汚い教室と依頼人……No.02
注意
一部不快になるような表現が含まれているため、苦手なかたはご遠慮ください。
注意はしたからね?
ザーザーと激しく降る雨が私の靴を濡らす。
「せっかく傘をさしてきたのに、意味ないじゃん」
曇天が空を覆い、まるで、今の私の気持ちのよう。
一歩一歩、自分にとっての地獄へ自分で向かっていく。
そんなに嫌なら、学校を休めばいいと思うかもしれないけど、母親に迷惑をかけたくないし。
それに、将来に響く。
一応、いじめを受けていて学校を休んだとしても退学にはならないけど、それでも、面接などで聞かれ、答えたら思われるんだよ。
精神が弱いだとか、面倒な人材だとか、言葉では言わなくても、裏では思われてしまうだろう。多かれ少なかれ……
そんな思いを胸に私はまた歩き出す。
その後ろで黒い服を着た男性?が立っていた。
「依頼人様はこんな雨のなか大変だね~なかなかに立派な考えを持っているようだ」
雨の降るなか黒い服を着た男はそんなことを呟く。
その声を聞く人は誰もいなかった。
「おはよう~サクラギ~」
ニヤニヤとした、いやらし笑顔をこちらに向けながら西藤 凛 が話しかけてくる。私をいじめている張本人だが何故かそのことがバレていない。
「……」
私は無視をしてリンの前を通り過ぎようとする。
「無視しないでよ♪」
そんな、明るい声とは別にやっていることは暴力。
「……ガハァ!……ウゥ……」
脇腹を思い切り蹴られて肺の中の空気が押し出され、唾液が垂れる。
蹴られた場所が悪かったのか、かなり痛い。
「アア~汚いな~全く。私、そんなに力込めてないよ?これだから、貧弱ちゃんは~」
そう言って、廊下に踞る私の腹をグリグリと踏んづけてくる。
「………ウ…………」
痛みが私の身体を支配しているため言い返せない。
「アレレー?声が出ないの?それとも~声が出せないぐらいにバカなの~サクラギ~」
より、足に力を入れてくるリン。
「ガァァ……!?……ゥ」
彼女がこんなことをしていたとしても回りが助けてくれないのは、ひとえに彼女の人徳によるものだろう。あと、財力と影響力。
それに、私を下手に庇ったりしたら次は自分が標的になるかもしれないという恐怖だろう。
私の中で、ふつふつと黒く汚いな感情が溢れ出てくる。
こいつを『殺したい』と言う感情が。
ただそれは出来ない。こんな奴でも、殺してしまえば法律上、私が殺人犯で悪人になってしまう。
難儀なものだよね。法律は……
まるで、悪人を裁くのではなくて、守るためにあるものみたい。
「……予鈴が鳴っちゃった…………それじゃ、私は教室に行ってるね♪遅れないように気を付けてねサクラギ」
そう言って、教室へ向かっていく。
「……うぅ。まだ少し痛いけど大丈夫かな……」
脇腹を擦りながら私も教室へ向かう。
サクラギが教室に向かった後、サクラギが倒れ込んでいた場所に黒い服を着た男が立っていた。
なぜだか、その男のまわりを通り過ぎていく教師たち。まるで、そこに存在しないかのように。
「あらら……これは大変だ。判る気がするよ、その気持ちが、その心の闇が」