。」


奴は俺に手をかざす。


こいつは何をしているんだ?


そう思っていると、突然手の平から炎が飛んできた。


なっ!


「バリア!」


もちろんこの程度の攻撃、俺なら簡単に防げる。


しかし...


「無詠唱魔法!?」


俺はつい、言葉を漏らしてしまった。


しかし、それくらい俺は驚愕していた。


なぜなら、やつは今、呪文や魔法名を唱えずに魔法を使ったからだ。


これはこの世界の常識だが、魔法を使うには、何かしらの呪文などを唱える必要ある。


それは、アニメとかである長い呪文もあるし、魔法名を唱えるだけでいい呪文もある。


でもとにかく、呪文は唱えなければならない。


だから、何も言葉を発さずに魔法を使うことは、基本できないのだ。


もちろん俺でも。


しかし、やつは今無詠唱で魔法を使った。


何も呪文を唱えずに魔法を使った。


「そんな...ありえない。」


俺は呪いを睨む。そして、戦闘態勢に入る。


「身の程をまきわえろガキが。

たかが人間ごときが、我に敵対するなど、決して許されん。地獄に落ちやがれ!」


やつはそう言い残し、自身の周りに無数の炎の塊を生成する。


そして、それを一つにまとめ、俺に対して放つ。


「くっ...」


俺はバリアで防ぐ。しかし、勢いが強すぎる!


俺は簡単に弾かれた。その直後、バリアが弾けた音が聞こえる。


「そんなバカな!魔王の力だぞ。こんな簡単に...」


「魔王?私をそんな虫けらと一緒にするな。」


奴は俺の後ろに超高速で回り込む。


まずい!


「エンチャント!」


俺は叫ぶ。


しかしやつは止まらない。俺に対して超高速でパンチを繰り出す。俺はエンチャントで強化された肉体でそれを避ける。


その直後、もう一度パンチを受ける前に、俺は瞬間移動でその場を離れた。


「ルームワープ!」


まずは間合いをとる。


戦いの常識だ。


「なぁ、お前。どうしてヴィリアの体の中にいたんだ?」


俺はやつに喋りかける。すると、呪いの指は間を開けずに警告してきた。


「敬語を使え小僧。我は神だぞ。」


「神?何を言っているんだお前。」


呪いは右手に闇の玉を作り出し、俺に放った。


「バリア!バリア!バリア!バリア!バリア!」


俺は自分の前に5枚バリアを貼る。


バリン。バリン。バリン。バリン。


やつの魔法は俺の魔法の壁を、4枚破壊した。


なっ。馬鹿な。


俺のバリアが破られることなんか今までなかったのに。


「我を敬え、我を讃えよ、我が名は破壊神アルゴ。」


呪いはそう叫びながら、再び黒い玉を作り出し、俺に放った。


「バリア!バリア!バリア!バリア!」


俺は4枚の壁を生成する。しかしそれも簡単に破られる。


なんだこいつ...


なんだこのパワーは...


破壊神アルゴ。そんな名前の神など聞いたことがない。


しかし、こいつの力は異常すぎる。


「チャンスをやる。少年よ、我の仲間になれ。お前は強い。お前なら俺の部下も軽々超えてゆくだろう。

しかし、お前はここで死ぬ。惜しいとは思わないか?

お前には才能がある。その才能、俺が利用してやる。」


俺はやつを、破壊神アルゴを睨む。


「5秒まつ。その間に覚悟を決めろ。」


やつは再び自身の右手に闇の玉を作り出す。


たが、さっきの物とは全然違う。さっきよりも濃い密度で、莫大な量の魔力が込められている。


これを受けたら俺は一溜りもないだろう。


「5...4....3...」


破壊神アルゴはカウントダウンを始める。


神に対して今の俺は何ができるのだろうか?


やつを倒す?


無理だろ。


だってやつは破壊神だ。


実力は本物。


今の俺に太刀打ちできるわけが無い。


「2...」


だったらどうする。


大人しくやつの部下になるか?


やつの手下として、これから働くか?


しかし、それでいいのか?


やつは破壊神だぞ?


「1.....」


ダメだ。


俺はどうしたらいい?


なんと答えればいい?


俺の思考回路は完全に停止した。


今の俺に何ができるかなんて、分からなかった。


ふと、何も考えずに俺はヴィリアの方を見る。


そして思う。


彼女はどんな人生を送ってきたのだろうか?


呪いを持って生まれ、周りから嫌われ続け...


きっと彼女は1人でたたかいつづけてきたのではないか?


味方なんてどこにもいない。


たった1人。


完全な孤独の中できっと彼女は戦い続けたんじゃないだろうか?


もし俺がその立場なら、俺はどう、人生を送ってきたのだろう。


どうやってその苦しみを乗り越えられただろう。


1人で戦い続けた彼女に対して、今の俺に何ができるだろうか?


いや、俺に出来ることは何も無い。


俺は彼女の苦しみを知っている訳ではないのだ。


彼女のその苦しみがどんなもなのか、想像はできる。


しかし、想像することしか出来ない。


ならば、せめて、俺に出来ること。それはなんだろうか。


「覚悟は決まったか?少年。」


破壊神アルゴは口を開く。


「ああ、決まったさ。」


俺は返す。


長い沈黙。完全な無音。


風などのような自然の音でさえも、その場での発言は許されない。


先に喋りだしたのは破壊神アルゴだった。


「その目は、俺の部下になるつもりはないみたいだな。」


俺はその言葉に答える。


「あぁ、その通りだ。」


そして俺は続ける。


「そこに倒れている少女がいるだろ?彼女の名はヴィリアと言うんだ。彼女は誰とも話そうとせず、いつも孤独に生きていた。とても可愛らしい女性だよ。」


「・・・・・。

だから...なんだと言うんだ?」


「なぜ彼女が常に孤独だったか、知っているか?原因はお前なんだよ。破壊神アルゴ。」


「ほぉ、だがそれがどうした。所詮は人間なのだろ?私が知ったことでは無い。」


「そうだな。お前にとってはちっぽけな存在だ。弱くて、醜い、悲しい存在だ。だがな、そんな弱くて醜くて、悲しい存在である彼女は、たった1人で、必死に何年間も戦い続けてきたんだよ。」


破壊神アルゴの顔が変わる。


俺は俺の信念を貫いた。


「神とはいえ、所詮ただの指であるお前が調子に乗るんじゃねぇ!俺は彼女のために戦うことに決めた。

よく聞け!

俺の名はライン。

破壊神アルゴ...

お前をこの世から消し去る存在だ!」


俺は1人、やつへ、自分の決意を言う。やつは少し黙り込んだあと、答える。


「ならば、死ぬがいい。そして、地獄の底で詫びることだ!」


俺たちは、互いに向かって、走り出した。


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