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01 雨と百々
湿気の混ざったぬるい風と独特の暑さを感じた数分後、思いがけない雨は降り始めた。散歩をしているうちは降らないだろうと考えていたが、そんなことはなくて、俺は溜息をつく。
霧雨をもう少し強くした、傘が必要なくらいの振り方で木の下に逃げ込んだものの、あまり長くいるとぽたぽたと水滴が落ちてくるだろう。
やむのを待つよりは濡れるけど動いた方が早い。考えるのはほんの数秒で、気が付いたら木の下から出て掛けだしている自分がいた。
雨の音と走ることで地面に出来た水たまりがはねる音。服や靴下が水を吸って冷たくなって張り付いていく。
心なしかさらに雨脚が強くなったようで……。
(おわり)