【117:美女たちそれぞれの気持ち①(ルカの独白)】
<愛堂 ルカの独白>
私は今、私の中の何かが変わっていくことを感じている──
凛太先輩に恋をしたのはもう7年も前、高校一年生の時のこと。
その頃から私は引っ込み思案で、告白なんてもちろんのこと、誰かに想いを明かすことすらできなかった。
凛太先輩が卒業した後も、自分が大学に進学した時も。
ずっとその想いは心の中にしまい続けてきた。
そのうち他の素敵な人に恋をして、凛太先輩への想いはいずれ消えてしまうのだろう。そう思ったこともある。
けれども私の中の小さな炎は、ずっと消えることはなかった。
遠くに離れてしまって、叶うことは決してない恋なのに。
なぜ凛太先輩への想いが消えなかったのか。
それは私が消極的で、他に親しくする男性がいなかったこともあるのかもしれない。
それと、他の男性を好きになることに怯えていたのだろう。
いずれにしても私は、”決して叶うことのない恋”に囚われたまま、日々を過ごすだけの、ある意味『イタイ女』だった。
そして驚くべき偶然、神のご好意なのかイタズラなのか、凛太先輩の転勤による再会。
初めて身近で接する凛太先輩。
私は感激、幸せ、喜び、そういった言葉をすべて合わせてごっちゃにしてもまだ言い表せないほどの感情に包まれた。
でも。凛太先輩と再会し、日々身近で接するチャンスを得ても、なお私には「告白する」とか「先輩に私を好きになってもらう」とか「付き合いたい」といった気持ちは一切なかった。
そんなことを望んだら、志水営業所の和が壊れてしまう。
私なんかが凛太先輩の彼女にふさわしくない。
それ以前に、凛太先輩が私を好きになってくれるはずがない。
そんな想いが、私が積極的に行動することに蓋をしていた。
だけど凛太先輩の素敵な行動や性格に触れる中で、どんどん想いだけは大きくなっていくのを感じていた。
──んもう。いい加減にしなさいよ、私の恋心。
私自身の考えを無視してどんどん大きくなる恋心に、私は文句を言いたい。
オフィスで凛太先輩の熱心で優秀な仕事っぷりを見る度に。
──あっ、カッコいい。
屈託のない優しい笑顔を見る度に。
──ああん、イケメン……
あ、ほのか先輩は凛太先輩をイケメンじゃないなんて言うけど。
凛太先輩は誰が見てもイケメンってタイプじゃないことはわかってるけど。
私は凛太先輩の顔を見る度にイケメンだと感じてキュンとしてしまう。
これは理屈じゃないのですよ。キュンとするのですよ。
ほら。麗華所長も言ってたもんね。
「好きになってしまえばイケメンだと感じることもよくある」って。
もしかしたらそういうことなのかもしれないけど、とにかく私にとって凛太先輩はとってもカッコいいのですよ。サイコー!なのですよ。
それでも私は自分の恋を叶えたいなんて、一切思っていなかった。
そう……ついこの間までは。
凛太先輩と一緒にサッカー観戦に行って、その後食事に行って、凛太先輩の考えを聞いた。
凛太先輩は言った。
『周りがぎくしゃくしない方法を全力で考えて、そして好きな人に告白する。やっぱりそれがいいのかなって気がしてきた』と。
あの日以来、私の中の何かが変わっていくことを感じている──
私の気持ちを凛太先輩に伝えたい。
私の気持ちをほのか先輩に伝えたい。
私の気持ちを麗華所長に伝えたい。
そして──凛太先輩の心を私に向けたい。
そんな気持ちが大きくなっていくことを感じている。
でも、それを本当に実行する勇気は、まだ、ない。
まだまだ迷いの方が大きい。
でも一つだけわかっていることがある。
それは決して焦ってはいけないということ。
凛太先輩が転勤してきてまだ半年。
普通に転勤のスパンを考えても、あと3年から5年はこの志水営業所にいるはず。
だからもう少し時間を使って、私のこの気持ちがどう変化していくのか、そして凛太先輩の私への気持がどう変化していくのか。
それを確かめながら、自分の行動を決めていくべき。
私は今、そう思っている。




