第63話:隠された真実【その2】
~4000年前~
「セリーナ、おはよう」
「おはようセリーナ、今日も可愛いね」
「おはようございます。アラン殿下、ディーノ殿下。あら?アラン殿下、朝から元気がないようですが、どうされたのですか?」
「いや…その…」
「兄上は朝の剣の稽古で、俺に全く歯が立たなかった事を気にしているのだろう。無様に倒れ込む姿、セリーナにも見せたかったな」
そう言って笑うディーノ殿下。
「ディーノ殿下、その様に言うのは良くありませんわ。アラン殿下だって、一生懸命訓練を受けているのですよ」
「こんな出来損ないの兄上を庇っているのかい?本当にセリーナは優しいな。確かにこいつは第一王子で王太子だけれど、こんなに出来が悪のではね…側近たちも、俺の方が王太子にふさわしいと言っているよ。
そもそも俺たちは双子なんだ。たかだか生まれた順番で、兄上が王位を継ぐなんて滑稽だと思わないかい。兄上では国王なんて務まらないしね。いずれ王太子の座を、はく奪されるよ」
そう言って笑って去っていくディーノ殿下。
「相変わらず性格が悪い男ね。アラン殿下、気にしなくても大丈夫よ。別に剣が強くなくても、結局魔力が開花すれば、剣なんて使わなくなるのだから」
「ありがとう、セリーナ。でも僕は…」
「あなたが誰よりも努力している事、私は知っているわ。さあ、今日も中庭に行きましょう」
アラン殿下の手を引き、中庭へと向かう。中庭には、アラン殿下が一生懸命育てた花が咲いているのだ。
「貴様、俺の通り道に立つとはどういう了見だ!この男を即刻処刑しろ!」
「ディーノ殿下、どうかお許しを!」
「うるさい、貴様の命など虫けら同然なんだよ。今すぐ首を切り落とせ」
「承知いたしました」
地面に頭をこすりつけ、必死に謝る男性に暴言を吐くディーノ殿下。どうやらディーノ殿下が通るときに、少し邪魔してしまったようだ。
それにしても、それだけで使用人の殺すだなんて!ディーノ殿下が使用人の事をゴミの様に扱っている事は知っていたが、まさかここまでだったとは…
さすがに止めないと。そう思った時だった。
「ディーノ、一体何をしているのだ!君たち、すぐに止めるんだ!」
いつも穏やかで、大きな声を出した姿など見た事がなかったアラン殿下が、珍しく声を荒げ、使用人とディーノ殿下の間に入ったのだ。
「兄上、珍しく声を荒げてどうされたのですか?」
「どうされたじゃない!君は使用人を、何だと思っているのだい?彼らはいつも僕たちの為に働いてくれているのだよ。それなのに!君、大丈夫かい?怪我をしているではないか。すぐに手当てを!」
「兄上、その男は俺に無礼を働いたのです。死に値する」
「何が死に値するだ!いいかい、僕はこれでも王太子だ。使用人を無下にする事は許さない!これは王太子でもある僕の命令だ。ディーノ、君にも従ってもらう。いいな、わかったな!」
「愚かな兄上の分際で、調子に乗って!もしかしてセリーナの手前、いいところを見せようとしているのかい?まあいい、今回は見逃してあげるよ。でも、いずれ俺にたて付いた事、後悔さてやるからな」
そう言捨て、ディーノ殿下は去っていた。その瞬間、その場にへたり込むアラン殿下の元に急ぐ。
「アラン殿下、大丈夫ですか?」
「ああ、僕は平気だよ。それよりも君、大丈夫かい?すぐに手当てを」
「アラン殿下、本当にありがとうございました」
何度も頭を下げる使用人。
「謝るのは僕の方だよ。弟が本当にすまなかった。僕にもっと力があれば、ディーノを野放しになんてしておかないのだけれど…」
悲しそうにアラン殿下が呟く。そんな彼に、そっと寄り添った。
「アラン殿下、あなた様はとても立派なお方ですわ。誰にでもお優しくて、そして正義感もある。あなた様こそ、次の国王にふさわしいお方なのです」
少し不器用で要領はあまり良くないが、それでも物腰柔らかで、正義感が強く、誰にでも分け隔てなく接するアラン殿下を、私はいつしか愛する様になっていた。
傲慢で我が儘で、どうしようもないディーノ殿下よりも、数百、いや、数億倍魅力的なアラン殿下を、私の魔力で支えたい。
常々そう願っていた。
「さあ、中庭に向かいましょう。きっと今日もあなた様が育てた綺麗なお花が、沢山開花しているはずです」
そっとアラン殿下の手を取り、中庭へと向かった。




