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もう泣き言はいいません!愛する人を守るために立ち上がります  作者: Karamimi


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第10話:俺より過酷な運命を背負った少女~ジルバード視点~

 “ジルバードはレドルフを守る、強い男にならないといけないんだぞ。もし魔王が復活したら、お前が命を懸けて魔王を倒すんだ。分かったな”


 “ジルバードは万が一レドルフに何かあった時の為に、勉学も頑張らないといけないぞ。分かったな”


 物心ついた時から、父上や家臣たちに言われていた言葉。我が国では、第二王子以下は、王太子でもある兄上を守るため、体を張って戦いに行かなければいけないのだ。もちろん、兄上にもしもの事があった時の事を考えて、国王になるための勉学も叩き込まれる。


 本来王子が何人もいれば、役割分担できるのだが、生憎王子は兄上と俺しかいないため、俺が兄上の捨て駒として1人で背負い、生きていかないといけないのだ。


 毎日辛い稽古を重ね、寝る間も惜しんで勉強をさせられる。それが辛くてたまらなかった。一方兄上は、王太子として大切に育てられたのだ。


 辛い稽古もせず、勉強も兄上のペースに合わせられながら。


 どうして俺だけ、こんな扱いを受けないといけないのだろう。俺だって、王子なのに…


 でも俺は、結局は兄の為に働く捨て駒なのだ。魔王が復活すれば、この命を懸けて戦わないといけないのだから。


 そう思っていた。でもある日


「ジルバード、あなたには黙っていのだけれど、実は500年前魔王を封印した英雄の子孫が、誕生していたの。アイリーンちゃんと言ってね。500年ぶりにやっと生まれた、マクレス公爵家の令嬢なの。既にレドルフとの婚約話も進んでいるのよ。


 来月アイリーンちゃんの7歳のお誕生日のタイミングで、正式に2人を婚約させるつもりでいるの。きっとアイリーンちゃんは、英雄ジャンティーヌの生まれ変わりだから、たとえ魔王が誕生しても、彼女が命を懸けて魔王を封印してくれるわ。


 だからジルバードは安心して。お父様と話をして、あなたには公爵位を与えようと思っているの。私の可愛いジルバードが、命を落とす心配がなくなってよかったわ。本当に、アイリーンちゃんには感謝よね」


 そう言って嬉しそうに俺を抱きしめた母上。


 確かに我が国では、500年前マクレス公爵家の令嬢が、魔王を封印したという話が残っている。彼女は激しい激戦の末、命を落としたとも…


 マクレス公爵家はジャンティーヌが亡くなって以降、ずっと女の子が生まれなかったらしい。そんな中、生まれたのがアイリーン嬢だったのだ。


 まだ幼く魔力量の測定が出来るのが10歳からという事もあり、彼女の魔力量は分からない。我が国では8歳くらいから一気に魔力量が増えだし、10歳を迎えた頃には魔力量が安定すると言われているのだ。


 アイリーン嬢…生まれながらにしてジャンティーヌの末裔として、周りからプレッシャーをかけ続けられてきたのだろうな…


 俺と同じように…


 そして俺と同じように、我が国ため、兄上の為に命を懸けて戦わされるのだろう。そう思うと、アイリーン嬢が気の毒に思えてきた。特に彼女は令嬢だ。それなのに、もし魔王が誕生したら、最前線で戦わされる事を約束させられているのだ。


 それがどれほど大変な事か…


 アイリーン嬢、一体どんな子なのだろう。勇ましい子なのかな…


 アイリーン嬢の存在を知ってから、妙にアイリーン嬢に興味が抱いた。


 そんな中、アイリーン嬢が兄上と婚約をするために、王宮にやって来たのだ。


「お初にお目にかかります、ジルバード殿下。マクレス公爵の娘、アイリーンでございます。どうぞお見知りおきを」


 サラサラな真っ青な髪、クリクリのエメラルドグリーンの瞳、体は小さく小柄な彼女。この子が恐ろしい魔王と戦わされるのか?こんな可愛らしい子が?


 こんな可愛い子に、なんて恐ろしい事を…


「初めまして、俺は第二王子のジルバード・フェア・クロスティンです。どうかこれから、俺とも仲良くしてね。でも、まさか英雄の末裔が、こんなに可愛らしい子だっただなんて。君のような子を、魔王と戦わせるだなんて…すまない、今の話は忘れてくれ」


 つい本音がポロリと出てしまったのだ。


「気にしないで下さい。魔王との戦いが、私に与えられた任務ですから。私は魔王討伐の為に、この世に生を受けたのです。その事は、私も理解しておりますので」


 そう言うと、悲しそうに笑ったアイリーン嬢。その顔を見た瞬間、無性に胸に突き刺さった。


 彼女もまた、生まれながらに重い任務を背負わされているのだろう。こんなに可愛くて小さな彼女の肩に、どれほどの重圧がかかっているのか…


 そう考えたら、胸が張り裂けそうになった。


 そして俺は、この日からさらに稽古に励んだのだ。魔王が復活した時、アイリーン嬢を守れるように。彼女の負担が少しでも軽くなるように。

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