名前も知らないバディ
いつからだろう
胸くそ悪いヤニの匂いが隣からするのが
そんなに気にならなくなったのは
今日もてっきりそのヤニ臭い金メッシュ野郎と一緒に俊敏且つ的確に与えられた仕事をこなすつもりでいた。
つもりでいたはずだった。
「急だが明日の任務のバディはくらげじゃなくて、他のやつに変更する。初めての組合せだけど…まぁアレとならうまくやれる…と思うから。」
なんてめずらしく遠い目をしたララさんに言われたのは昨日の夜のことだ
「ふぁ?」
呆けた言葉が無意識に口からこぼれた。
あのときの私の顔はエロ本を読んでるまも並みにアホ面だったとおもう。
「くらげは他の任務に向かわせる。アレとの顔合わせは明日になると思うから。」
いやいや、ふつうであればこの場で顔合わせするだろうと思い
それをララさんに言ったら
「…私にはどうすることもできない。」
とさっきより更に遠くの方をみながらいうもんで
あまり深く気にしない事が吉と思い
了解と短く答え部屋をあとにした。
自室に帰ったあとは、
翌日に備えて朝御飯のおにぎりを作りつつ
任務の内容を正確に思い出し
確認して眠りについた。
そして今日の日の早朝、
薄暗くそしてやけに静かな部屋で
任務の内容を再度思い出しそれに適した
爆弾や獲物を慣れた手つきで選び身支度を済ませた後、昨晩のおにぎり(おかか)を手に取り自室をでた。
ララさんとおそらく初対面だと思われる今日のバディがいるはずの部屋にやや小走りで向かう
「げほっ」
おにぎりが喉に詰まりむせる。
若干涙目になりながらも目的の場所に到着したので
口の中にあるおにぎりを飲み込み
ノックをして扉を開ける
どんな奴がバディなんだか…
「おはようございまーっす」
いつもどおりのテンションで朝の挨拶をしながら
部屋にはいるとそこにはてっきりあるだろうと
思っていた二つの人影が見慣れたララさんの
姿一つしかなかった
「とろか、おはよう。あと歩きながら物を食べるのはやめろと何度もいったはずだが?」
おにぎりは部屋にはいるまえに食べきったはずなのになぜばれたのだろう
「頬に米粒がついてる。」
不思議に思っていたのが顔に出ていたのだろう
ララさんにそう指摘されて自分の頬っぺたをさわる
「あ、ほんとだ」
もうすでに冷たくなっている米粒を
手でとり口に含む
「あんれ?例の今日の私のバディさんはまだきてないの?」
そして、ご飯粒を飲み込んでから部屋に入ってた時からずっと気になっていたことを尋ねる
「…たぶん、出発時刻までには来ると思うんだけど…」
とララさんは言うが
その出発時刻まであと1分しかない
(自分もなかなか時間にルーズだ)
時計の秒針とにらめっこをしていたら
プルルルルル
と内線がなる音が部屋に響いた
ララさんが番号を確認して整った眉を
八の字にして受話器をとる
「はい、おはよう、あぁ、はぁ??落ち着けわかったからはい、はぁ…はい、んじゃ 遅れないようにね。」
ララさんの顔や口調、応答からして
大体の推測は簡単につく。
まだ出会ったこともないバディに対して頭が痛くなる、が一応念のためなにがあったかを聞いておいた
「ごめん、あのアホ寝坊しやがって『後から追い付くから先出ておいて』って。」
ララさんから発せられる予想通りの言葉に、
私は呆れながら
「間に合うの??時間はかかるけども、私一人でも大丈夫だよ?」
受話器の向こうの奴はきっと
今さっきに起きたばっかりだろう
今から用意して間に合うなんて到底考えがたい。
実際今日の任務はそんなに難易度が高くはなかったのでララさんにそう提案したが
「いや、今後のためにもアレとは一度一緒に仕事にいった方がいいと思うから。今日はこのまま二人での任務のままで行え。」
とても不安な点がいくつがあるが
ララさんの言うことは絶対だ
「とりあえずとろは先に現地に向かって待ってて。あのアホいい足持ってるからちゃんと追い付くと思う。」
了解とまた短く返事をして
部屋を出ようとすると後ろから
「あ、そういえば、アレのこと、とろは結構気に入ると思うよ。いってらっしゃい。」
そういったララさんの顔は先程よりも
柔らかい表情だった(気がする)。
「さぁーどうだかねー、いってきまーすっ」
今のところ名前も知らないバディの印象は良いとは言えないのだけど…と
部屋の扉を閉めて小さくため息をつく
そこでやっとかなり時間がおしていたのに気づき
急いで現地に向かったのだった。