000 蛇足
それから彼は、わき目もふらずに努力をし続けた。
世界の全てを敵に回して、ただ一人だけを助けるために。
「もうやめてよ。これ以上あたしのせいで誰かを犠牲にしないでよ」
少女自身の願いすら切り捨てて。
そうして敵にまわるもの全てを切り捨てていけば、後に残ったのは彼と少女だけになった。
世界は滅びた。
他の全てが消え失せて、誰もがいなくなっていた。
彼の手の中に、残ったものは自分自身と、少女だけ。
彼は自分が間違えているということに気がついていた。
けれど、多くの犠牲を生み出してしまったがゆえに途中では止まれなくなっていた。
突き進むしか道はなかった。
彼はただ後悔のない選択をしたいだけだった。
けれど、どちらを選んでも後悔しか残らなかった。
終わりを前に。
果たして人は、後悔のない選択をつかみ取ることができるのだろうか、と彼は思った。
もしも、あの時、それが叶ったとして本当に未練のない道を歩む事ができるのだろうか、と。
彼は間違えた事だけは分かっていた。
けれど、どこで何を間違えたのか分からなかった。
どうすれば良かったのか。
その彼は、永遠には答えに辿り着けない。