06 安心できません、速度落としてください。 〜生後6日〜
あれから更に4日が経ち俺と梨奈さんはわりかし無事に産婦人科から退院した、問題は今までの4日間もトイレが地獄でしかなくありがたい『食事』の時間も俺にはそこまで楽しめたものではなかった。
なぜなら梨奈さんが残念なことにちっぱいだからそこまでちびっとずつしかでねえから、かなりバカバカしいとは思うのだが実際にそうなのだから仕方がない。
しかし哺乳瓶に変えたは良いものの次は熱湯状態のミルクを俺に与えようとしたり散々だった、俺はもしかしたら研究所とかで血液搾り取られる前にこの人たちに世話されて死ぬのかもしれないな…冗談にならねえよ。
さて、俺の目下の悩み事は大抵そんなものなのだが今俺たちは車に乗って神奈川県のある町に向けてドライブの最中というところだ。
どうやら千佳さんは大のスピード狂らしく俺が乗る前に散々梨奈さんに釘を刺されてやっとこの速度である、メーターは100km…まて、これ道路交通法違反だろふざけるな。
更に困ったことに俺の座っているこのチャイルドシート、どうやら古物らしくベルトの締めが緩い、使い古したトランクスのゴムのようにゆるゆるである。危ないから早く気付いて締め直して欲しいものだな。
「…あとどれくらいで着く?」
千佳さんが猛スピードで高速道路を走っていると横から真っ黒な缶コーヒーを手渡す、おいこの速度で片手運転かよまじでやめてくれ、本当に頼むやめてくれ。
「んー…このあたりだと…ここだから…そうだねーあと40分もすればまぁ高速は降りられるよー?」
「そう?そっか」
「んー?車に酔っちゃったー?」
「酔いやすい体質なら千佳の車なんて絶対に乗りたくないわよ…違くて…ね」
「心配?」
「心配じゃないとか緊張してないって言ったら嘘になるかな…はは」
「それで良いんじゃないかな、私たち夜逃げしたんだもんね」
いや、夜逃げ以前の話よりもこの車の速度の異常性に気がついてください、マジで。
「…だよね…これから私たちどうなるんだろ…」
「なーに言ってるの、でも元気出していこうよ、綾の為にもここは安心させるためにも無理してでも笑顔でいなきゃさ!ね?」
俺のためを思って安心させたいのならまずはこの車のスピードを落としてくれないかなあぁっ!?
そろそろ俺怒るよ!?喋ったらまずいから(てか喋れるのか?)鳴き声あげるよ!?
「…そういや綾って全く泣かないよね」
俺が心の中で悲鳴を叫びながら無言で速度を落としてくれと訴えているとようやく俺の願いが通じたのか車の速度が落ちてきた、多分そろそろ高速を降りて一般道を走るつもりなのかもしれない。
そんな中千佳さんが思い出したかのように呟く
「んー?そういやそうだねぇ、あんまりどころかほぼ聞いたことない…よね」
あ、やべえそうじゃん、俺全く泣いてないから不審に思われてない?いやでも今あわてて泣いてもな…くそおおぉ…!全く本当にめんどくさいぜ!取り敢えず高速降りたら泣きわめいてやりますよ!えぇ!
決して犯罪を助長する話ではありません
スピード狂、いますよね、かくいう私もまだ学生なので免許取れてませんが免許とってバイクでも買ったらかなりすっ飛ばしそうです。
いや多分しないですけど…多分
次回で1章は終わり…のはずです
それではまた次回会いましょう、ではでは