第九話 ──魔法大会はお嬢様たちの社交戦!? アリア、知らぬ間に“貴族令嬢ライバル”が急増中!?
王立初等学園・春季魔法演習大会――。
それは学生たちにとって、“魔法技術を競う舞台”であると同時に、
とくに上級貴族の令嬢たちにとっては、己の美学と家柄をかけた小さな社交戦場でもある。
「来たわね、今年も……」
「演習という名の品格バトル!」
「いかに優雅に魔法を操るかがカギよっ!」
貴族令嬢たちが意気込む中――
「見た!? あの子……!」
「ほんとにいたんだ……小柄でふわふわしてて、笑顔がまぶしい……ずるい……」
「しかも兄二人が“王都の恋愛レーダー破壊装置”って噂の美形兄弟でしょ!?」
「うそ、本当にいたんだ。“ビューティフル・ブラザーズ(B・B)”の妹!」
「飛び級で特別聴講、詠唱速度異常、魔力量怪獣級――なのに笑顔が天使……!?」
「まさに“天から降りた白の奇跡”!!」
「“令嬢界の黒船”って呼ばれてるらしいわよ、アリアちゃん……!」
注目の的、それはもちろん――**アリア・レイフォード(7)**である。
当のアリアはというと。
「うわぁ……人いっぱい……でも空がきれい。えへへ♪」
マイペースに空を見上げていた。
エマ・ハート(親友):「ちょっとアリア、油断してると“お嬢様たちの魔法合戦”に巻き込まれるわよ」
リリィ・クロフォード(親友その2):「しかもね、今回は“あなたに挑もうとしてる子”が何人もいるの。たぶん五人はいるわ」
「ご、ごにんっ!? な、なんで……?」
「だってアリアちゃん、可愛いし強いし礼儀正しいし、兄様がB・Bだし……もう敵だらけよっ!」
そして突如、前に現れたのは――
長身で凛とした佇まい。絹のような銀髪に透き通る青い瞳。
気品と冷静さを纏った少女が、まっすぐにアリアを見つめる。
「わたしの名はアメリア=フォン=ディグレイス。
“優雅な氷姫”と呼ばれることもあるけど……今日は、あなたと組みたい」
「え、えっと……対戦じゃなくて“組む”の……?」
「ええ。“勝つ”よりも、“あなたと並び立ってみたい”と思ったの。許してくれるかしら?」
アリア:「えっと……こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」
(す、すごい……銀髪さらさらだった……!)
その後も次々と集まるライバル(?)たち!
◆ローザ・アルバート(男爵令嬢):「アリアちゃん、あなたに“兄様たちに守られて育った妹の魅力”を学びたいの! 組ませて!」
◆マリー・ド・シュヴァリエ(子爵令嬢):「あなたの詠唱、聞いてて“癒し”を感じたの。わたし、あなたとならもっと綺麗な魔法が撃てる気がする!」
◆シーナ・ミラー(平民出身):「あの、アリアさんの演習記録を見て勇気が出ました……! わたし、いつかあなたみたいになりたい……!」
アリア:「わぁぁぁんっ! みんな素敵なのに、選べないよぉぉ!!」
エマ・ハート:「みんなお兄様たちに近づきたいだけじゃないの?」
その夜、レイフォード邸・兄弟作戦室。
「アリアに“令嬢たちが殺到している”という報告だ!」
「今度は女子……!? 友情!? 対抗心!? 恋心!?!」
「とりあえず、全方向からの警戒が必要だな」
「我ら、**ビューティフル・ブラザーズ(B・B)**に隙なし!」
アリア(ドアの隙間から):「せめてその呼び名やめてぇぇぇっ!!!」
そして迎えた、魔法演習大会――
実況:「ペア演習、注目のコンビが登場!
“白の奇跡”アリア・レイフォードと、“優雅な氷姫”アメリア・ディグレイスの連携が光ります!」
観客:「えっ……見て……鳥が魔力圧で逃げてる……」
生徒A:「どっちが“可愛い”とかじゃないの。“尊い”のよ……!」
生徒B:「尊い……尊すぎて溶ける……」
対戦相手:「相手がアリアとアメリア!? 無理だよ! 負けても本望だよ!」
レオン(観客席):「おおおおいっ! なに許されてる感じ出してるのぉぉぉ!?」
ノア:「静かにしろ、演習の記録を正確に取る。あと後でデータ解析する」
アリア:「兄様たちは落ち着いて見てぇぇっ!」
試合後、アリアは銀髪の少女に向き直った。
「アメリアちゃん、一緒に戦ってくれてありがとう! すごく楽しかったよ!」
「……ふふ、こちらこそ。“あなたの隣”は、気持ちのいい場所だったわ。
でも次は、個人戦で“本気”で挑ませて。――あなたが欲しい“勝利”、わたしが奪うから」
銀髪が少しチリチリしているアメリアだった。
アリア:「ま、負けないっ!」
──こうしてアリアは、友と呼べるライバルたちとつながり、
少しずつ、令嬢たちの中で“中心”になりつつあった。
そして後日、
彼女にまつわる同人新聞が校内で発行され、「アリア派」「アメリア派」「A&A推進派(薄い本)」が争う騒動となったが、これはまた別のお話である。




