表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/171

第八十八話 学園騒動の幕開け!?ウォッチ隊大暴走!!

――レイフォード学園、秋も深まる昼下がり。


澄んだ空気に紅葉の葉が舞い散る中、学園の片隅でひっそりと、いや、ひっそりどころか妙に熱気を帯びた集団が集まっていた。


その名も「アリア・ウォッチ隊」。

表向きは「学園内の秩序維持と危機管理を担う自主的な学生組織」。だが実態は――「アリア嬢を見守り、ついでに彼女の兄ィズを拝むための集まり」である。


もともと人数は女子生徒が中心で、アリアを取り巻く二人の過保護兄ィズ――ノアとレオン――に心を奪われた者たちが主力だった。

「殿下たるノア様の知的な微笑みに、わたし毎回倒れそうですわ!」

「いやいや、レオン様の凛々しい騎士姿に勝るものなし!」

そんな会話が常であった。


しかし。


最近になって、なぜか男子生徒がこの集団に加わり始めた。

その理由――


「アリア嬢は守られすぎている! これ以上過保護な兄たちに囲い込まれるのは不健全だ!」

「そうだ! 我らこそが、アリア嬢を“普通の学園生活”に導いて差し上げるべきだ!」


……と、やや正義感をこじらせた結果らしい。


当然、女性陣と男性陣の間には大きな軋轢が生まれることになる。


◆ ウォッチ隊女子部の会合


場所は学園図書館の裏庭。

ベンチの上には真っ赤な落ち葉が積もり、冷たい風がサワサワと吹き抜ける。


「聞いた? あの男ども、また“アリア嬢護衛班”なんて名乗って勝手に訓練してるらしいのよ!」

「なにそれ、私たちのウォッチ隊を乗っ取る気!?」

「しかも“兄ィズは過剰護衛だ”とか言い出して……ふざけないでほしいわ!」


女子部の面々が顔を寄せ合い、火花を散らす。


「そもそも、私たちは兄ィズ様を敬愛する気持ちでアリア嬢を見守っているのよ? それを邪魔するなんて無礼極まりないわ!」

「そうそう! アリア嬢を守るのは、結局レオン様とノア様にお任せするのが一番安全なの!」


誰も「アリアを普通に友人として見守ろう」という発想には至らない。

……いや、至るはずがなかった。彼女らにとって“兄ィズとアリア”は切っても切れない美しい物語なのだから。


◆ ウォッチ隊男子部の会合


一方そのころ。

学園の中庭、噴水の横では男子たちが集結していた。


「いいか、諸君。我々の目的はただひとつ――アリア嬢を“普通の少女”として過ごさせることだ!」

「おおおっ!」


指揮を執るのは、熱血系剣士科の青年ハロルド。

彼は熱弁をふるう。


「兄ィズは過剰だ! すぐさま駆けつける! しかも演出が派手すぎる! これではアリア嬢が萎縮してしまう!」

「そうだそうだ!」

「しかもこのままでは将来、アリア嬢のお相手に立候補する者も現れない!」


――最後の一点は、どうやら男子たちの本音らしい。


「我々こそが、自然な護衛を! 控えめで気づかれない護衛を! アリア嬢に提供すべきだ!」

「おおおおお!」


彼らは拳を突き上げた。

その目は真剣。……だが方向性は完全に間違っていた。


◆ ついに正面衝突


そして運命の日。


放課後の学園中庭で、女子部と男子部が鉢合わせたのだ。


「あなたたち! 勝手に護衛ごっこなんて許しませんわ!」

「ごっこじゃない! 我々は真剣だ!」

「そもそも、アリア嬢を守るのは兄ィズ様のお役目なの!」

「違う! 兄ィズの過保護から解放するのが我々の使命だ!」


バチバチと視線がぶつかる。

紅葉の葉がひらりと舞い落ちる中、まるで決闘前夜の騎士たちのような緊張感に包まれた。


「……やる?」

「やるわ」

「やってやる!」


次の瞬間――


女子部は布を広げて「兄ィズ様の肖像画入り応援旗」を展開!

男子部は木剣を抜き、「模擬護衛隊形」を組む!


「アリア嬢に近づく不審者役、配置につけ!」

「レオン様の笑顔を守れ! ノア様の知性を守れ!」


なんのこっちゃ分からないが、とにかく両陣営は全力で衝突した。


◆ 学園騒動の幕開け


「きゃーっ!」

「やれやれーっ!」


中庭は一瞬にして戦場と化した。

男子部が模擬剣を振りかざせば、女子部は旗を振り回して応戦する。


「アリア嬢を兄ィズから救え!」

「アリア嬢を兄ィズのもとへ返せ!」


……誰もアリア本人の意思など考えていない。


だが騒動はそれだけにとどまらなかった。

声が大きすぎたのだ。


「おい……何だ、あれは?」

「……学園で暴動か?」


教師陣が気づいてしまった。


「お前たち、全員そこに並べぇぇぇ!」


雷鳴のような怒声が響き渡り、ついに学園騒動へと発展するのだった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ