一日目の2
「転生してからの記憶がない、、、。そもそもここは本当に異世界なんだろうか・・・。」
そういえばそのあたりのサービス内容はよく確認していなかった。
何歳くらいで元の世界のことを思い出すのか、とか。
どのくらいファンタジーなの、とか。
そもそもそれが制御可能なことなのか、とか。
「あ、俺っていまどんな感じなんだろ?美少女に生まれ変わってるとか?」
ロケーションに絶望して呆然としていた山崎だったが、新しい自分の姿が気になりだした。
だが周りには姿を映してくれるものが存在しない。
「あー(↑)、あー(↓)」
発声してみる。声は低め。
手足を見つめる。骨ばっていて大きめ。
シャツをのばす。胸は当然ない。
股間は元の世界とおなじサイズ。
「美少女要素一切なし・・・まあ男だな。がっかり。」
頭を両手でさする。
ネコミミがないか確認しているのだった。
服は膝まで隠れるTシャツのようなものを着ていた。
下着は付けていない。
「人間ではあるようだけどもなー。せめてイケメンになってねーかなー。」
水面に映らないか水際に近づいてみる。
しかし海は異様に透き通っており、顔はよくわからない。
「うーん、てかこのままじゃ俺、死ぬんじゃないのか?腹はいまは減ってないけど絶対空くし。
海水飲めないし。」
海水を飲めば致命的なことくらいは知っていた。
「飲めないよな?」
異様に透明な海水を見つめる。
山崎のいた町は海に近く、家からも見えるくらいであったので海には慣れ親しんでいた。
しかし目の前の水からは潮のにおいがしない。
「すごいでかい湖かもしれないし、この世界の海は淡水かもしれん。」
なんでも都合よく考える男だった。
裸足で海に足を踏み入れる。
ざぶ。
「うっぬるっ。なんか温い、、、?」
自分の知った海の温度よりだいぶ温めの温度であることに違和感を覚えつつ、手でその水を掬い
口に運んでみる。
「、、、、ふつーに水だな。」
どのくらいこの場所にいたのかはわからないが、だいぶのどが渇いていたのだろう。
四つん這いになって直接水を飲み始める。
「水さえあれば2週間は生きられるんだったかな?」
腹は減っていない。
着用している衣服は目覚めたとき濡れておらずきれいだった。
要するに自分は自力でここにたどり着いたり漂着したわけではない。
「うーん、、、じつは犯罪者で置いて行かれたとかそういうセンじゃなければいいけど。」
近くに俺をここに連れてきた誰かがいるはず。
そう思ったその時だった。