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婚約破棄される令嬢の未来は魔王か聖女

※物語が中途半端に思える方は作者後書きに続きのエンドがありますのでそちらまでお願いします※

煌びやかな内装、輝くライト、大勢の人の前。


「お前との婚約を解消する!」


 今日フローラ・グレーイは18年連れ添った婚約者から解消を告げられた。彼とは生まれた時から結婚が決まっていた。そしてそれは一か月後に実行されるはずっだった。今日、この場で彼ことライト・ホーラインが言い出すまでは。


「そして俺はシャーロットと来月結婚しようと思う!!」


 唖然としている人々の中には彼の父親もいるのだが、そんな事など知らないとばかりに彼は続ける。言われたフローラの顔は青白く、ショックを受けているかのように見えた。それを見た人々は長年の思いが踏みにじられた事に衝撃を受けたのだと感じた。しかし、当の本人はそんな事はどうでも良かった。それより恐れていることがあった。そして思う『ここがターニングポイントなんだ』と。

続けて彼女は心で自分の能力に毒づく。未来が見えたっていい事などない。だって私が分かるのは選んだ後に送る未来だけ。なぜそんな事になったかの経緯や分岐点、そして選ぶ答えはわからないのだから……。


 一人の少女が教会の真ん中に立っている。その装いは場所にふさわしくなく、真っ赤でスレンダーな衣装。胸元も背中もガバッと開いており、アクセントに黒が入っていることで余計にそれが目立つ。清純の欠片もない装い。純白である教会に一番似合わない女性。


「知っていたわ今日を。私はこっちを選んだの。だって、貴方が私を救ってくれた事などなかったのだから。そうでしょう、神様。」


「今更神に助けを求めたとて、神は貴様を救わないだろう」


 そこに一人の男が大声で入ってきて、その女に向かって対峙するように立つ。そして剣を構える。


「愛しのシャロに手をあげようとした、悪女め! この10代目勇者ライト・ホーラインの手で葬ってやろう!」


 そして、眩い光が剣から放たれる。それが、女の喉元に向かっていくが、軽い調子で手でそれを打ち消した。そして高笑いして言う。


「悪女? ずいぶん甘く見られたものね。(わたくし)はそんな弱そうな肩書ではなくてよ? そうね…魔王様とでも言ってもらえるかしら?」


 それを聞いた勇者と名乗った男は動揺している。それもそうだろう、悪女なら正義の元、裁かれるだけの存在。しかし、魔王となれば国の脅威。戦争どころの話ではない。狂っているとしか思えない発言。しかもここは教会。神を祀る場所で、今まさに神を冒涜せし存在に成らんとする者だと宣言するのだから。


「ま、魔王だと? 正気を失ったのか? 貴様、国の脅威になると、そういっているのをわかっているのか?」


 魔王と名乗る女が笑う。卑しくでもどこか美しい顔で。

 

「あら? 貴方が勇者なら、貴方に捨てられ、対峙している私は魔王でしょう? でも気安くてよ? 私は言ったはずよ、魔王”様”だと」


 そこで目が覚める、わけではなく…場面がくるくると変わる。そう、これは一人の少女が見ている夢。現実ではない。しかし、少女には力があった。予知夢である。自分に関する事に限られるが夢が本当になる事があるのである。その事柄が定まってないほど夢は変わりやすく、すべては少女の心次第なのだ。


 そしてところ変わった場所は同じ教会だった。しかし、そこに先ほどの赤い衣装の女はいない。まさに純白といわんばかりの衣装で手をクロスさせ、祈る女が一人。


(わたし)は今日この日を知っていました。こちらを選んだ事は後悔しておりません。お慕いした殿方の為にこの身を貴方に捧げましょう。例え彼に愛されず捨てられた身だとしても、彼の為にこの国の聖女となりましょう」


 女の祈りの最中に二人の男女が入ってくる。


「フローラ! とっとと儀式の準備をしろ。ったく、グズグズしやがって…俺様のおかげで聖女になれるのだ。感謝しろよ」


「はい…感謝しております。ライト殿下」


 フローラと呼ばれた女は深々と頭を下げた。所作も美しく、聖女と言う言葉が似合っていた。


「っち、本当ならシャロが俺を勇者にした聖女、そして神の愛し子として、俺と婚約するはずだったのに」


「ライ…いいの。私、貴方の隣にいられるだけで」


 二人の仲の良さは愛称で呼び合っている事から言うまでもないと言うレベルだ。そして、フローラを尻目に自分達の世界に入っていた。しかし、ライトはフローラの存在を忘れてはいなかったのか言葉を続ける。


「愛しのシャロ。可哀想に。すべてこいつが悪いんだ。俺と婚約破棄した時にならば身を捧げるとか言い出すから」


 ライトはフローラを指差し憎そうに見下ろした。


「本当ならばこいつに儀式だけさせ、名誉は君のものだったのに…あの時、皆の前で宣言されたから仕方なく俺は…」


 シャーロットが涙目でライトに寄りかかる。


「いいの。私が貴方を奪った悪女として罵られていても…いいの。だって貴方と一緒に要られるんですもの」


「あぁ、シャロ!」


 聖女という名の元犠牲になるフローラを目の前にして、二人はまるでロミオとジュリエットかのように悲劇をきどっている。フローラは下げていた頭をあげライトを真っすぐ見る。


「お言葉ですが殿下、私は神に身を捧げると言ったまで、儀式の贄には喜んでなりましょう。しかし、殿下に対してとは言っておりません。」


 ライトは顔を真っ赤にして、手を振り上げる。


「俺以上に勇者の称号が相応しいものはいないだろう!」


 先ほどの剣とは違い、その手はフローラの頬をすごい音を立てて叩いた。力任せだったのだろう。余りの衝撃にフローラは倒れる。しかし、叩いただけでは満足いかなかったのか、さらに追い打ちをかけるように足蹴りした。彼女の来ていた純白の服に足跡が付いた。白い衣装なので、凄く目立つ。


「妹よりも俺の方が相応しい!! 勇者は代々男、つまり時期王はこの俺だ! お前は俺の為にその力を捧げるのだ!」


 その宣言を受けて、彼女は立つ。頬が赤く腫れても、衣装が汚れても、その立ち姿は凛として美しく、その目には信念が宿っていた。


「私は貴方の為に力を捧げるのではありません。私は信念の為、人として生きていく為に犠牲になるのです。貴方と貴方が作る国ではなく今を生きる国民の為です。そこは間違えないでいただきたい。」


 そのこでフローラは目覚めた。額に汗が浮かんでいるのが気持ち悪いのかすぐに額を手で払った。そこで、額だけではなく、全身に嫌な汗をかいているのに気が付く。


「また、この夢ですか。」


 何もこんな日に見なくてもいいのにと彼女は思ったが、フローラはこの夢にはなっれこっだった。それもそうだろう彼女は定期的にこの夢を見ていたのだから。それは、生まれた時からの婚約者に恋人がいるという噂を聞いた時、彼の恋人と噂のシャーロット嬢と二人がいるところを見た時、シャーロット嬢に会った日、学園の入学式の日などここ数年でも多岐にわたった。だから気にもせず、いつもの様に今日の準備をした。今日は卒業パーティー、彼女が大人として羽ばたく第一歩の日だった。この後に待っていることなどフローラは気づきもしなかった。それは最近冷たい彼が昨日家に来て、明日の事を機嫌よさそうに明日の話をしていたからである。明日が卒業パーティーと同時に結婚の報告になる事は周知の事実だった。だから、予知はもっと未来の分岐点だと……嫌、どちらも別で幸せな未来があると彼女は思っていた。


 フローラが一番最初に夢を見たのは彼女が、彼と出会った日だった。その時は変な夢だと思っていた。それが、彼女の未来だと気が付いたのは12歳の時。それを知ったのは属性やスキルを調べる義務の為行ったある教会でだった。夢と同じ協会にドキリとしていたフローラに言い下されるたのはまず、「スキル”予知”」だった。


「おぉ! 初代聖女様と同じスキルじゃないか!!」


「やはり今代の聖女は彼女だろう!」


「さすがグレース伯爵家のご息女だ」


 初代勇者に白の力を与えるために儚くなくなった初代聖女からとって、代々王家に生まれるスキル(仮)勇者をスキル勇者にする為に白の力を与え亡くなる者に与えられる称号、それが『聖女』だった。そして、フローラの家、グレース伯爵家は属性が白が多かった。当然聖女も多いが、力を与えた後に属性が変わってしまうが、生きながらえる『神の愛し子』も多かった。当然彼女も白の特徴である回復魔法が調べる前から使えていたので、初代の再来だと周囲から歓喜の声が上がる。そして次の「属性”不明”」が言い渡されたとき、一瞬静寂に包まれた。その後、前代未聞の事にも、確信が裏切られた事にも周囲はざわつく。


「彼女は白じゃないのか」


「グレーイ伯爵家は神の愛し子が多い家だろう?」


「あぁ、だから確認せずに生まれてすぐ殿下と婚約が決まっているといるのに」


「そもそも不明とはどういう事だ。フローラ嬢は回復魔法が使えると聞いたぞ」


そんな周囲から困惑した声より、幼い少女はスキル予知のが耳に残っていた。今までにない事例で皆知らない事だが、不明になったのは相反する属性が拮抗しているからだった。フローラには白の特徴である回復魔法が使える。それが示すのはフローラが反対の黒属性も持っているという事実だった。自分が人類の敵になるか、味方になるかフローラはスキル予知を聞いた時、夢の中の相反する二人が何かを越えた先の自分なのだと漠然と思っていた。


「はっ余りの事に声もでないか」


 ライトの声で、朝の夢から、過去の記憶までを思い出し、ボーっとしていたフローラは正気に戻った。

そして考える、ここで聖女宣言すれば聖女の道に、しなければ魔王の道に進むのかと。でも、フローラは別に裏切った殿下に対して悲しみはあるが、未来で彼が言うような悪女行動をとったことはないし、別に今も殴ろうとか物騒なことは考えていない。そしてまた、聖女宣言をしたいとも思わなかった。不思議に思っているフローラをよそに大人しいフローラに満足がしているライトは続ける。


「フローラ君に贈り物として渡したその腕輪を返してくれないか? シャロが似たような物を作ってあげたいのだが、似たような物を君が持っているのは気に食わないのだ」


 その腕輪は18歳の誕生日記念にと数か月前にライトがフローラに送ったものだった。白いシンブルな腕輪をチラリと目で見てゾッとした。それはフローラの白の魔力を吸収している腕輪だったからだ。それが、自分の魔力を吸収している事にはすぐに気が付いていたし、魔力を吸収する石の存在は知っていたフローラは白色だから白の魔力を吸収しているとも気が付いていた。だけど、聖女の儀式の属性である大本を渡すという事はつまり死ぬという事。だから腕輪に貯めて、儀式中に全部持って行かないようにする為に渡してくれたのだと思っていた。言葉にしないだけで、愛してくれているのだとフローラは感じていた。


 しかし、それはライトの策略だった。シャーロットを神の愛し子にする為にフローラから魔力を吸収していたのだ。属性が急に変わる事もある。そして、変わったものは大体が愛し子になる事から、神に導かれた者と言われている。神に導かれた者なら誰も二人を反対しないだろう。そこまで含めてのライトの計算だったのだろう。


「最初から、計画していたんですね」


 俯き、腕輪を触りながらも、外す様子のないフローラに痺れを切らしたのか、ライトが腕を掴みそれを引き抜くと、フローラはモヤモヤとした何かに包まれた。なぜ私がこんな目に合うのだろうか。それもこれもあの泥棒猫のせいよ。ライト殿下も嫌い、嘘つき。この国なんかなどと負の感情でいっぱいになる。それは拮抗が保たれていたものが崩壊した事によるものだった。


「こんなの……」


 フローラは自分の感じた事のない感情に思わず呟く。それは私の感情じゃないと否定したくて思わず漏れたものだったが、聞こえた何人かはライトの行動をひそひそと非難し始め、ライトの機嫌もどんどん悪くなっていった。


 国を破壊するような感情もちたくないフローラは腕輪を見る。あれさえ壊せば自分の魔力は戻るだろうと、しかし、ライトの手から奪い返すには隙をつかなければ取れそうになかった。


 あぁ、それで、聖女なのね。彼を驚かすインパクトとしては十分で、その後で腕輪をとってこちらで処分します。と言えば彼に未練のある、聖女の出来上がった。プライドがそれを拒めば、この負の感情に飲まれるだろう。フローラは一瞬の刹那の迷いが一生かと思うぐらい長く感じられた。全てがスローモーションで、今どちらにするか決めろと時間が与えられているかのようだった。



 今回はタイトル「婚約破棄される令嬢の未来は魔王か聖女」のどちらか感を残したいのでこれにて終了にしました!

各自好きなエンドを決めてくれるといいなと思っていますが、納得いかない方もいると思いますので私の思う追加を後書きではありますが、書かせていただきます。


作者エンド

 フローラは答えが出せなかった。どちらの未来も嫌だったからである。聖女として、この男の為には死にたくない。でも、魔王としても君臨したくない。そんな思いで取られた腕輪に手を伸ばては見るが、届きそうもなかった。ふと、彼女は視線を感じた。それはこの国の王女だった。思わず縋るような目で見る。普段なら、年下のそれも女の子にそんな目をする事はない。しかし、その時はなぜかそうしてしまった。

 すると、彼女はこちらに歩きだした。


「いくら元婚約者に対してでもひどくないですか? お兄様」


 今まで傍観していた彼女に皆の視線が集まる。


「一度上げたものを取るのもはしたないと思いますよ?」


そう言ってスルッと腕輪を取った。ヒールのせいなのかそれとも元々なのか彼女は兄より身長が高かった。


「後、兄様が彼女捨てるなら僕がもらいますね? そろそろ女装も嫌だったんで」


そういった後彼女は胸から詰めていた布類を全部出す。


「それは継承的に言ってはならぬと言っただろう」


 後ろで慌てる国王を元に彼女、いや彼はフローラの手を取って走り出した。


「えっえっ」


困るフローラをよそに彼は彼女を引っ張りながら話す。


「ねぇ知ってた? 僕はスキル二つ持ちなんだよ!!」


「二つ?」


「そう! (仮)勇者と予知!! 家系の方の(仮)勇者は要らなかったけど」


「予知……それって私と…同じ……?」


「分岐点は分かんなかったけど、君との未来か独り身で後悔している未来かだった。でも、僕は兄様を不安にさせないように王女だった。だから、婚約破棄された時、王子に戻ってから迎えに行こうと思った。けど……君と目があった」


 彼は足を止めてフローラの方を向いて、手を取り、片膝を付く。


「僕なら不安にさせない。僕と結婚してください! この国で反対されたら、国を出よう! (仮)勇者のままでも結構強いんだよ?」


 ドレスのままだから、全然かっこついてはいなくて、指輪もない、けど、確かにフローラは未来が変わる音を、彼を好きになる未来が始まる音を聞いた気がした。


「貴方と二人なら」


 誰もいないパーティー会場のひっそりとした廊下。物寂しいそこは世界一幸せな会場だった。二人だけの。


これにて本当のエンドとなります。簡単ですが、もしもあの時、こう答えていたらとその後を簡単に。


エンド聖女

 迷わず聖女宣言。腕輪を取り返す。

未来はあの通りだが、儀式後に魔王にならない為、毒を飲んで自害。発表される死因は聖女儀式となる。

未来永劫聖女として語り継がれる。ちなみに、力の大半を腕輪に残して見つからない場所に隠して儀式に挑むと思います。あの男が力を持ってもいい事ない。墓参りに来た女装王女が腕輪を見つけてくれるでしょうきっと。


エンド魔王

 取り返すのを諦めて飲まれていたらシャーロットを泥棒猫と罵ってぶん殴るでしょうね。

その後魔王へ進化。奪い取られた力は1/3ぐらいなのですが、拮抗していたという事はもちろんフローラの方が力が強いので無事にお国ごとさよならとなるでしょうね。そして、シャーロットは殿下を勇者にした導かれた者と言われていたけど、魔王を目覚めさせた者と言われていくでしょう。ライトは勇者に成り切れない者ですかね。そのままフローラは虚しさを抱えて魔王として生きていき、女装殿下は別の国へ亡命後、どうにかしてフローラに会おうと試みるという感じですか。


 後書きの方が本編かってぐらい長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった方がいれば本当にありがとうございました。ぜひ、貴方様なりのエンドも聞きたいです。宜しければコメントなどで教えてくれると作者が喜びまくります。それではまた、どこかで彼女達の物語に会える事を願って。




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[気になる点] 後書きでそれぞれのルートを考察のように書き上げるくらいなら、分岐型の物語としてそれぞれのルートを書き上げてほしかったです。もったいなく思います。 あなたの話はあなたのもの。無論ミステリ…
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