第87話:最後の戦い【その6】
淡々と話すガレス殿。とはいえ、内容があまりにも衝撃すぎるのだ。
「それでは、もう闇の力を持つ方は、あなた様しかいらっしゃらないという事ですか?」
“ああ、そうだ。もう一つ言うと、魔王を誕生させてしまった以上、闇の力を持った者が生まれる可能性は、さらに低くなった。もう一生、生まれる事はないかもしれない。そう考えると、私が最後の闇の力を持った者になる。とはえい、私も数百年に一度は、魔王の血を分けてもらわないといけない。
そうしないと、生きられないのだよ。だからこそ、魔王が倒された今、新しい魔王が必要なんだ。闇の力を維持し続けるためにね。
そして光の力を持つ一族、マクレス家もまた、光の力を持った者が生まれにくくなっている様だ。前回光の力を持った子が生まれたのは、4500年前だったかな?とはいえ、マクレス家は既に、光の力の事を忘れている様だが…“
「確かに我が家がその様な一族だったとは、聞いたことがありませんでしたわ…その上、私がその光の力を持った人間だなんて…」
信じられない。私のどこに、そんな力があると言うの?
“君が信じられないのも無理はない。だが君は間違いなく、光の魔力を引き継いでいる。それも膨大なね。実は今、新しい魔王を誕生させるための準備を進めているのだよ。君はその事を知って、今必死に動いているのだろう?”
「ええ…そうですが。どうしてそんな事を、ご丁寧に教えて下さるのですか?」
“そう警戒しなくてもいいよ。アイリーン嬢、私と勝負をしないかい?”
「勝負ですか?」
“ああ、そうだよ。何のめぐり合わせか、1億年以上の時を超え、再び闇の力を持つ者と、光の力を持つ者が再会したのだ。いい加減この辺りで、決着を付けたくてね。もちろん、断ってもいいが…もし断ったら、もう二度と光の力を持った人間が生まれない様に、私は真っ先に君の家族を手にかけるだろう…
魔王も誕生し、再びこの国は暗黒の世界に包まれる事になるが…“
「私を脅しているつもりですか?どのみち、闇の一族が生きている限り、この国に平和は訪れませんわ。私は今世はもちろん、未来を生きる人たちの平和も守りたいのです。その為に、命を懸けて魔王と戦ったのですから!
闇の力を持ったあなたを、ここで打ち取りますわ」
そうよ、この男が生きている限り、魔王はいつでも誕生させられる。この男こそが、私たちが倒さなければいけない人物なのよ!
“落ち着いてくれ、アイリーン嬢。今君と戦うつもりはない。10日後、夜中の2時に王宮裏の、丘の上で会おう。君との戦い、楽しみにしているよ”
ガレス殿が話し終わった瞬間、再び霧に包まれ、そしてジルバード様の元に戻ったのだ。
「この10日間、私なりに魔力を磨いて来ました。さあ、最後の戦いを始めましょう。闇の魔力を持つ者、ガレス殿!」
あの日以降、私はずっと魔力を磨く訓練を行って来た。もちろん、皆にも今回の事を丁寧に話した。最初は猛反対をしていたジルバード様だったけれど、私が戦わなければどのみち皆命がない事を説明した。
“黙って殺されるよりも、少しでも可能性のある方に懸けたい”
という私の強い気持ちを、最終的には理解してくれた。そして今回の戦いでは、ジルバード様はもちろん、お兄様や令嬢たちも応援に来てくれたのだが…やはり1対1で戦う事になりそうだ。
“さすが光の一族の末裔ですね。ですが今のあなた様では、私には勝てないでしょう。ここで私が勝って、1億年前の雪辱を果たすとしましょう”
次の瞬間、ガレス殿の手から真っ黒な霧のようなものが、大量に放出された。ゆっくり瞳を閉じる。
大丈夫よ、私が本当に光の魔力を持った人間の末裔で、その力を受け継いでいるのなら、絶対に負けはしない!
私の中に眠る光の魔力を、今こそ目覚めよ!
パチリと目をあげると、魔力を一気に込めて、黒い霧に向かってぶつける。その瞬間、まばゆいばかりの光が、真っ黒い霧とぶつかった。
これが光の魔力の力なの?自分でも驚くほどの力だ。
“ほう、まさかわずか10日間で、光の魔力を使いこなせるようになるだなんて。さすがだな!だが、生まれて十数年の小娘に、4300年生きた私が負けるわけがない!これでどうだ!」
再び膨大な真っ黒な霧が、私に襲い掛かる。
「きゃぁぁぁ」
何とか受け止める事が出来たが、それでもかなり押されている。きっとこのまま、黒い霧に飲まれた瞬間、私の負けが…そしてこの国も未来が終わってしまうのだろう。
私の大切な家族も友人も、そして愛する人も…




