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王女リゼットシリーズ

王女リゼットの独白

作者: かずほ
掲載日:2026/08/02


 ごきげんよう、皆様。

 リゼット・フォン・サンクチュアリです。


 今日もお気に入りのテラスで美味しい紅茶とお菓子をいただいております。


 先日、エリスお姉様は晴れて女王として擁立されました。


 最近、ようやっと呑み込みきれなかった現実を呑み込み始め、ただいま順を追って消化しております。

 消化が進むにつれ、私の前世の記憶は何のために思い出してしまったのかと。虚しさを感じる日々を送っております。


 前世の私の知る女王即位エンドにもいくつかパターンがありました。


 まず、「好感度」によって変化する7人の攻略対象者各々と結ばれる王配エンド。

 そして攻略対象者が臣下となり「パラメータ調整」なるもので到達する即位エンド。

 これには2パターンあり、魔法と賢さを高める事で到達できる『稀代の魔法王エンド』。

 剣術と体力を高める騎士王エンド。

 魔法王エンドではその知見の広さや深さで、騎士王エンドでは武勇をもって周辺諸国と渡り合い、国交や同盟を結び、平和な時を謳歌するといった内容です。

 覇を以て周辺諸国を圧倒せしめるようなエンディングは存じ上げません。


 前世の私はこの乙女ゲームに心血を注いでおりました。用意されていたエンディングは良きも悪しも全て網羅しておりました。完全コンプリート、いわゆるフルコンプを達成しておりました。一編の取り漏らしもなかったと確信しております。


 しかしながら、ゲームを逸脱したそもそもの原因はタイトルが悪かったのではないかと考えております。


『アルコバレーノ (インフィニティ) 』の∞とは主人公の選択の可能性を示すものとの事。


 その無限大(インフィニティ)の選択肢が、前世のデータすら逸脱し、その末に到達した『覇王エンド』とも言うべきが今のエンディング。


 お姉様のパラメータはどうなっているのでしょうか。

 私の役に立たないゲーム知識によれば、各々の上限は100。

 けれどお姉様は私の知らないパラメータで100以上はあるように見受けられます。


 そういえばお姉様は常々仰っておりました。


「限界とは越えるもの」


 と。


 私は冷めかけた紅茶を一口飲み、虚空に向かって呟いた。


「これ、二期って本当に始まるのかしら」


 二期のヒロインもお姉様と同じタイプだったなら、太刀打ちできる気が全くしないのです。

 私のような弱者は強者に阿るか淘汰されるかの二択。


「せめて『アルコバレーノ70%』くらいのタイトルならひょっとしたらお姉様も次のヒロインも既存のルートで落ち着いてくれていたのかしら……」


 これから3年後に始まる二期が恐ろしくて仕方がありません。


 そもそも『アルコバレーノ∞ 2』の公式シナリオにおける私、リゼットの役割は前作で女王となったエリスお姉様に対して何をとち狂ったか王位継承権を主張し、お姉様の政策に異議を唱え、学園では二期のヒロインと対立する流れになるのです。


 ……3年後の私、反抗期でしょうか。


 一言申して良いでしょうか。



 正気ですか?



 ゲームの企画段階のスタッフに小一時間問い詰めとうございます。 あの、素手で魔物を縊り殺し、7人の実力ある狂信者を従え、国民支持率99.8%を誇る覇王たるお姉様に対してですか

よ?

 この前世享年29歳しがないOLの記憶しかもたない、カトラリーより重い物を持った事のない15歳の私が? 「私こそが次の女王よ! お姉様なんて認めないわ!」なんて言えると思いまして?


 言える訳がありません! そもそもキャラがブレっブレではありませんこと?


 そもそも、政治的にも勝ち目などゼロどころかマイナス。 お姉様が女王に即位してからのサンクチュアリ王国の国力は爆発的に向上しました。

 軍事面では、お姉様が直接指導した軍部が大陸最強の精鋭部隊と化し、隣国からの侵略の気配すら皆無。 経済面では、お姉様の下僕が構成した処理班により、税制改革が完了。 治安は劇的に改善し、街には強面の巡回兵士と国民の笑顔があふれています。


 私が入る余地などどこにありはしないのです。


 そんな完璧な布陣を敷いたお姉様に刃向かうなんて、自殺行為以外の何物でもありません。


「ともあれ、今後の方針としては、お姉様には逆らわない、二期ヒロインには関わらない。

この2つさえ徹底していれば平穏に暮らしていける筈」


 がんばれ私!と、温度のなくした紅茶で喉を潤しひと息つきました。


「乙女ゲームって、何だっけ……」


それに応えてくれる相手は何処にもいませんでした。


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