第85話:最後の戦い【その4】
「…ン、アイリーン、しっかりしてくれ。アイリーン」
「う~ん…」
目を開けると、目の前には涙を浮かべた、ジルバード様のお顔が飛び込んできた。その後ろには、同じく涙を浮かべたミミア様の姿も。
「お2人とも、無事だったのですね。申し訳ございません。私のせいで、お2人にも危険な目に遭わせてしまいましたわ」
「私は大丈夫ですわ。それよりも、アイリーン様が中々目を覚まされないので、とても心配しましたわ。目覚められて、本当によかったです」
「ミミア嬢の言う通りだ。すまない、俺が油断したばかりに。君を残して意識を飛ばすだなんて…」
悔しそうにジルバード様が、唇を噛んでいる。
「あの魔力は尋常ではない魔力でしたので、意識を飛ばしても仕方がありませんわ…とにかく、あの小屋にはもう、近づかない方がよさそうですわね」
「アイリーン?君がそんな事を言いだすだなんて、珍しいね。何かあったのかい?」
「いいえ、何でもありませんわ。ただよく考えてみると、魔王との戦いからまだ10日も経っていないのですよね。しばらくはゆっくりいたしますわ」
「アイリーン様がそんな事をおっしゃるだなんて…とはいえ、あなた様は魔王との激戦を行ったのです。それなのに、意識が戻ってからずっと動き詰めでしたものね。どうかゆっくり休んでください」
「ありがとうございます。ミミア様。よく考えてみたら、あなた様達も魔王たちとの激戦で、相当お疲れでしょう。どうかご無理はなさらずに」
「お気遣いありがとうございます。ですが私たちは、既にゆっくり休んでおりますので。ご心配はいりませんわ」
そう言って笑ったミミア様。
「それでは私は、一度帰りますわ」
「ありがとうございました。ミミア様」
笑顔で手を振って帰るミミア様を見送る。
「アイリーン、本当によかった。公爵から聞いたよ。部屋に結界を張って、誰も入れない様にしていたらしいね。本当に君は!今回の件で、増々君を1人にしておけないという事が分かったよ。
今日から君には、この部屋でしばらく暮らしてもらう事になったよ。もちろん、俺の監視付きで!」
「ジルバード様の監視という事は、ずっと傍にいられるのですね。もちろん、大歓迎ですわ。それにもう、私はあの場所には行くつもりもありません。しばらくは、のんびり過ごすつもりですわ」
「…アイリーンが素直に受け入れるだなんて…いいや、俺を油断する作戦かもしれないからな。とにかく、もう俺に内緒で、勝手に行動するのはやめてくれ。いいね」
「本当にジルバード様は、心配性なのですから。もう勝手な行動はしませんわ。絶対に!」
「その言葉、信じていいのだね」
「ええ、信じて下さい!絶対に勝手な行動はしません。もし約束を破ったら、私を牢に入れても構いませんわ」
「さすがに君を牢に入れる事は、出来ないな」
少し困った顔をしながら、ジルバード様が笑った。私は彼のこの笑顔が大好きだ。私の手で、彼の笑顔を守りたい。
その為にも…
~10日後~
「お待ちしておりましたよ、レドルフ殿下。魔王になる事を承諾して下さり、ありがとうございます。こちらが、我が家に唯一残っている闇の魔力を受け継ぐ者でございます」
「クレスロン元男爵の言う通り、護衛たちがなぜかいなくてね。本当に君の能力はすごいよ。あっ、凄いのはその隣にいる、闇の魔力を受け継いだ人か」
「いなかった?ですか。…まあいいです、私たちの居場所は、絶対に見破られる事はありませんから。殿下、魔王になった暁には、彼に少しあなた様の血を分けてあげてくださいね。
彼は魔王の血で、何とか生き延びているのですから」
「ああ、分かっているよ。これでやっと、あのにっくきジルバードを地獄に叩き落せるのだね。楽しみだ」
「あなた様のその憎しみに満ちた瞳…本当に魅力的ですな。あなた様ならきっと、立派な魔王になれますよ」
「立派な魔王だなんて、あまり嬉しくはないが。この国とアイリーンが手に入るのなら、まあ何でもいいか」
「それでは早速始めましょう。ガレス殿、お願いします」




