第58話:どうしてこんな事に~ジルバード視点~
頼む、やめてくれ。俺は来世よりも、今を大切にしたいんだ。アイリーン、君を失いたくはない。
俺の必死の願いも空しく、アイリーンは眠る魔王に向かって、ありったけの魔力をぶつけたのだ。
その瞬間、ものすごい爆風が周囲を襲った。そしてアイリーンが自らかけていたバリア魔法も、一緒に吹き飛んだのだ。
「アイリーン!!!!」
嫌だ、アイリーンを失いたくはない!そんな思いで、急いでアイリーンに駆け寄った。分かっていた、もうアイリーンは助からないという事を。
アイリーンは魔王に魔力をぶつける寸前、かすかに光を放っていたのだ。500年前、ジャンティーヌが魔王を封印した時も、彼女はかすかに光を放っていたのだ。
きっとあの時と同じ魔法を使ったのだろう。
アイリーンの元に着くと、そこには口から血を流して倒れているアイリーンの姿が…その姿が、500年前のジャンティーヌと重なり、一気に血の気が引いた。
「アイリーン!!!どうしてだい?今度は死なないと約束したのに!どうして!!!」
俺は500年前誓ったんだ。もう二度と、彼女を失いたくはない。だからこそ、今度こそ俺の手で彼女を守ると!それなのに、どうして!!!
「ジルバード殿下、落ち着いて下さい。アイリーン様、しっかりしてください。絶対にあなた様を死なせません!」
隣で必死に治癒魔法をかけるルリアン嬢。彼女の瞳からも、涙が溢れている。彼女はずっと治癒魔法を使い続けている為、きっと体は限界をとうに超えているだろう。それなのに…
俺も泣いている場合じゃない!必死にアイリーンに治癒魔法をかけた。俺の命なんて、どうでもいい。頼む、アイリーン、目を覚ましてくれ!
さらにミミア嬢・アイリス嬢・カミラ嬢も泣きながら治癒魔法をかけていた。
「アイリーン、君って子は…魔王はどうやら完全に消滅した様だよ。アイリーンの完全勝利だ。だからどうか、目覚めてくれ…」
フラフラとこちらにやって来たのは、グリム殿だ。どうやらまだ傷が完全に癒えていないのだろう。それでも必死にこちらにやって来た様だ。
「グリム様、何をなさるおつもりですか?あなた様の今の体では、治癒魔法などとても使えません。ここは私達が何とかしますから」
「妹がこんな状況になっているのに、放っておけるわけ…」
その場に倒れ込むグリム殿を、他の騎士たちが受け止めた。
「グリム副団長、あなた様もまだ予断を許さない状態です。とにかく、ここを出ましょう。皆様も、一旦この洞窟を出ましょう。アイリーン様にとっても、この場所に長居はしたくないはずです。それに洞窟も崩れかかって来ています。このままですと、洞窟に生き埋めになってしまいます」
確かに騎士の言う通り、魔王が命を落とした事で、洞窟が崩れかかっている。でも…アイリーンが命を落とした今、俺も生きていても仕方がないのかもしれない。このままこの地で、アイリーンと…
「ジルバード殿下、しっかりしてください!アイリーン様の心臓は、まだ動いておりますよ。とにかくここを脱出しましょう」
「ルリアン嬢、それは本当かい?アイリーンの心臓は…確かに動いている…」
奇跡でも起きたのか?アイリーンの心臓が、動いているじゃないか。アイリーンは生きているのか?ただ、予断を許さない事は確かだろう。
とにかく、この洞窟から離れないと!
アイリーンを抱きかかえると、急いで走り出す。
「ジルバード殿下、皆様、出口はこちらです。急いでください!洞窟がかなり壊れかかっています」
壊れかかっている洞窟を魔法で騎士たちが、必死に抑えてくれている。あと少しで出口だ!
出口を出た瞬間、ものすごい勢いで洞窟が壊れたのだ。入り口が完全にふさがれてしまった。
これで本当に、全てが終わったのだろう…




