2 腐女子、旅立つ
腐女子である藤崎萌は女神ディーテにスキルを授けられて異世界セフィリアに転生し、ユリウス王子に会うことで前世と女神に会ったことを思い出します。
魔王を倒す旅に出る前日の話です。
(え、この人ってユリウス王子じゃん……)
魔王討伐に旅立つ前日の宴でユリウス王子に会った瞬間に前世、そして女神ディーテ様に会ったことも全て思い出したのである。
私は藤崎萌だ。いや、だったと言うほうが正しいだろう。
今の私はアウローラ・モエ・コルネリウス。中流貴族の娘で17歳になったばかり。前世の名のモエが入っているのは女神の取り計らいか。
父から聞いた話だと祖先は海賊で、その能力を初代皇帝に見初められ、アドニス帝国の貴族となったらしい。
わがコルネリウス家は表向きは中流貴族としてあまり重要ではない役職についているが、実は裏でスパイや暗殺を生業としている。
諸外国の情報を探ったり、アドニス帝王にとって邪魔な政敵を消したりするのが主な仕事だ。
その情報網と暗殺技のお陰で裏ではかなりの権力を持っている。
そして、私は幼いころから家庭教師のルカ先生からは地理学、生物学などの学問。そして父からは武術、暗殺技などを徹底的に叩き込まれた。
コルネリア家では男女問わずこのような訓練を受けるらしいが、私は武術、暗殺技はあまり得意ではなく、いつも父と先生を呆れさせていた。
その劣等生の私が勇者のパーティに選ばれたのはおそらく女神の手回しとわたしが授かったギフトのお陰だろう。
―女神ディーテとの会話
「えぇ?空気って何?とんでもない怪力や、すごい威力の魔法を与えることもできるのよぅ?」
女神は不思議そうに見つめてくる。私を珍獣か何かとでも思っているのか。
「私、そんなもの要りません。ただ、推しカプに気づかれずにその愛の営みを見守りたいんです。」
「へぇそういう人間もいるのねぇ。じゃあ、あなたに隠密のスキルを与えるというのはどうかしらぁ?
このスキルがあれば気づかれずに敵を倒すことが出来るし、人の恋愛も見放題よぉ
極めればあなたの言うとおり空気になれるんじゃないかしら?」
(おお!さすが女神様だ!自分の要求と私の要求を満たす提案をしてくれるなんて!!)
「わかりました。女神ディーテ様。その隠密のスキルを下さい!!
必ずボーイズラブを育み、見守ってまいります!!」
「モエったら魔王のことさっぱり忘れてなぁい?魔王もしっかり倒してね。お願いよぉ?」
そう言うと女神はふわりと私を抱きしめた……。
「おまえがコルネリウスの娘か…。その装束はなんだ?俺の前で不敬であろう。そのフードを取れ。」
会場が静まり返る。急に現実に引き戻され、私の正面に立つユリウス王子の顔に見惚れる。
女神ディーテさまが見せてくれた映像通りの美しい白銀の髪を持った美男子だ。
眉間にしわを寄せた姿も良い。
私は帝国の重要人物はすべて把握している。
仕事のためではあるがアドニス帝国は美形が多く、趣味も兼ねて情報収集していた。
ユリウス王子は現アドニス帝の弟であり、神託により選ばれたと勇者いうことで民衆から人気がある。
確かに彼はアドニスで一二を争う剣の使い手で、今年帝都で開かれた武術大会でも優勝した。
しかし、性格に難があり、兄であるアドニス帝に疎まれていると噂されている。
「ユリウス様、モエ様も魔王を倒す仲間になられたのですから争いはおやめください。」
王子の隣から長身の男性が現れる。
(このお方は!!)
ジェイド・カーディ。色白で深緑色の優し気な瞳の男で、もちろん美形だ。均整の取れた体は 細いながらも鍛え抜かれているのが分かる。
彼はアドニス帝国に敗れた周辺諸国の生まれで、父母を戦争で亡くした。
戦闘奴隷として奴隷市場で売られていた時にユリウス王子に出会い、召し抱えられたという。
王子はまだ10歳、ジェイドは14歳だったはずだ。
このアドニス帝国の奴隷は日本人が想像する奴隷とは少し違う。
奴隷はその主の所有物であるが、社会的地位が低いわけではない。
身分の高い貴族などの奴隷は、成果を出せば帝国でかなり地位まで上り詰めることができるという。
過去には大将軍にまで出世した奴隷もいたらしい。
ジェイドもその知恵と巧みな治癒術によって頭角を現していた。
「ユリウス様、モエ様はコルネリア家の家訓により、家族の前以外ではフードを取れないのです。」
ああ、そんな設定にしていたなと思い出す。
前世でコミュ障で陰キャだった私が転生したからといって性格が変わるはずもなく、今も家族以外とは面と向かってまともに話せない。
そんな私を案じた父が贈ってくれたのがこの漆黒のローブだった。
これは父が軽くて丈夫なアーリー布(絹のような手触りでカラスの羽のように黒い布)を取り寄せ、職人が丁寧に縫製したものだ。
その名の通り真っ黒で、前世、テレビで見た中東の人たちの服に似ている。
頭まですっぽりと覆われて顔も見えないので、コミュ障の私にはぴったりな服なのであった。
「ふん、怪しい奴だな。俺はお前をパーティの一員とは認めないからな。」
そう言い捨てると王子はすたすた歩いて行ってしまった。
「すみませんモエ様。ユリウス王子はああいう気性なので。でも、良いところもあるんですよ。
これからよろしくお願いします。」
「ジェイド何してる、早く行くぞ。」
王子に呼ばれ、ジェイドはにこりと微笑んで去って行った。
(……なにあれ!エモ!!主従BLね\(^o^)/ めちゃくちゃいいカップルじゃん!!)
これからの冒険で二人はどんなシーンを見せてくれるのだろうか。そして世界にはまだまだ私の知らないボーイズラブが待っているはず!!
わくわくが止まらないぜー!!
私はガッツポーズをしてまだ見ぬ世界に思いを馳せた。
慣れていないので書くのに時間がかかりますが、考えている間はとっても充実しています♪
最後まで書けるといいな。




