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第七十六話 妹、自由を求めて大暴走!? 兄たちの過保護が止まらないドタバタ劇!!

澄み渡る秋の青空の下、レイフォード学園の広場は柔らかな風が吹き抜けていた。アリア・リュミエール・レイフォードは、いつもなら兄たちの過保護な目が光る中で過ごしているが、この日は違った。


「今日は誰にも気を遣わずに、好きなことをしてみせるんだから!」とアリアは小さな拳を握りしめて意気込んだ。


その様子を見ていた次兄のノアが、ゆったりとした歩みで近づいてきた。

「アリア、今日はお兄様たちから少し離れてみたいんだね?」と、穏やかな声で尋ねる。


「そうよ!もう少しだけ自由にさせてよ!」アリアはちょっと拗ねたように言う。


そのやりとりを聞きつけた長兄のレオンも加わった。腕を組みながらニヤリと笑い、

「それなら――君の安全を考えて、監視役を置くことにしよう。自由の範囲は限定されるけどな」と言い放つ。


「ええっ!?それじゃあ意味ないじゃない!」とアリアは目を丸くして反論する。


レオンはすでに何人かの護衛兵を遠くに配置しつつ、魔法石を手に取りながら言った。

「これを使えば、アリアの位置が一目でわかる。衣服に忍ばせておくんだ」


「自由っていうのは――ちょっと違う気がするけど…」アリアは諦めたように肩をすくめた。


ノアが優しく付け加える。

「でも、君の安全を守るためだ。そうすれば本当に危険な目に遭うことはない」


アリアはふてくされた顔で、でもどこか嬉しそうに微笑んだ。


「いいわよ、今日は私の“自由チャレンジ”よ!」



学園の庭園を歩いていた、アリア。

秋の彩りが鮮やかに映る木々の間を、彼女の小さな足取りは軽やかだった。


「この空気、この景色……やっぱり自由っていいわね!」とアリアは深呼吸し、目を輝かせた。


しかし、その日の“自由”は思わぬトラブルの幕開けでもあった。


庭園の一角で珍しい草花を見つけたアリアは、興味津々でその近くに近づく。目を凝らしてみると、そこには小さな穴があり、中から何かがチラリと見えた。


「なにこれ? 小動物の巣かしら?」アリアは好奇心から、穴の奥に手を伸ばした。


その瞬間、小さな羽音とともに、真っ赤な小鳥が勢いよく飛び出してきた。驚いたアリアは思わず後ろに飛びのき、足を滑らせて転んでしまう。


「わっ!」と声を上げた彼女を見て、近くにいた生徒たちも一斉に振り返った。


その様子を学園の高台から見ていた兄たちは、魔法石の反応でアリアの位置を瞬時に特定し、心配そうに声を掛け合う。


レオンが腕を組んで険しい表情を見せる。

「アリアが転倒した!? 急いで向かうぞ!」


ノアも即座に反応し、

「何があったのか、すぐに状況を把握しなければ!」


二人はまるで戦場に向かう兵士のように走り出した。


一方、アリアは転んだ場所から立ち上がり、足をさすりながら辺りを見回すと、興味津々で小鳥を追いかけ始めた。


「ごめんね、小鳥さん。びっくりさせちゃったかな?」


その時、突然、庭園の奥から異様な気配が漂い始めた。


「何か変……」とアリアが感じた瞬間、地面が小刻みに揺れ、草花がざわめいた。


そこに、森から迷い込んだ小さな魔獣が現れたのだ。


「わあっ!」と叫び声を上げるアリア。


魔獣は怯えているのか、それとも好奇心か、アリアの周りをうろつき始めた。


アリアは怖がるどころか、「かわいい」と笑みをこぼし、そのまま近づこうとした。


だが、状況を知った兄たちはすぐに駆けつけ、息を切らしながらも毅然とした表情を浮かべる。


レオンが魔法の剣を抜き放ち、

「アリア、そこから離れろ! 危険だ!」


ノアは魔法陣を展開しながら、

「兄様、冷静に! 無闇に攻撃するな、まずは落ち着かせよう」


兄たちの指示により、アリアは不安そうに後退する。


魔獣は突然吠え、勢いよく飛びかかろうとしたが、ノアの魔法で動きを封じられた。


その隙に、レオンが剣の先端から放つ光の矢で魔獣の動きを完全に止める。


「よし、これで安全だ。アリア、傷はないか?」レオンが真剣なまなざしで尋ねる。


アリアは小さく頷き、ほっとした表情を見せた。


「兄様たち、ありがとう。怖かったけど……でも楽しかったかも?」


ノアは苦笑しながらも、

「君の“自由チャレンジ”はいつも予想外の展開になるな……」


三人はアリアを囲み、安心させるようにそっと肩に手を置いた。


その後、兄たちは魔獣の調査と保護のために学園の研究施設に連絡を取り、対処を始めた。


アリアはそんな兄たちの姿を見て、改めて彼らの愛情の深さを感じながらも、少しだけ甘える気持ちを抑えた。


「今日は自由にしたかったけど、やっぱり兄様たちがそばにいる方が安心かもしれない」と、心の内を静かに呟いた。


秋の風が優しく吹き、彼女たちの絆を温かく包み込んだのだった。



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