トゥエンティtwo 呪われた少女
次の日の話だ。
「やぁ、ライン!うかない顔をしているね!」
朝一番、俺に話しかけてきたのはセリヌスだった。
「てめぇいちいち俺の所に来やがって、暇人か!」
もう俺はいちいち俺にちょっかいをかけてくる彼を突き放すのを諦めていた。
「うん、割と暇人だよ!」
笑いながらそう返されたので、俺は
「ったく。俺の他にも絡めるやつなんて沢山いるだろ。てめぇがいつもここに来るから、俺はいつも周りから変な目で見られんだよ。」
と彼に言った。するとセリヌスは、返す。
「いやー、君と喋る時が1番楽しいんだよ。いじるといい反応してくれるからね。」
「この腹黒公子が。」
俺達は笑う。しばらくして、俺はセリヌスに質問をする。
「なぁ、セリヌス。お前、青髪に橙色の目を持っている女の子について何か知っていることはないか?」
俺が聞くと、
「なんだ?その女に一目惚れしたのか?」
「そんなんじゃねぇよ、バカ。」
質問してすぐにおちょくって来るセリヌス。やっぱり腹黒公子だわ。
「そうだなぁ。もうちょっとヒントはないか?何人か思い当たる人物はいるが、情報が少なすぎて絞りこめない。」
「そうだなぁ、昨日図書室にいたんだ。多分本が好きで、他人と話すのが、得意ではないタイプだ。」
「そうか。だとしたら一人しかいないな、
『呪いの姫』こと、ヴィリアだ。」
ん?呪いの姫?何その2つ名。なんか俺変なイベントに巻き込まれてない?
「呪いの姫ってどういうことだ?」
俺が聞いてみると、セリヌスは答える。
「その言葉の通りだ。呪いを持って生まれてきてしまった可哀想なお姫様。まぁ、王族ってわけではないけど、誰かが物語と被せてそう呼び始めたのだろう。
彼女は昔、右手に黒色のあざを持って生まれた。6歳の時に、1度そのあざ暴走して、同世代の友達4名に怪我をおわせたことにより、周りから避けられるようになったんだ。今は周りの人に被害を出さないために、人と関わらないようにしている。」
「なるほどな、それで昨日話しかけたら逃げられたのか。」
俺は椅子の背もたれに思いっきりのしかかって呟いた。
「てか、あざが暴走ってどんな状況だよ。」
「さぁ?僕はあざが暴走したってことしか聞いた事がないな。でもライン、彼女と関わるのはやめといた方がいい。お前の安全のためにも...」
「なんで?人と関わらないようにしてるんだろ?友達にするのには最高じゃねぇか。」
「友達にするって...
まぁいいや。君の考えてる事はいつも謎だしな。」
「情報提供ありがとな、セリヌス。また今日の放課後話してくるよ。」
俺は人の意見で他人のことを評価のが嫌いだ。セリヌスに悪気がある訳ではないのだろうが、俺は俺の目で確かめたい。
彼女がどういう人物なのか。
そしてこの目で判断したい。
彼女と友達になっていいのか。
だから、俺は確かめに行く。図書室へ。
ガタン。
放課後、俺は図書室の扉を勢いよく開けて、ヴィリアのもとへと行った。そして声をかける。
「おい、君!」
しかし...........
やはり俺は避けられてしまった。
あれから何日かたった。
ズドン。
俺は机におでこを乗せる。
「どうした?またヴィリアに振られたか?」
俺の前にいた腹黒公子が口を開けた。
「もう15回目だよ。さすがに傷つくわ。いくら人と関わらないようにしてると言っても、さすがに避けすぎじゃね?」
俺が落ち込んでいると、隣にシュナがよってきた。
「ねぇ、ライン。最近ラインが女の子くどいてるって聞いたんだけどほんと?」
シュナは機嫌悪そうに俺に聞いてくる。
「う〜ん。別に口説いているわけではないけど、あながち間違えじゃないかな。てかなんでそんなに機嫌悪そうなの?」
「知らない!ラインのバカ!。」
ええぇ。そりゃないって。俺が何したって言うの?
しばらくして、シュナは頬っぺたを膨らましてどっかへ去っていった。
「ハハァン。モテる男は大変だな。」
セリヌスが耳元で囁いてくので、
「1回黙れこの腹黒公子。」
と、皮肉を言った。
「それよりもどうしたもんかな?どうしたら逃げなくなるんだろ。」
俺が独り言を言うと、セリヌスがちゃちゃを入れてくる。
「ラインがもうちょっとイケメンになればいいんじゃない?」
「無茶言うな。しかもよけいなお世話だ。」
しかしまぁ、俺も一時期そんな時期があったから分かるけど、ぼっちはつらいよな。
それからも毎日毎日、俺はヴィリアのもとへ行った。
まぁいつものように避けられるんだけど、それでもめげずに通い続けた。
そして2ヶ月経った時、ついに彼女の心を開かせることが出来た!
「ねぇ、あなたいつもなんなの?なんで私にかまってくるの?」
俺の前の美少女は初めて俺に話しかけてくれたのだ。
「なんでって、誰かと話すのに理由なんかいる?」
俺は平然と彼女に答えた。
ヴィリアの秘密ならとうに知っている。彼女が呪われていることも、周りの人からよく思われてないことも。
しかしそんな事、俺には関係ない。
俺はただ彼女と仲良くしたいのだ。
「あなた馬鹿なの?私の噂知ってるでしょ。呪われた姫ヴィリア。私と関わってもいい事なんてないわよ。
それとも、もしかして可哀想な女だなとか思って嘲笑ってるの?」
「なんでそんなに不機嫌なんだ?」
「不機嫌だからよ。私は誰とも喋りたくないの。二度と私に関わらないで。」
彼女は俺を睨んでくる。ええぇ、初めて喋った相手にその対応はないでしょ。俺がそんなことを考えていると、
「じゃあね。aクラスの劣等生ラインさん。」
そう言い残し、呪いの姫は俺の横を通りすぎて、どこかへ行ってしまった。
なかなか厄介そうな相手だな。別に彼女なんて放置して、新しい陰キャ友達を探せばいいんだけど...
さすがに彼女を放置するのは違う気もするしなぁ。
俺なら呪いも解けるし。




