第84話:最後の戦い【その3】
「どうしてって、君の考える事なんてお見通しだよ。あの後君が、あまりにもあっさり引き下がったから、気になってね。きっと俺の目を盗んで、ここに来るだろうと思っていたのだよ。案の定、夜中にミミア嬢がここにきて魔法陣を描きだしたから、やっぱりねって思って」
「ごめんなさい、アイリーン様。魔法陣を描き終えたところで、ジルバード殿下に見つかってしまって…殿下がこんな風に、人の行動を監視する様な人だなんて思いませんでしたわ」
「自分の婚約者が危険を冒そうとしているのだから、心配するのは当然だろう!」
「アイリーン様は、この国で一番魔力を持った方なのです。そんなに過保護にならなくても。あまりアイリーン様を縛り付けると、嫌われますわよ」
「俺がいつ、アイリーンを縛り付けたというのだい?そもそも散々君たちは、アイリーンを傷つけたくせに。それに現にアイリーンは、魔王との戦いの時に命を落としかけたのだよ!」
「お2人とも、落ち着いて下さい。まずミミア様、あなた様を今回の件に巻き込んでしまった事、申し訳ございませんでした。それからジルバード様、あなた様に黙って来てしまった事も、申し訳なく思っております。本当にごめんなさい」
改めて2人に謝罪した。
「アイリーン様、どうか頭をあげて下さい。私はアイリーン様の手助けが出来て、嬉しいのです」
「アイリーン、頭を上げてくれ。君の気持ちもわかるが、俺に内緒で、勝手に1人で行動しないでくれ。もし万が一、君の身に何かあったら俺は…」
「ええ、分かっておりますわ。私の方こそ、軽率な行動をとってしまい、申し訳ございません。ですが、ここがどうしても気になるのです。4000年前に生きていたというセリーナは、クレスロン元男爵家の先祖が、闇の一族を魔王に紹介したと言っておりました。
きっとクレスロン家の一族は、闇の一族と何らかの関係があるのでしょう。その答えが、この小屋にある様な気がしてならないのです。私の魂の中には、ジャンティーヌを含め、7人の女性がいます。
無念の死を迎えた彼女たちの為にも、何より魔王誕生の時を生きていたセリーナの為にも、ここで本当に決着を付けなければいけないと思うのです。悲劇を繰り返さないためにも」
なぜだか分からないけれど、一刻も早く解決しなければいけない気がするのだ。その為にも、ジッとしている訳にはいかない。
「ジルバード殿下、アイリーン様は500年に一度の奇跡の女性なのです。きっとアイリーン様にしか感じ取れない、何かがあるのでしょう。どうかアイリーン様の、好きな様にさせてあげてください。お願いします」
「ミミア様…ありがとうございます。ジルバード様、どうか小屋の中に行かせてください。絶対に無理はしませんから」
私の為にジルバード様に頭を下げてくれたミミア様の横で、私もジルバード様に頭を下げた。
「わかったよ。もちろん、俺も行くよ。それから、君に少しでも体の変化があったら、すぐに小屋から出るからね」
「ありがとうございます。ジルバード様」
「そうと決まれば、早速参りましょう。私が小屋のドアを開けますわ。アイリーン様、ジルバード殿下の言う通り、決して無理はしないで下さい」
「ありがとうございます、ミミア様。ええ、もちろんですわ。決して無理はしませんから」
ミミア様が、警戒しながらもゆっくりと小屋の扉を開けてくれた。
「アイリーン、決して無理をしてはいけないよ。さあ、行こう」
私の手を強く握るジルバード様。彼の手を通して、少しだけ魔力が流れ込んでくる。大きくて温かな手。この温もりを、私は守りたい。
その為にも…
ゆっくりと小屋の中に入っていく。
「アイリーン、体は大丈夫かい?頭痛はないかい?」
心配そうにジルバード様が、声をかけてくれる。ミミア様も心配そうに、こちらを見つめていた。
「ええ、昨日とは打って変わって、頭痛はありませんわ。ただ…」
真っすぐと小屋の奥へと進んでいく。まるで何かに導かれるかのように。
「アイリーン、その奥は壁だよ。そのまま進むとぶつかるよ」
確かにジルバード様の言う通り、この小屋は小さく目の前には壁が迫っていた。でも、なぜだろう。このまま進まないといけないような気がするのだ。
次の瞬間!
真っ黒な霧に視界を避けぎられ、そのまま霧が部屋中を包み込む。
そして
「ジルバード様、ミミア様!」
目の前で2人がバタバタと倒れてしまったのだ。
「殿下、ミミア嬢!」
近くに控えていた護衛たちが、急いでこちらに走って来る姿が目に入る。私も2人に近づこうとした瞬間。
「きゃぁぁぁ」
「アイリーン様!!!!」
そのまま霧に吸い込まれてしまったのだった。




