第5話
翌日の放課後、啓示がグラウンドに行くとすでに多くの部員らしき人がいる。そこにはもちろん朱里や玲の姿もある。昨日とは違い男子部員も女子と比べると少ないがいる。
「君は入部希望者かな?入部届は持ってきた?」
話しかけられた啓示は頷き入部届を渡す。
「え~っと、谷崎啓示君……ああ、君が桃花の弟か。俺はキャプテンの渡辺陽斗。今日からよろしく」
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあ、今日は試合やるから今はアップして3塁側のベンチで待っておいて。一応3塁側のベンチが男子で1塁側のベンチが女子だから気をつけるように……ああ荷物もベンチに置いておいて大丈夫だから」
「わかりました」
啓示は荷物を置きにベンチに行くと見たことのある顔があった。
「おお、谷崎。さっきぶりじゃねえか」
「松波か……野球部だったのか」
「ああ、一応な。まあ、お前みたいに有名人ではないけどな」
龍二の皮肉を無視して啓示はユニフォームに着替え、アップをしてベンチに戻る。
「お前が桃花の弟の啓示か」
啓示はベンチにいた先輩らしき人に声をかけられる。
「俺は2年の酒井猛だ。よろしくな」
「谷崎啓示です。こちらこそよろしくお願いします」
「聞きたいこととかあったら遠慮せずに聞けよ」
猛は胸を張って自慢げに言う。
「では、他の先輩方はどこにいるんですか?」
「ああ、今は倉庫から道具もって来るとこだな」
「では俺も取りに行きます」
先輩が道具を取りに行っていると聞き、すぐに自分も取りに行こうとする。が、猛に肩を掴まれる。
「今日はお前ら1年の歓迎試合をするんだからここで待っていれば良い。今日だけ雑用は俺達先輩に任せておけ!」
「そういうことでしたか。ではよろしくお願いします」
啓示は猛の言うとおりにする。
「おう!……他に聞きたいことあるか?」
「そうですね……他の1年は何人ぐらいいますか?」
今啓示と猛、そして松波を含めベンチ付近には4人しかいない。
「お前の他には3人だ。今ベンチ前で素振りしてる松波は知ってるだろ。それからベンチの隅っこで緊張してるのが尾野優。後は今トイレに行ってていないが新田浩太。……ってとこだ。でもお前ほどの実力者はいないがな」
「がっはっは」と朗らかに猛は笑いながら言われ、啓示は何も言えなくなる。
「おっと、そろそろ時間だな。もうすぐ監督たちも来る時間だからしっかり準備をしておけよ。俺もグラウンド整備しに行ってくる」
「はい。いろいろ教えていただきありがとうございました」
「おう!」
猛はグラウンド整備に行き、啓示も素振りをして準備をする。
◇◇◇◇
啓示は松波としばらく素振りをしていると先輩方がグラウンド整備をし始め、二人はいたたまれなくなり、ベンチの中へ戻る。
「あれ、誰ですか?」
ベンチに戻った啓示は話しかけられる。
啓示は一瞬誰かわからなかったが、さっきまでベンチにいなかったのですぐに浩太だとわかる。
「お前が新田浩太か……谷崎啓示。よろしく」
「あなたが谷崎さんでしたか。まさか谷崎さんが本当に有ヶ丘にいるなんてうれしい限りです。これからよろしくお願いします」
「敬語はやめろ。同い年だろ」
「それは無理です」
腰の低い態度で接する浩太は啓示に憧れの視線を送る。
初めて向けられた視線に啓示は気持ち悪さを感じる。かといって啓示は何も言い返せないため放っておくことに決める。
「全員集合!」
集合の合図に従い、野球部員全員がホームベース付近に円になって集まる。
「今日から1年生が加わるわけですが、私は女子野球部顧問の帆足鶴海です」
「同じく男子野球部顧問の新井聡美だ。よろしく頼む」
「「「よろしくお願いします!」」」
「今年は女子10人、男子4人が入部しました。もちろん1年生のことは我々もまだわかってません。が、1年生の自己紹介は今日の試合で示してください」
顧問の鶴海の発言で1年はやる気をみなぎらせる。
「チーム分けはこちらで勝手に決めさせてもっらったから、とりあえず発表していく。あと余ったところには2年が入るが打席には立たないからそのつもりでな」
そうしてチームが発表されていく。
Aチーム Bチーム
1番セカンド 谷朱里 1番ショート 宇佐美恵美
2番ファースト 新田浩太 2番センター 松下玲
3番サード 松波龍二 3番キャッチャー 谷崎啓示
4番ピッチャー 上田鈴 4番サード 戸田七海
5番センター 近藤千香 5番セカンド 赤田詩穂
6番キャッチャー 東千夏 6番ピッチャー 新道菜央
7番ショート 池田朋香 7番ライト 尾野優
8番ライト【2年】 岸田美砂 8番ファースト【2年】安藤萌花
9番レフト【2年】 水谷美鈴 9番レフト【2年】 田中雪