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第七十五話 妹、兄たちの過剰保護をやんわりストップ!? 王子も協力の“社交練習大作戦”!!

■ 作戦会議はこっそりと


「つまり、アリアがやりたいのは“自由に動ける時間”を確保することなんだね?」

放課後の図書室、王太子アルヴィンは声を潜めて言った。


アリアはうなずく。

「うん。兄さまたちが心配してくれるのは嬉しいけど……友達と過ごす時間や、自分で選んで行動する時間も欲しいの。」


隣で聞いていたミリアが手を挙げる。

「じゃあ、“社交の練習”って名目でイベントを作れば? それなら兄たちも反対しにくいでしょ。」


アルヴィンは顎に手を当て、にやりと笑った。

「なるほど……それなら、学園の交流サロンを利用できそうだ。」



■ 社交練習大作戦、始動


数日後、学園の掲示板に新しい告知が貼られた。


『交流サロン・秋の茶会 主催:学生自治会 対象:初等部〜高等部』


表向きは学生同士の交流を目的とした茶会。

だが裏の実行委員長はアリアであり、目的はただひとつ――兄たちの過剰保護を和らげることだった。



■ 兄たちの反応


告知を見たレオンの眉がぴくりと動く。

「……茶会だと? しかも“交流”?」


ノアも隣で腕を組む。

「人混みの中で妹を……いや、だが社交経験は必要か。」


その時、アリアが少しだけ不安そうに二人を見る。

「お兄さまたちも来てくれると安心なんだけど……ただ、今日は皆と話す練習をしたいの。」


レオンとノアは顔を見合わせた。

(……俺たち抜きで完全に自由にさせるつもりじゃない。なら様子を見よう)


こうして兄たちは、護衛兼監視として茶会に同席することを了承した。



■ 秋の茶会、開幕


当日、交流サロンは秋色の装飾に包まれていた。

オレンジや深紅の花々、金糸で縁取られたテーブルクロス、そして香ばしい焼き菓子の香り。


アリアは栗色のリボンをつけたワンピースで登場。

ミリアやクラスメイトたちと自然に談笑を始める。


王太子アルヴィンも現れ、会話の輪を広げる。

その様子を、壁際からじっと見つめるノアとレオン。二人とも腕を組んでいるが、表情は複雑だ。



■ 兄たちの葛藤


「……こうして見ると、ちゃんとやれてるな。」

レオンが小声でつぶやく。


「だが……あいつ、笑顔を見せすぎじゃないか?」

ノアの視線はアリアとアルヴィンの方へ。


(殿下、妹に近づきすぎだ……)

二人の視線はやはり鋭いままだ。


しかし、アリアが他の生徒とも楽しそうに話し、時折ノアたちの方へ安心させるように微笑むのを見て、二人の表情も少しだけ和らぐ。



■ 思わぬハプニング


茶会の終盤、小さなトラブルが起きた。

給仕が運んできたティーポットがつまずき、テーブルの端に置かれたカップが倒れそうになる。


瞬間、アリアは手を伸ばしてカップを支え、こぼれる前に元の位置へ戻した。

「大丈夫? やけどしてない?」


その落ち着いた対応に、周囲の生徒たちが感心の声を上げる。

ノアとレオンはわずかに目を見張り、心の中で(……成長したな)と呟いた。



■ 作戦の成果


茶会が終わり、帰り道。

「どうだった?」とアリアが尋ねると、ノアはしばらく黙った後にこう言った。


「……まあ、今日の君を見ている限りでは、少しは任せてもいいかもしれない。」


レオンも腕を組んだまま頷く。

「だが油断はしない。王太子や妙な輩には注意だ。」


アリアはくすっと笑った。

(それでも、一歩前進……だよね)



■ そして次へ


夜、窓から月を見上げながら、アリアは心の中で次の目標を思い描く。


(これからも、自分で選んで行動できるようになりたい。そのためには……まだまだ作戦が必要だわ)


その小さな決意は、静かな夜空の下で確かに輝いていた。



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