私たちはどう生きるか~あるメモ魔の男とレオナルド・ダ・ヴィンチの会話より~
今よりずっと昔、イタリアのフィレンツェという町に、メモをとることが大好きな男がいた。
その男はいつも、なにかを考え、なにかを感じ、なにかを観察していた。
そしてそれらを、ポケットに入れた掌ほどの小さなノートに、思いのままに書き留めていた。
♢♢♢
ある日のこと。
男の友人である【レオナルド・ダ・ヴィンチ】という人物はこう言った。
「わたしは絵を描くことのほかにも、メモをとることが大好きだ。きみも、そうだろう」
男はうなずき、二人は互いのノートを見せ合った。
レオナルドは、男のノートを見て、想像以上の大量のメモに驚き、それを読んでこう言った。
「みんなはわたしを、画家とも、科学者とも、哲学者とも、舞台美術家とも、物語作家とも――つまり控えめに言って万能の天才――と呼ぶが、わたしにはずっとわからないことがあり、長いあいだ、それを探していた。だがきみのおかげで、それを見つけることができた」
男はレオナルドに、その探しものとはなにか、と尋ねた。
するとレオナルドは言った。
「人が幸せに生きるということは、どういうことか、ということだ」
男は、ではそれはどういうことなのか、と尋ねた。
レオナルドは答えた。
「画家でなくても、科学者でなくても、哲学者でなくても、舞台美術家でなくても、物語作家でなくても。人はこのように、コツコツと積み重ねれば、たくさんの素晴らしいメモをとることができる」
♢♢♢
フィレンツェの名もなき男と、ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
メモ魔の二人は死ぬまで、友だちだったという。
※この物語はフィクションです。




