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第4話

パシン! パシン! パシン! パシン! パシン!


啓示は黙々と桃花の球を受け続ける。もちろんただ受け続けるだけではなく1球1球桃花のフォームを確認しながら受ける。


「次ラスト」


パシン!


ピッチング練習を終え桃花はいつものように啓示に感想を求める。


「ストレートは相変わらず走ってた。コントロールもかなり安定してた」

「やっぱり!私もそうだと感じてたんだ」

「はぁ」


啓示は褒められ桃花は明らかに調子に乗る様子に頭を抱える。


「その程度で納得するな。変化球になるとコントロールを意識しすぎて腕の振りが緩くなって、腕の位置が少し下がってる」

「そっか……やっぱりまだまだだったよね」


今度は啓示に細かい指摘されて桃花は落ち込む。


「じゃあ今日は帰るから」


落ち込む桃花に一言言い残し、啓示はブルペンを出る。



◇◇◇◇


啓示は荷物をまとめ、ノッカーを務めている希美のもとへ行く。


「伊藤先輩。今日はこれで失礼させてもらいます」

「あら啓示君。もう帰るの?」

「はい。まだやることが残ってますので」

「そう。じゃあまた明日。……あ、あと明日はちゃんとユニフォーム持ってきてね」


そう言われて啓示は制服でキャッチャーをしていたことに気づく。よく見ると制服の膝の部分が少し砂がついていた。


「すみません。以後気をつけます」

「まあちゃんとした練習は明日からだから全然問題ないよ」

「では失礼します」


啓示は軽く頭を下げグラウンドを去ろうとする。


ドン!


「痛っ!ちょっとあんたどこ見て歩い……てん……のよ」


啓示は見知らぬ女子とぶつかる。

啓示にぶつかった女子が啓示の顔を見つめ動こうとしない。


「朱里、何してるの?この人知り合い?」


ぶつかった女子の後ろにいた女子が話しかける。


「……あぁ、玲。知り合いじゃないわ。こっちが一方的に知ってるだけ」


朱里は玲に話しかけられ我に返り答える。だが今度は、朱里は啓示を睨み付けるように見る。

啓示は朱里と玲を無視して帰ろうとする。


「待ちなさいよ。あんた谷崎啓示でしょ。あたしのこと覚えてる?」


朱里の質問で動きを止めた啓示は朱里の顔をまじまじと見る。


「朱里っていったか?悪いが覚えていない。どこかで会ったことあったか?……それにもう一人のほうは玲だったか?」

「ええ、私は松下玲。よろしくね。……ほら朱里も」

「……ふん!」


啓示の返答に玲は笑顔で対応するが、朱里は玲を無視して未だに啓示をにらみ続ける。


「ところで朱里。谷崎啓示って世代最強ピッチャーの白井涼とバッテリーを組んでいたあの谷崎啓示?……でも朱里の話じゃ桜坂に行ってるって言ってなかった?」

「ええ、あたしの聞いた話だと桜坂に白井涼を含め全国各地の天才たちが集まったって聞いてたから、てっきりあんたも桜坂に行ったとばかり思ってたわ」


そう言い朱里は啓示の方を見る。が、啓示は何も答えない。


「まあ覚えてないのはむかつくけど、いいわ。明日の試合で思い出させてあげるから」

「明日?試合?何のことだ」


朱里の言った試合について何も知らない啓示は聞き返す。


「知らないの?ここの野球部は毎年、最初は1年の男女でチームを組んで1年同士で試合するのよ。いわゆる新入生の歓迎試合?みたいなものらしいけど。そこで1年の実力をある程度測るらしいわ」

「なるほど」


誇らしげに説明する朱里に啓示は納得し、そばで聞いていた玲はまたか、といった表情を浮かべる。


「だから明日は首を洗って待っておきなさい、谷崎啓示。あなたの脳みそにこの谷朱里の名を刻み込んであげるわ」


それだけ言い残して朱里はグラウンドに行ってしまった。


「ごめんね谷崎君。朱里っていつもあんな調子だから気にしないでね。まあでも、私も明日は楽しみにしてるから」

「ああ。俺も期待して待っておこう」


そう言い玲は朱里の後を追ってグラウンドへ行き、啓示は二人の背中を見送って家路につく。


(明日が楽しみだ)

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