第80話:どうして僕がこんな目に~レドルフ視点~
「レドルフ殿下、どこに行かれるのですか?私も一緒に参りましょう」
「いいや、僕1人で十分だ!ついてこないでくれ!」
「いいえ、そういう訳にはいきません。私も参ります」
「それじゃあ、もういいよ!」
ベッドにもぐりこみ、丸くなる。
僕が少しでも部屋から出ようとすると、すぐに護衛が飛んできて一緒について来ようとする。
きっと僕が、ジルバードに何か手を出すとでも、考えているのだろう。ジルバード!あいつのせいで、僕は!
確かに僕は、魔王討伐には一切参加しなかった。でもそれは、次期国王になる僕が、万が一魔物たちに襲われ、命を落としたら大問題になるからだ。そもそも第二王子でもあるジルバードが、率先して魔王を倒すというのがこの国のルールだったはずだ。
僕はそのルールにのっとって、行動しただけなのに…それなのに、どうして王太子の座をはく奪されないといけないんだ!それにアイリーンの事だって…
確かに彼女につらく当たった事もあった。でもそれは、彼女が魔力を持っていなかったからだ。それにレア嬢、あの女の嘘にまんまと嵌められたからだ!あの女、絶対に許さない!この手で八つ裂きにしてやりたかったのに、あっさり国外追放になるだなんて!
そもそも僕は、ずっと500年前の英雄、ジャンティーヌに憧れていたんだ。アイリーンがジャンティーヌの生まれ変わりだと知っていたら、もっと大切にしたのに!
それもこれも全て、ジルバードのせいだ。あいつが僕のものを全て奪ったんだ!
憎い、憎い、憎い!ジルバードが憎い!
「随分と憎しみの念が、増大していらっしゃいますね…」
ん?人の声?
布団から顔を出すと、そこにいたのは…
「クレスロン元男爵が、どうしてここにいるのだい?男爵家は潰されたのでは?そもそも、どうやって僕の部屋に入って来たのだい?見張りの兵士たちは…
えっ?皆倒れている?一体何が起こったのだい?」
僕の護衛たちは、この国でも優秀な魔力を持った者たち。そんな者たちが、こうも簡単に倒れているんだなんて。その上、物音すらしなかったぞ…
一体どうやって、入って来たのだろう。
「そんなに驚かないで下さい。レドルフ殿下。私はあなた様の願いを叶えるために、ここに来たのです。殿下、ジルバード殿下が憎いのでしょう?あなたの大切なものを、全て奪っていくジルバード殿下が…」
「ああ、憎いよ。僕はただ、国のルールにのっとり行動しただけなのに!それなのに、なぜジルバードに王太子の座を譲らないといけないのだい?そのうえ、アイリーンまで奪っていって。本当に憎らしい。あいつさえいなければ、僕は!」
ジルバードさえいなければ、次期国王の座もアイリーンも、僕のものなのに!憎い、ジルバードが憎い!あの男を消し去りたい!
「いいですな、その憎しみの感情…殿下、私と取引をしませんか?我が一族の…いいや、あの男の力を使えば、全てを手に入れる事が出来るのです。そのうえ、ジルバード殿下を奈落の底に突き落とすことも可能」
「何を言っているのだい?そんな事、男爵をはく奪され、平民になった君に出来る訳がないだろう?バカも休み休み言ってくれ!」
既に平民になった元男爵に、何が出来ると言うのだ!本当にバカバカしい!
「闇の魔力を持つ者の一族を、殿下はご存じですか?その昔、魔王を誕生させられるほどの魔力を持った、一族の事を…」
「闇の一族だって…噂では聞いたことがあるが、その様な一族は、今は存在しないと教わったよ。そもそもそんな一族がいたら、今頃国中が大騒ぎだ。せっかく魔王を倒したのだからね」
「そうですね…ですが、何千年もの間、闇の一族はずっと、息をひそめて生きてきたのです。そう、我がクレスロン男爵家としてね。4000年前、魔王誕生にも貢献したと聞いております。
とはいえ、我がクレスロン男爵家も、今では闇の一族と言われるほどの魔力を持っているのは、たった1人。4000年前、魔王誕生に貢献した男ただ1人だけ…」
「4000年前、魔王誕生に貢献した男だって?一体どういうことだい?闇の魔力を持った者は、永遠の命が与えられているのかい?それに、男爵家が闇の一族とは…」
この男は、一体何を言っているのだ?クレスロン男爵家が、闇の魔力を持った一族だって?




