第66話:隠された真実【その5】
ディーノ殿下が姿を現さなくなってから5年。私とアラン様は、来月の結婚式の準備に追われていた。
「セリーナ、当日のブーケ、アラン殿下が魔力の花で作って下さるのでしょう?きっととても素敵なのでしょうね」
「ウエディングドレスの準備は順調?私たちにできる事があったら、何でも言ってね」
「皆、ありがとう。それよりも、あちらの方は大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。セリーナのお兄様も手伝って下さっているし。あなたは何も心配しなくていいから」
友人達4人が、いつもの様にほほ笑んでいた。
その時だった。
「セリーナ様、ごきげんよう。見て下さい、隣国からとても立派な宝石を仕入れましたの。来月の結婚式に、ぜひ取り入れて下さい」
私達の元にやって来たのは、クレスロン侯爵家の令嬢、マリナ様だ。彼女は3年前に仲良くなった女性で、いつの間にか私たちの輪に加わっていた人物。
クレスロン侯爵は非常に優秀で、他国との貿易も積極的に行っている人物。
ただ…
「セリーナ様、浮かない顔をしてどうされたのですか?以前あなた様に差し上げたこちらのブルーのブローチよりも、もっと大きな宝石なのですよ。素敵でしょう」
うっとりとしながら、宝石を眺めるマリナ様。
「ありがとう、マリナ様、大切にするわね」
「ええ、ぜひそうしてください。それでは私はこれで失礼いたしますわ」
笑顔で去っていくマリナ様を見送った。
「それじゃあ、私たちももう帰るわね。今日は王宮で、アラン殿下とセリーナの結婚前祝の夜会が開かれるのですもの。しっかりおしゃれをして行かないとね」
「ええ、王宮で待っているわ」
友人達にも笑顔で手を振り、私も急いでパーティーの準備を始めた。今日は私の為に、アラン様が王宮から数名の使用人を準備してくれたらしい。
公爵家には立派な私専属の使用人たちがいるのだけれど…そう思いつつ、今日はその使用人たちに全てを任せる事になった。
「セリーナ様、今日はこちらのお召し物を」
使用人が立派なドレスを持ってきたのだ。
「あら?今日はアラン様と一緒にデザインしたドレスを着るはずだったはずよ。このドレスではないわ」
私はアラン様と一緒に、今日の為にドレスを準備していたのだ。でも、使用人が持ってきたのは、別のドレスだった。
「こちらはアラン殿下がセリーナ様の為に、密かにご準備されたドレスなのですよ。とても上質な絹というものを使ったドレスとの事です。なんて肌触りがよいのでしょう。ずっと触っていたくなりますわ」
「確かにとても肌触りがいいわね。アラン様ったら、こんなサプライズを準備してくださるだなんて。それじゃあ、早速このドレスに着替えさせてくれるかしら?」
「かしこまりました」
確かに使用人が言っていた通り、とても肌触りがいいドレスね。ただ…なぜだろう、このドレスを着た瞬間、頭が痛くなってきた。それに、なんだか魔力が吸い取られて、力が抜ける様な…
「セリーナ様、大丈夫ですか?早速効果が現れたみたいですね…」
ニヤリと笑った使用人たち。
「あなた達…まさか…」
しまったと思った時には、時すでに遅し。そのまま意識を飛ばしてしまったのだった。
*****
「う~ん…ここは…」
重い瞼を開けると、見覚えのない天井が。頭が割れる様に痛い、それに体中がものすごくだるい。今までに感じた事のないだるさと痛みが体中を襲った。
「もう目覚めるだなんて、さすがマクレス公爵家の令嬢だね。しばらく会わない間に、また美しくなって。本当に君は、魅力的な女性だよ…」
私の前に姿を現したのは、何とディーノ殿下だ。
「どうしてディーノ殿下が…こちらに…」
うまく声が出ない。
「このドレス、絶大な効果を持っているのだね。まさかここまで君を弱らせるだなんて。このドレスはね、俺がクレスロン侯爵に頼んで準備してもらったのだよ。凄いだろう?まさかこの国一の魔力持ちの君を、ここまで弱らせられるだなんて」
クレスロン侯爵ですって?まさか…




