衝撃
平和ではないがのびのびと学園生活をおくっていた涼、しかし、時間は刻々とすぎていった。影ではなにやら怪しい雰囲気、あれは誰だ。神宮寺に近づく謎の女、誘惑に誘われながらも葵を心配する。覚醒の時は近づいた!
その一方で神宮寺は影から涼を直視していた。
「このままでは葵君が彼に取られてしまう何かいい考えは無いものか」
すると、考え込んでいる神宮寺の背後から甲高い声が苦笑している。
「大変ですわね、ライバルの多い方はふふふ。」
神宮寺はその声に気づき振り返るするとそこに立って笑っていたのは・・・
見たことも無いような女の人が後ろに立っていた。
「貴様は・・・だれだ!?見かけない顔だな。」
そのことに神宮寺はたいした驚きは無かった、なぜなら序列5位の神宮寺にとって
外の人間、一般人などたいした強さではなかったと思っていた。
「手を貸してあげましょうか?秀次君、」
謎の女性は一瞬で神宮司の間合いを詰め、背後に立った。
「!!」
神宮寺はこの時背筋が凍るような感覚がしていた。
当然だ、外の人間など神宮寺の強さにかなう奴などいると思ったことが無かった。
それなのに神宮寺は軽軽しく自分の間合いを詰められたのだ。
「なかなかやりますね。貴女、何者です?」
さすがは戦闘に慣れているだけのことはある、すぐさま冷静さを取り戻した。
「そうねぇ。今はまだ秘密ふふふふ・・・今日のところはこの辺にしましょうか。
また逢いましょう。」
神宮寺に背を向けその場から去ろうとしていたその時!
「君!まってくれ!!」
神宮寺は彼女を呼び止めた。
「手を貸してくれると言ったな、具体的には何をしてくれるんだ?」
少しの間沈黙が続いた、謎の女性はまた神宮寺を見て苦笑している。
「ふふふ。そうね今の貴方は弱いわ、今の貴方では夜の彼には勝てないわ。」
謎の女性は何故か涼の秘密を知っていた。
「夜の彼?どういうことです?」
謎の女性は一度振り返って神宮寺に耳打ちをした。
「今は時間がないわ、またゆっくりを話しましょ。うふっ♪チュッ。」
「いずれまた遇うわ。」
謎の女性は自分の名前も告げずに神宮寺の頬にキスをして去っていった。
「お、お、おい!」
長いようで短い昼休みはここにもあった。
午後の授業は体育だ。体育は男女一緒にする、男としては嬉しいが
女としては気持ち悪いに決まってる。たぶん・・・・
そんなわけで昼の俺は体育はあんまり好きじゃない。
「さぼろうかなぁ」
そんなことをぶつぶついってると、
ビシッ。鈍い音と共に頭を電気が流れるかのような衝撃が走る。
「こらっ涼!今体育サボろうとしてたでしょ!!」
ボコッ!
殴ってきたのはショートヘアの女の子、葵なのだが・・・なぜ気づかれた?
「いてぇな、叩くことないだろ。」
ボコッ!
だるそうにぶつぶつ言ってると、また叩かれそうになったが
それに気づき近くに在った鞄で防御した。
フンッ!
しかし、フェイントされて
攻撃はあたった、涼はダメージをうけた・・・・・。
ドーン!
「うぅぅぅ。」
「うるさいわね。ぶつぶつ言ってないでさっさと着替えていくわよ。
ったく何体育くらいでぶつぶつ。」
涼はさっさと着替えることにした。
これ以上怒らすと近くにあるバットで殴られそうだ。
葵と付き合うやつは大変だろな、浮気なんてしたらほんとに病院送りにされそうだ。
「今、なんか変なこと考えなかったぁ?」
これ以上考えるのはやめよう、ぼこぼこにされてしまう。
顔が腫れているのはきっと気のせいだ。
「別に、そんなことより早くそとでよう。」
そそくさと教室を後にした、それを追って葵もついてきた。。
----グランド-----
今日の体育はバレー。球技は得意なほうではない背もあまり高くないのでネットにとどかない。
それに比べて藍はというと、背も高くすらっとしていて、モデル体形、運動神経もよく頭もそこそこ良い
だから、葵はクラスではなかなかの美人で人気者なのである。
子供の頃からの付き合いだったからもう見慣れている他の馬鹿な男達とは違い
「『あいつ良い体してんなぁ』とか『胸でけぇよな』なんてことは考えたこと無いな。」
「なにいってんの君?」
「えっ?」
まずい、さっきの独り言が聞かれてしまった。彼は葵にかなり熱狂的なファンだったような気がする。
「いや、別になんでもないよ。」
とりあえず誤魔化しておいた・・・・。
「そこ何をべちゃくちゃと喋ってるんだ!はやくコートに入って練習しなさい!」
そろそろ今日の出番がやってくる。
ふっふっふ今日の俺はちがうぜ!なんて考えていそうな奴が京の後ろを守っている。
自分のとれない範囲でも突っ込んできそうだ、さっさと避けるにこしたことはないな。
「いくぞ!オラァ」
バシッ。
楕円形に変形したバレーボールが時速150キロはありそうな勢いで飛んできた。
はやすぎっぞ。ふざけんな、このアホ教師が。
「まかせろ涼!今日の俺は違う!オリャァァアアァア」
バシッ ドカッ トントントン
「後はまかせたぞ・・・・・みんな・・・・」
バタッ
のりのいい少年Aが言った。
「ひろしーーーーーーーーーーーーーーーー!」
なんだこれは、どっかのドラマの撮影か?ドラマでもないなこんなもん。
バシッ。
「いてっ、だれだちくしょう」
後ろを向くと葵が何か言いたそうに立っていた。涼は先に何か言うべきか迷ったが
先を越された。
「なにやってんの涼?楽しそうね。ふふっ。体育サボらなくて良かったわね」
どいつもこいつも何を言ってるんだかもうさっぱりです。
涼の頭はパンク寸前の状態まで追い込まれていた。
「うるさいなぁちゃんと構えてろよ。また、あの強烈なボールが来るぞ。」
なんだかんだいってやるからには徹底的にやるのが涼だ。
涼はAB型、特徴としては完璧主義、あと変わり者ということだけだ。
O型とは相性が悪い、O型からみればAB型は理解できない。
意味不明な行動をしている風にしか見れないのだ
「見てて。先生こっちに一本おねがいしまーす。」
「お!なんだ明日乃瀬、やるきか?いくぞ!ソラッ!」
バシッ!
さっきと威力は劣らずに葵めがけて飛んできた。
「涼も構えて、パスするから。」
ポンッ。
軽々とあのサーブを藍はとってしまった。もう言うことはありません・・・
涼の方に緩いボールが落ちてくる。
「涼!上にあげて!」
「ほらパスッ。」
涼がボールを上げると葵がジャンプする。
「先生行きますよ。ハッ」
バシッ。
「この程度なら余裕だ、ソラヨッ。なに!」
ドンッ。
ボールは先生の手元間じかで曲がった。
先生の手にはあたったが、線をでてアウトになった。
「なかなかやるな明日乃瀬!次はそうはいかんぞ!」
熱血教師の負けず嫌いな性格が出てしまった、こうなっては勝つまで体育は終わらない・・・
かんべんしてくれよ。
生徒達はみんなそう思ったに違いない。
困ったことに葵も負けず嫌いだ、逃げようとおもっただ逃げた瞬間、葵が追いかけて来て
殴ってきそうなので終わるまで付き合うことにした。
チャイムがなった。どうやら時間切れのようだった。結局勝敗はつかなかった。
もうそんなことどうでもいいから早く教室戻らして・・・・
「明日乃瀬、次は決着をつけるぞ!」
「先生も首洗って待っててくださいね。」
・・・・もう教室にもどろう。
次の授業は国語か、帰ろうかな・・・
しばらく考えて屋上に行くことにした。
うちの屋上はカフェのような場所になっていて
生徒なら安値で、コーヒー、パンなどが買える。
「屋上にでもいくかな。」
それに屋上なら教師や校正員達がいることはない。
なぜかは知らないが校則にはそう書いてある。
涼は逃げるように屋上に走って行った。
------屋上-------
「やっぱこの場所は落ち着くなぁコーヒーでものんでゆっくり午後の一時でもすごすとするかな。」
今日はつかれた、ほんとに疲れた校正員達には襲われるし、体育では熱血教師とバレーを永遠と、
このままいくと今の状態にさえ誰かが邪魔しにくるような気がする。
「涼!」
あぁ、俺の午後のティータイムを邪魔しようとする天使が、
「何ですかな葵君」
涼は紳士っぽくなりきっていってみたが、葵にはぁ?とか言われてしまった。
軽く傷ついた涼の顔には、目から流れる、液体が頬を沿って落ちた……
なんてことはなく、反撃開始。
ボコッ!ボコッ!ドカッ!パリーン!
パリーン!?
ガラス細工が割れたような音がした。
くっ…こいつは何で殴ってんだ。
殴られるのは慣れたが物はないだろ。
「葵!いいかげんにしてくれ!。パリーンって何で殴ってんだよ」
「私じゃないよ」
「うそをつけお前以外に一体誰……が……」
隣のテーブルからだった、さっきまで誰もいなかったはずなのに、そこには人がいた。
それもよく見る人だった。
「神宮寺先輩!何やってるんですかこんなところで……それにここは……」
おいおい、校正員はここは入れないんじゃなかったのかよ。
「んっ…君は、葵君、どうして君はこんなところに」
……無視された。また涼の心に傷…もういいや。
その後、神宮寺に聞いた。授業中だけは入っていいんだと。
他にも色々あったが、どうでもよかった。
学校も終わり涼は葵と一緒に帰ることにした。
時間は五時五十分夜まであと十分
ざわっ
後ろから殺気に似た感覚があった。
捕食者が餌を前にしたようなそんな感じだ。
寒気が全身を走る、それは電気の如く早く確実に。
「なぁ葵、さき帰っててくれ。俺はちょっと用事があるからそこよって帰る」
「えぇ〜それなら私も一緒についてくよ」
あと五分
時間は刻々と迫ってきた。
いつもはこの時間には家にいた。もう疲れてうとうとしているような時間だ。
四分、50秒、40、30、20
時間と共に嫌な予感が強くなる。
前にもこんなことがあったような……だめだ思い出せない。
涼は片足を地面につきそのまま倒れてしまった。
葵が心配して背中を揺らしている感覚があった。
二分
遠のく意識の中で逃げろ、逃げろと叫んだ。
声に出す力はもうなく、聞こえるはずもなかった。
一分
ドクン…ドクン…
心臓が張り裂けそうな鼓動、時間と共に激しく唸る、
思い出した…あいつだ。あいつが目覚める。
空が急に曇り出した。ポタポタと狐雨が降る。
あの時と一緒だ。
……姉さん、ごめん……
涼の目から涙が零れた。意識はないはず、と葵はその間ずっと声を掛けていた。
「涼!涼!どうしたのよ!涼!」
5
4
3
2
1
ピ────
うおおぉぉぉぉおぉぉ!
涼が唸る、どす黒い悪魔が吼えているような声
ふらっと、手をつき立ちあがる。葵が手を差し伸べてくれた。
その手を、強く握る、
葵がそれに反応し、パッと手を離そうとするが涼の力が強く離れない。
「涼…痛い。放して…いたっ……」
葵は足を地についてしまった。涼は仕方なく手を放した。
「どうしたの……涼。」
「……俺はもう涼じゃない、涼であって涼じゃない、くくくくくっくっく!はっはははっはは!やっとだ。
あの時と同じ感覚、ここにはもうあいつはいない、」
「…何、言ってるの涼…ねぇってば涼!」
涼は蛇のような冷たい目で葵を睨んだ。
にやり、と頬が上がり、口が歪む。
そして言った。
「さぁ、狩の始まりだ。まずはお前だ。お前のような存在は邪魔だ。あいつのように犯してやる」
葵は目が青ざめた。目の前にいるのは涼じゃない、容姿は涼だが涼じゃない。
葵の頭の中に走馬灯がくるくると回る。
混乱する葵、何もないただ広くただ暗いだけの場所に裸で放り出されたような感覚。
思わず、涙がでた。
恐怖で何も言うことは出来なかった。
ただ、
「……涼…助けて……」
もう何も言うまい。
目の前にいるのは悪魔だ。目の色を変え、姿は同じでも、違う。すべてが違う、まるで違う人。
涼が葵に手をかけようとした瞬間だった。
涼の耳には声が聞こえた。
あいつだ。それは姉の声だった。
フラッシュバックのように目の前にいるはずのない姉がいた。
「やめろ……やめろ!だまれ!」
あの時と同じ、あれ以来、涼は昼は元に戻った。
夜だけはやつの力が強まり、というか涼が寝ているので、
こいつが出てくる。終わらない欲望。
あの日、姉は身をていして、助けてくれたんだった。
思い出した。でも、俺のしたことは……
「…に…げろ……にげろ……葵!」
「涼……涼!」
意識を取り戻し、葵に逃げろ逃げろと同じことを叫びつづけた。
葵は戸惑った。さっきのようにまた強く手を握られるんではないか、
涼が近づいてくる。演技なのかもしれないと葵は思った。
手を指しの出てきた時だった。
「あ……あぁ……」
葵は全身凍りついたように動くことができなかった。
すると、涼はまた倒れてしまった。
その瞬間に葵は急いで逃げた。
ただ遠くへ、走っていた、逃げても逃げても追われているような感覚。
葵は走った。息の続くまで…ひたすら走った。
「うぅ…くそっ!まだあいつが邪魔するか。だがもうそれも終わりだ…まずは狩だ」
その後、涼を見た女は声の出せないような恐怖に陥り、助けを呼ぶことも出来ず……
姉が出てくることはなかった。
時間は立ち、時間は真夜中、アナログ時計の針が上を指していた。
街に響く、唸り声、狂ったように叫びつづけていたかのように、声と一緒に聞こえてくるのは
悲痛にも叫び声、闇に満ちた協奏曲、終わりを告げるのは、
朝の光か、それとも忘却の声なのか、それを知る者はだれもいない。
涼は本能という人間で一番強い欲の赴くままに…人を狩る。
-----一方そのころ-----
遠くで状況を見ている人物がいた。
「ふふ……ついに出たようね。さぁ暴れなさい、欲望のままに……あなたは今の彼に勝てるかしら?
……神宮司君」
「……勝ちます。葵君の為にも負けません」
「ならこれを……いざという時に使いなさい、」
神宮寺に渡されたのは謎のドリンク、見た目からは栄養ドリンクにしか見えない。
それは何なのか知っているのはこの女だけ。
神宮寺は中身に何が入っているのかは聞かなかった。
興味がないとだけいっておこうか、ドリンクを飲むはずはないと確信していたからだ。
涼の強さが解らないわけではないが、本能のままに動く敵を倒せないわけはないと思っていた。
いわば動物と何ら変わりない。
一夜にいろんな物語がくり広げられていた。
それは同じ時に同じ月を眺め、同じ空の下にいる人の生き様なのだろう。
──光が見える。
それはまるで、無限に続くトンネルの間に垣間見える景色のように。
何度も繰り返されては―闇
意識の断絶を拒み、壊れていく。
光と闇は表裏一体、善と悪も、昼と夜も―また然り。
ただ言葉であるから人に作られ、人によって変えられる。
しかし、いつしかそれらは両極に追いやられ、そして決して交わる事のない一線を作った。
絶対不可侵の領域―辻引の間
それは言葉ではなく存在
それを見ることは禁忌
それを侵すこともまた禁忌
もし、それに触れることがあれば……
目の前には既に言葉も発する事の無くなった抜け殻。
自分はただ淡々と同じ作業を繰り返すだけ
だが、それが今の俺に快楽をもたらす。
ふと、背後に違和感を覚え涼は振り向いた。
「涼君……」
神宮寺は瞬時に悟った
既にこの男、大御前涼は人ではない。
人の皮を被った化け物だと。
本来在る筈の輝きも、もうその瞳には宿っていない。
在るのはただ生物の本質。
―生欲
生きること、それもただ生きるのではなく己の欲を満たすために。
尽きることも、終わることも無い絶望を生み出す。
かつて、師に教わった。
この世には理屈などという矮小な言葉では形容できぬ力があると。
是、即ち極と。
人の侵してはならない禁忌を犯し、
極に堕ちた大咎人。
その血を受け継ぎし忌夜人。
我ら神の銘を携えし辻引の末裔は、
それら極を屠ることこそ死命なのだと。
その時はただの言い伝えなのだと思っていた。
ただの御伽話なのだと思っていた。
しかし……
考えていたのはほんの一瞬──
降り返った涼と目が合った時、神宮寺は体に怖気が伝わるのを感じた。
伝染していくそれを抑え、
後ずさろうとする足を引き戻す。
涼は目の前に転がっている女を一瞥すると、手を止めた。
そして、口の端を大きく歪め神宮寺と対峙した。
何処からとも無く生暖かい空気が流れる。
触れれば張り裂けそうな空間の中で、
次に口を開いたのは涼であった。
「何のようだ?今は俺の時間だぞ。」
明かな怒りを含んだ声。
何をしていたのかは知らないが、
今の行動を邪魔されたのが相当燗に障ったらしい、
その目にもはっきりと憎悪の念が見える。
神宮寺は涼の問いには答えず質問を投げかけた。
「君は……誰だ。」
これは唐突だ、
普通であれば笑われるであろう質問だが、
しかし、この場においては真理を追究する言葉。
自分はこの男を倒すためにここに来た。
それを以ってして、前に知るべきことがある。
曖昧であった思いは今や確信となって心に積もる。
目の前の男は極、自分は辻引の末裔。
ならその意味は?
「答えは自分で見つけろ、それとも、今のは確信か?」
全てを知っているのはこの男、
あの女が言っていたことに何の意図があるかは知らない、
いや、知る必要は無いだろう。
謎の女のことを思い出しそっと懐中の薬瓶を握り締める。
もしかしたら、これを使わなくてはならないかもしれない―
「君を倒す、これ以上君を葵君の側においておくわけにはいかない。」
左手を下げ、右手を空に突き出す。
右手は相手を倒すのではなく、その攻撃を捌く為。
引いた左は必滅の一撃を繰り出す溜め。
同時に即避けることの出来る構え。
攻と防の一体。
相手の力が未知数な以上、迂闊な先制は死を招く。
戦いに必要なのは流れ、
そしてそれを導く無我の心。
二人の間に生まれた闘気はさながら、
濁流の如くぶつかり弾け合う。
「そんな事、本人に言ったら怒るぜ。」
「貴様のような輩が、自惚れるな。」
戦いの合図は無かった。
神宮寺が涼の姿を捉えた時には二人の間は僅か二足であった。
右手が襟首を掴もうと迫るのが見える。
─―速い、だが……
左半身をずらしその手を紙一重で避わす。
左手も伸びて来るが、
前に突き出した右手をその肩口に当て威力を殺す。
そして、半身ずらした分を戻す回転力を加えた必殺の一撃を、
「覇!」
がら空きになった鳩尾に叩き込みさらに力を貫通させないように
直撃の瞬間に拳を捻り込む。
最初に伝わってきたのは肉を抉る感触、
次に骨を砕く確かな手応え。
捻った拳の回転が肉を通しそのままダイレクトに波紋のように広がる。
涼は錐揉み状態のまま三メートルほど吹き飛び地面を滑った後、
ようやく砂場で止まった。
―─今の手応え、常人で無くとも致命傷だ。まさか、杞憂であったか……
神宮寺は涼の状態を確認するのは後回しにして、
目の前に倒れている女性のことを優先した。
ゆっくりと近づき状態を確認する。
無残に引き裂かれたブラウス、
そこからは白い肌が露わになり、
月光がその悲壮感を一層際立たせている。
スカートはただ腰に纏わりついているだけの布と化し、
本来の目的はもはや失われている。
それ以上は見ずに自分の羽織っていた上着を掛ける、
と、ふと見なれたマークが目に留まった。
「この校章は……」
それは、母校神明高校の物だった。
え〜ついに覚醒したんですが。その先を私は考えてないので友達が書いてくれました。他にもアイディアがあったのですが、もうなんか色々大変で受験とかいろいろまた暇があれば投稿しますんでよろぺ