第83話:最後の戦い【その2】
「アイリーン、体は大丈夫かい?」
「ええ、もう大丈夫ですわ。ですので、もう一度クレスロン元男爵家に行かせてください」
「いいや、ダメだ。君をこれ以上危険に晒す訳にはいかない。魔王との戦いでも、俺との約束を破って無理をして。あの時の様な思いは、もうしたくはないし。今彼女たちが小屋を調べているから、結果を待とう」
ジルバード様はそう言っているけれど、きっと何も見つからないだろう。既にあの小屋も何度も調査していると聞くが、何も異変はなかったそうだし。
案の定
「アイリーン様、再度隅から隅まで調査をいたしましたが、何も異変はありませんでしたわ」
ルリアン様達が、困り顔で報告してくれたのだ。
「そうですか、お忙しいのに私の為に調べていただき、ありがとうございました。もしかしたら、私の勘違いだったのかもしれませんわ。頭痛も偶然だったのかもしれません。なんだか今日は、疲れてしまって…
もしかしたらまだ体調が万全ではないのかもしれないので、今日は屋敷に帰りますわ」
「体調がよくないのかい?それじゃあ、俺が送っていこう。君たち、引き続き調査を行ってくれ。アイリーン、行こうか」
ジルバード様に連れられ、一旦家に帰ってきた。
「お嬢様、目覚められてからの1週間、無理をなさっていらしたのでしょう。どうかゆっくりとお休みください」
「ええ、そうさせてもらうわ。なんだかとても眠くて…」
「アイリーン、魔王との戦いでかなり魔力を消耗したんだ。その戦いから、まだ2週間も経っていない。どうか今回の件は俺たちに任せて、ゆっくり休んでくれ」
「ええ、そうさせていただきますわ。ジルバード様、いつもありがとうございます。愛しておりますわ」
「急にどうしたのだい?俺も愛しているよ。だからどうか、無理はしないでくれ。それじゃあ、また明日、迎えに来るから」
私に口づけをして、そのまま部屋から出て行ったジルバード様。なんだかとても眠い…今日はもう寝よう。
そんな思いから、ゆっくり眠りに蔦いのだった。
*******
「そろそろ起きても大丈夫かしら?」
辺りが静まり返り、夜も更けった頃、身を起こしベッドからゆっくりと出る。時刻は夜中の2時前だった。そっと窓の外を覗くと、護衛たちが数名、私の部屋の真下を警護していた。
きっとジルバード様が手配したのだろう。私があの場所に行かない様にと。
そっと入り口に魔法をかけた。これで私の部屋には、誰も入れない。
私は昨日の昼間立ち寄った、クレスロン元男爵家の小屋が気になって仕方がないのだ。きっとあの場所に、何か隠れているはずだ。
そして今度は、床に魔力を込め、魔法陣を描いた。
「確かこれでよかったはず。ジルバード様、少し出掛けてきますね。どうか私の我が儘を、お許しください」
そう呟き、そのまま魔法陣を通って、クレスロン元男爵家の小屋へと向かった。
小屋へ着くと
「ミミア様、いらしていたのですね。こちらに魔法陣を準備して頂いて、ありがとうございます。お陰でスムーズに来られましたわ」
なぜか苦笑いをしているミミア様に声をかけた。実は私はこっそりとミミア様に、クレスロン元男爵家の小屋のところに魔法陣を描いてもらう様に頼んだのだ。
4人の中で、転移魔法が最も得意で、魔法陣も周りに気づかれることなく描く事が出来るミミア様。そんな彼女に、今回の件を相談し、協力してもらったのだ。
「アイリーン様…実は…」
「やあ、アイリーン。こんなに夜遅くに屋敷を抜け出すだなんて、随分と悪い子だね。ミミア嬢まで巻き込んで。俺にも内緒でここに来るだなんて」
この声は?
声の方をゆっくり振り向くと、そこに立っていたのは…
「ジルバード様!どうしてここに?」




