異世界での目覚め
積んだ。完全にゲームオーバーである。
目覚めたらそこは砂浜で、30歩も歩けばマッピング終了の極小の陸地であった。
360度見渡す限りの海である。
「ああ、、、安い転生サービスなんか使うんじゃなかったな・・・。」
最近流行りの転生サービスは世界で100万人、日本では10万人がすでに利用している。
相場は一人当たり500万円で、親類への報告用転生式、役所への届け出などフォローも万全である。
サービスの利用者は一人で黙って旅立つものがほとんどだったので、転生式を行うものはわずかであったが、行わない場合の割引などはなかった。
意識だけ異世界に行くわけではなく現世界では死亡するため、生前葬と同じようなものである。
500万円というと人生を変えるのには安い金額のように思えるが、特に貯金や資産もない地方都市のカフェ店員である山﨑裕紀には借金しても足りない金額であった。
ツイッターで「あー俺も転生してえな~金ないけど」「美脚エルフに踏まれたりロリネコミミちゃんと戯れたい」などとぼやいていただけである。
ところがツイッターを見た大学時代の友人から連絡があり、転生サービス関係の仕事についていた同期が独立し、格安のプランを展開し始めたということだった。
お値段期間限定10万円。転生式、届け出などのフォローなし。遺書を用意し、遺族からのクレーム等一切受け付けないことなどが条件だった。
人生初めての彼女に振られて完全に抜け殻になっていた山崎にとってそれは希望の光のように思えた。
同期に出した要望は一つだけ。
ネコミミ少女が存在するなら世界は問わない。
そう。
ネコミミ少女はこの世界にいるのかもしれない。
ただし食料も船もないこの陸地を無事に脱出し、気が遠くなるような遠い海の向こうに。