第15話:このままではアイリーン嬢の命が持たない~ジルバード視点~
翌日、貴族学院が終わった足で、騎士団へと向かった。俺はまだ学生の身だが、既に騎士団長を任されている。そう、この国で一番強くなったのだ。
「皆、遅れてすまなかった。それで、森の様子はどうだ?」
「確かに魔物たちが動き出している形跡はありますが、特に増えている様子はありません。とはいえ、魔物たちの動きがいつも以上に活発になっているので、引き続き注意が必要ですね」
「そうか、ありがとう。一度討伐に出掛けた方がいいかもしれないな。少しでも魔物を退治しておいた方が、いいだろう」
「そうですね、それでは…」
「大変です!ジルバード殿下。東の森で、魔物たちが大量発生したとの事。すぐに討伐に向かいましょう」
「それは本当か?それで魔王は?」
「どうやらまだ、目覚めてはいない様です。ですが、目覚めるのも時間の問題かと」
「わかった、すぐに討伐に行くぞ。すぐに副団長に連絡をしてくれ。それから、至急団員を集めてくれ」
「承知いたしました」
ついに魔物たちが動き出したか…アイリーン嬢の事は心配だが、今は魔物たちを減らすことが専決だ。
すぐに軍を率いて、東の森へと向かった。とはいえ、思ったよりも魔物はおらず、半日程度で魔物を全て退治する事が出来た。
「まさかあんなに魔物がいるだなんて。もしかして、魔王が既に復活しているのでしょうか?」
不安そうに呟く副団長。ちなみに副団長は、アイリーンの兄だ。
「いいや、まだ復活はしていないようですよ…」
俺は知っている。魔王が復活した時には、おびただしいほどの魔物が誕生するのだ。その数は、想像を絶するほどに…それこそ、貴族が一丸となり魔物を討伐しないといけないのだ。
とにかくまだ、魔王は復活していない。とはいえ、そろそろだろう…
俺1人で、本当に魔王を封印できるのか?あんなに強かったジャンティーヌですら、命を落としたのだから…
ダメだ、弱気になったら。何が何でも魔王を封印して、アイリーン嬢を自由にすると決めたんだ。弱音なんてはいていられない。
魔物を討伐した翌日、2日ぶりにアイリーン嬢の元を訪ねた。少しでも元気になって欲しくて、痛みに効くという薬を持って行ったのだが…
「申し訳ございません、ジルバード殿下。未だお嬢様は、激しい痛みと高熱に苦しんでおりまして…」
「そうか、とにかく一度アイリーン嬢に会わせてもらうよ」
アイリーン嬢の部屋に入ると、痛みと高熱にもがき苦しんでいるアイリーン嬢の姿が。
「アイリーン嬢、大丈夫かい?可哀そうに、こんなに苦しんで。どうして冷やしていないのだい?彼女の体は、こんなに熱いのに。アイリーン嬢、すぐに氷で冷やしてあげるから」
ゆっくりとアイリーン嬢を冷やす魔法をかけたのだが、全く効果がないのだ。
「殿下、私共も定期的に冷やしているのですが、全く効果がないのです。今はただ、お嬢様を信じて待つしかありません」
「信じて待つとはどういう意味だい?」
「いえ、何でもございません」
なぜか俯いてしまった使用人。
酷い熱と痛みからか、アイリーン嬢の瞳もうつろだ。既にアイリーン嬢が高熱を出してから、3日が経っている。このままだと、アイリーン嬢の体力が持たないかもしれない。
「公爵殿は今どこにいる?今すぐ公爵殿と話がしたい!」
こんなに苦しんでいるのに、公爵は何をしているのだ!すぐに公爵と話をして、王宮医師を呼ばないと。
そう思った時だった。
「ジルバード殿下、娘の部屋に勝手に入られては困ります。今娘は、酷い高熱で苦しんでいるのです。お引き取り下さい」




