第70話:隠された真実【その9】
大聖堂の前まで来やってきた。いよいよ私たちの結婚式が始まる。そう思うと、胸が高鳴る。
そしてゆっくりとドアが開き、アラン様と一緒に入場していく。陛下に王妃殿下、両親やお兄様、それに大切な友人達。たくさんの人に見守られながら、一歩、また一歩と進んでいく。大切な人たちに見守られ、大好きな人とついに結ばれる、最高の1日になる、そう信じていた時だった。
急に辺りが暗くなったかと思うと、今までに感じた事のないほど大きな衝撃が私たちを襲ったのだ。
会場中から悲鳴が起きる。
「セリーナ、大丈夫かい?一体何があったのだ?」
あまりの衝撃に倒れそうになった私を抱きとめ、近くにいた護衛たちに確認を取るアラン様。
「皆様、大変です。おびただしいほどの数の魔物たちが、街を襲い始めました!見た事のないほど大きな龍もいます」
「何だって…魔物だって?」
皆が一斉に窓の外を見ようとした時だった。再び大きな衝撃が襲ったと思ったら、そこに現れたのは…
「やあ、ご機嫌はいかがだい?兄上、セリーナ、俺から君たちに最高の結婚祝いを持ってきたよ」
真っ黒な髪を腰まで伸ばし、黒い翼を生やした男がこちらを見つめていたのだ。この男、もしかして…
「ディーノ?ディーノなのかい?一体何があったのだ…まるで魔王の様な…」
「魔王の様ではなくて、俺は魔王になったのだよ!俺のお前たちに対する憎しみや怒りの力が、闇の魔力を開花させた!俺を裏切ったこの国を、滅茶苦茶にするためにな!」
そう言って笑うディーノ殿下…いいや、魔王と呼んだ方がいいのだろうか…その昔、闇の魔力を使った人間が魔王を生みだした事があるという言い伝えは残っていた。
でも、まさか本当に魔王が誕生するだなんて…
「ディーノ、なんて事を!お前たち、ディーノを捕らえろ!」
陛下がディーノ殿下を捕らえる様に指示を出したのだが…
「ぎゃぁぁ」
ディーノ殿下がものすごい魔力を放出し、一気に沢山の騎士たちがやられてしまった。
「これが魔王の力か…素晴らしいな…この力があれば、俺は何でもできる。気に入らない奴らも、こうやって!」
「止めて!」
私の静止を無視し、次々に貴族たちを攻撃していくディーノ殿下。陛下や王妃殿下、私の両親やお兄様も次々とやられていく。
「アラン殿下、セリーナ、ここは私達が引き受けるわ。あなた達は逃げて!」
4人の友人たちが、私とアラン様を守るように立ったのだ。
「いいえ、これでも私はこの国で一番魔力を持った人間よ。私がディーノ殿下と戦うわ」
そうよ、私はこの国で一番力を持っている人間。ここで私が、逃げる訳にはいかない!真っすぐディーノ殿下を見つめた。
「セリーナのその瞳…なんて魅力的なんだ…やはり俺は、君が欲しい。セリーナ、俺と取引をしないかい?君が俺の妻になると言うのなら、君の大切な友人たちと兄上の命だけは助けてあげるよ。魔物たちもこのまま森に引っ込ませる。
だが、もし拒否をするなら…」
「きゃぁぁぁぁ」
「アリーナ!!」
近くにいた友人の1人、アリーナをあろう事か攻撃したディーノ殿下。急いで彼女のそばに駆け寄り、治癒魔法をかけたが、既に息を引き取っていた。
「すまない、ちょっと感情が高ぶってしまって…1人いなくなったけれど、まだ3人いるからいいよね。どうだい?悪い条件ではないだろう?」
何が悪い条件ではない!よ。話している途中で、大切なアリーナを殺したくせに!それに両親やお兄様だって…
血だらけで倒れる両親や兄を見たら、胸が張り裂けそうになった。
絶対にディーノ殿下に嫁ぐだなんて嫌だ!でも、魔王になったディーノ殿下に私が勝てるの?もし私が彼を選べば、残っている友人達やアラン様は助かる。それに民たちも…
「セリーナ、ディーノの言葉に耳を傾けてはいけない。セリーナを売るくらいなら、僕は!」
「アラン様!」
「愚かだとは思っていたが、本当に兄上は愚かだな。魔王になった俺に勝てると思っているのか!」
「うわぁぁぁ」
「アラン様!!!」
血だらけで倒れ込むアラン様!何てことなの!
「アラン様、しっかりしてください!アラン様」
ぐったりと倒れ込むアラン様に必死に治癒魔法をかけるが、反応はない。
そんな…アラン様…




