46÷2話 かけられた呪い。逃げられない運命。
「なぁ、ボス。本当にこの計画で成功するのか?いや別にボスを疑ってる訳じゃないけど...
あのミルド魔法学園に侵入なんて。」
そこはどこかも分からない薄暗い部屋の中。
そして、そこにいるのは、十数人の盗賊達と彼らを仕切るリーダー。
「もしかして自信が無いのかヴァルギー?
ミルド学園は国でトップの魔法学園なんて呼ばれてはいるが、所詮は生徒の集まりだ。誘拐なんていくらでもできる。
それに今回の報酬はえぐいぜぇ。一生遊んで暮らせるほどの額が集まる。
これをやらない手はないだろ。」
リーダーっぽい人は、薄気味悪く笑いながら言う。
「絶対に成功させるぞお前ら」
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さて、どうしたものか。
まさかあんなにボロくそに言われるとは思ってなかったな。
てかなんだよ最後の捨て台詞。aクラスの劣等生?俺そんな風に言われてるのか?
まぁ、下のクラスに下がりたいからあえて手を抜いているのは確かだが...
それにしても、あのヴィリアって女、なかなか厄介だ。
まさかここまでやっても無理とは...
図書室で彼女に振られた後、俺の心は割とバキバキに傷ついていた。
しかし、そんな事で俺はめげない。
俺は彼女と友達になると心の底で固く決意していた。例えどんな手を使ってでも、俺はヴィリアと友達になってやる!
そんなわけで、明日また図書室行こっと。
俺は再び図書室へ行った。
いつもと変わらない空気、また俺は彼女に振られて帰るのだろうか。
そんなことを考えながら、俺はヴィリアがいつも本を読んでいる場所へ向かった。
しかしそこにヴィリアはいなかった。唯一残ってたのは下に落ちている本。
最近ヴィリアが読んでいた本だ。
昨日俺が怒らせた時、下に落としたのかな?
俺はそっとその本を拾う。その時、俺は異変に気づいた。
「・・・なんか臭い?」
紙の匂いに紛れていて気づかなかったが、どこからか、血生臭い匂いがする。
俺は足元を見る。
これは...!
そこにあったのは一滴の少し乾き始めている血。
何か変だ。
「魔力探知」
俺は半径10キロにわたってヴィリアの魔力を探知した。
半径10キロなんて広すぎて中々時間がかかる。しかしそんなことよりも、
「やはり...学校にいない。」
血の様子からして、この図書室で何かが起こってから、そう時間は経っていない。
どこへ行った...?
俺は学校を飛び出して魔力探知しながら家の屋根を飛び回った。
どこだ?どこにいる?
地上はだいたい感知が終わった。まずいな街を出ていると厄介だな。
そんな事を考えていると、ピン。ヒットした。
地下だ。彼女は街の中心部を離れた、スラム街の地下に閉じ込められている。
「面倒なことになったな。誘拐...か...?」
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ラインとは別の場所で少女の目が覚める。
くらい....
何も見えない.....
私はどうしてこんなところにいるんだっけ...?
あっそうだ!図書室で本を読んでいたら急に誰かに捕まって。
「んんん!」
口と足、手は強く結ばれている。
これは、盗賊の仕業?
早くここから逃げないと...
くそっ解けない。
「んんんんん!」
隣からは盗賊たちの笑い声が聞こえる。
なんでこんなことになるの?叫んだ所で、誰かが助けに来る気配はない。
失敗したなぁ。もう、私はここで終わりかな?
こんなことなら、あのラインっていう男と、もっと喋れば良かった。
・・・・・
私の右手には生まれつき、呪いの痣があった。親によると、私の血筋はもともと呪われた血筋で、たまに呪いを持って産まれてくる人が出るらしい。
別に呪いがあったせいで、生活に不自由があった訳では無い。
だから私は安心しきって普通に生活していた。
私には貴族会で、友達がいた。
優しい兄がいた。
私はとても恵まれていた。
苦労のくの字もなく、幸せな人生を送っていた。
しかし、ある日、友達の家にお茶会へ行った時、事件は起こった。
ちょっとした事で私とある友達は喧嘩をしてしまった。
本当に些細なことだ。今考えるとどうでもいいことだ。
だが、私は怒りを友達に向け、敵意を持った。
それと同時に、右手のあざから黒い何かが飛び出し、私はその友達と、周囲にいた数名に怪我をおわせてしまった。
それから、私は悪魔と呼ばれ始め、私に近づく人はいなくなった。
私自身も他の人に近づくのを避けるようにした。
友達は、私の前から消えた。
家族のみんなも、私をいない人として扱うようになった。
圧倒的な孤独。
自殺しようと考えたことだってある。
放課後は、誰かと喋ったりすることはなく、ひたすら図書室で本を読んでいた。
家に帰りたくない私にとって、そこは都合のいい逃げ場所だったのだ。
私は一生こうやって1人で生きることを覚悟していた。
しょうがない。
だって私は呪いを持っているんだもの。
呪いを持っている人は幸せに暮らすことなんて許されない。
だから、こうやって盗賊に捕まって、きっと誰かに売られても、私に思うことは無い。
そのはずだった。
しかし、2ヶ月くらい前から、誰か知らない1人の男が私に話しかけるようになった。
彼は私に話しかけ、私は彼から逃げる。
気づけばそんな関係が続くようになっていた。
ただ、そんなくだらない関係。
なのに、気づけば私はそんな関係を気に入るようになった。
毎日、放課後のたった一瞬の出来事のために、私は心を弾ませ、図書室へ行った。
ある日、彼に話しかけようと思った。
「ねぇ、あなたいつもなんなの?なんで私にかまってくるの?」
違うこんなこと言いたいんじゃない...
「なんでって、誰かと話すのに理由なんかいる?」
その言葉は、私の心を震わせた。今まで嫌われ続けた私。誰にも話しかけてくれなかった私。
そんな私に彼は理由もなく話したいと言ったのだ。
なのに、
「あなた馬鹿なの?私の噂知ってるでしょ。呪われた姫ヴィリア。私と関わってもいい事なんてないわよ。
それとも、もしかして可哀想な女だなとか思って嘲笑ってるの?」
なんでこんなこと事言ってしまうのだろう。
今まで誰とも話さないようにしてたから...
上手く人と話せないんだ。
私、嫌われたかな?
なんでだろう。今まで、他人に嫌われようとしてきたのに、彼にだけは嫌われたくない。
彼とはもっと話したい。
しかし、もうそんな夢も叶わなくなってしまった。
今の私にあるのは圧倒的な絶望。
ライン・ガ・ゲルド、か。
できるなら、次はちゃんと話したかったな。
そう思っていると、急に扉が開いた。そして、そこから2人の盗賊が入ってきた。
「あっこいつ起きたぜ。」
2人のうち、片方が言う。すると、もう片方は、叫ぶ。
「なぁ、ボス。俺らちょっとこいつで遊んでもいいすか?」
・・・・・
私は何も言わないし、何も思わない。
「いいが、傷つけんなよ。大事な売り物なんだから。」
遠くから、盗賊たちのリーダーらしき人の声が聞こえてきた。
その声を聞いて、私の前にいる2人は嬉しそうに私の服を破く。
「んんんんんんんんんん!」
あれ?なんでだろう。さっきまで覚悟していた事なのに。怖い。
「さて、じゃあ頂いちゃおっかな。」
やだ。やめて...
男は楽しそうに私の体に触ってくる。
なんでこうなの?
なんでいつも私はこうなるの?
どうして私は普通に生きることすら許されないの?
嫌っ
やめてぇぇええええ!
シュパッ
突然、目の前の男の首が地面に落ちる。それと同時に、私の精神が、何かに蝕まれる。
「ぎああああああ」
これは私の声だ。気づけば口にはられてたテープも、手足に結ばれていた紐も無くなっていた。
私は荒い息をしながら、もう一人の男を真っ二つに切る。
この感覚...
絶対に忘れられない感覚....
嫌っ。自分の思うように体が動かない.....
これは呪いだ.......!




