第67話:隠された真実【その6】
「ディーノ殿下、あまりベラベラとお話しなさるのはいかがなものかと。それにしても、さすがマクレス公爵家の令嬢だ。闇の魔力を使ってもまだ意識を保っていられるだなんて…ですが、意識を保っていられるのも後数時間でしょう。数時間後にはセリーナ嬢はあなた様の言いなりです。
ディーノ殿下、私との約束は守って下さいよ。危険を冒して私はあなたに闇の魔力を使える者を紹介したのですから」
「闇の…魔力…ですって?」
この世界のどこかに、恐ろしいほど負の魔力を持った一族が存在すると聞いたことがある。彼らの魔力は非常に強大と言われているが、誰も会った事がないため、謎の多い一族なのだ。
とはいえ、彼らの存在自体を否定している人も多い。それほど謎に包まれた一族なのだ。そんな人物とクレスロン侯爵が、繋がっているですって?
「そうだよ、セリーナ。俺は闇の魔力を持った者と、ある契約を結んだんだよ。俺の血を奴らにやる代わりに、俺は奴らから闇の力を分けてもらった。この力さえあれば俺は、欲しいものを何でも手に入れられる。
王位もこの国も、そして君もね」
ニヤリと笑ったディーノ殿下。
この人は何を言っているの?
「あなた…何を言っているの?なぞ多き一族と、その様な取引をするだなんて…そもそも、私を誘拐した時点で…重罪に値するわ…最悪、命も…」
「俺を誰だと思っているのだい?君は俺に誘拐されたのではない。悪い奴らに誘拐されかけたところを、俺に助けてもらったんだ。そして俺に恋をする。心配しないでくれ、兄上を失脚させるための準備も進めてきたからね。
兄上はもうすぐ全てを失うんだ…兄上の悔しがる顔、早く見たいな…」
うっとりとディーノ殿下が私を見つめている。その瞳は常軌を逸している。まるで悪魔に憑りつかれている様な、背筋が凍るようなそんな感覚だ。
怖い…逃げないと…
でも、体が動かない。どうしよう、このままだとアラン様が。私が何とかしないと!
「俺が怖いのかい?大丈夫だよ、もうすぐ意識を失い、君の心は完全に俺に支配されるから…」
「わ…私の心は…誰にも支配などされませんわ。誰かに…支配されるくらいなら…」
すっとディーノ殿下の腰にささっている短刀を手に取ろうとしたのだが、スルリとかわされてしまった。
「俺の短刀を取って、どうするつもりだったのだい?まさか短刀で俺と戦うつもりだったのかい?無駄だよ、魔力をほとんど持たない君が、俺に勝てるわけがないだろう!」
そう叫ぶディーノ殿下を睨みつけた。すると、おもいっきり頬を打たれたのだ。
「何だ、その生意気な顔は!本当に気の強い女だ!とはいえ、俺はそんな気の強さも気に入っているのだけれどな。やっぱりセリーナはいい女だな。このままお前を俺のものにしてもいいかもしれない」
ゆっくりとこっちに近づいてくるディーノ殿下。
「イヤ…来ないで…」
溢れそうになる涙を必死に堪え、ディーノ殿下を睨みつける。ここで泣いてたまるか!私はこんな男には負けない。
ただ…体が思う様に力が入らない。このドレスさえ脱げればいいのだが、体にへばりついていて脱げないうえ、体が思う様に動かない。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。数時間前まで、間違いなく私は幸せだったのに…




