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第七十四話 妹の笑顔を守るため!? 兄たち、まさかの“防衛強化週間”を発令!! 王子も巻き込まれ学園が微妙に騒がしい!?

■ 翌日の朝、やけに落ち着かない兄たち


王立学園の朝はいつもなら平穏だ。

だがこの日は違った。


昨日の資料室での会話が、兄たち――ノアとレオンの中で、妙な形に変換されていたのだ。


「アリアが俺たちの強さを“認めた”……つまり、これからはもっと俺たちが前面に出て護っていいってことだな?」

レオンが朝の食堂でパンをかじりながら言う。


「当然だ。むしろ今まで以上に徹底的に護るべきだろう。」

ノアは紅茶を一口啜りながら、完全に確信している口調だ。


(……あれはそういう意味じゃなかったのに)

当のアリアはテーブルの端で黙ってクロワッサンをかじっていた。だが兄たちの耳には届かない。



■ 防衛強化週間(兄たち命名)


その日の昼、兄たちは勝手に“防衛強化週間”を宣言。

内容はこうだ。


アリアが教室を出るときは必ず兄のどちらかが同行


昼食は兄たちと一緒に摂る(友達と食べる場合も許可制)


書庫や庭園などの人目が少ない場所には単独で行かせない


「不審人物リスト」に該当する者(基準は兄たちの主観)には接近禁止


この「リスト」には、なぜか王太子アルヴィンの名前も真っ先に載っていた。


「おい、それはさすがに――」と反論しかけたアルヴィンに、ノアはにっこりと笑って言った。

「殿下、不審というより“要注意人物”ですので。」



■ 昼休みの攻防


昼休み、アリアは友人のミリアと庭園でお弁当を食べようとしていた。

するとどこからともなく現れたレオンが、二人の前にすっと立つ。


「今日は人が多すぎるな。別の場所に行こう、アリア。」


「でも……」

ミリアが困ったようにアリアを見るが、レオンは容赦ない。


「ミリア嬢、申し訳ないが今日は妹を預からせてもらう。」


ミリアが肩を落とし去っていく後ろ姿を見送りながら、アリアはため息をついた。

(これじゃあ友達と話す時間が……)


そこへさらにノアも合流し、二人が護衛のように両脇に立って食事を見守るという異様な昼食風景が展開された。



■ 王太子の反撃


数日後、アルヴィンはついに反撃に出た。

「ノア殿、レオン殿。少しお話が。」


兄たちは応接室に呼び出され、扉が閉まると同時に王太子の低い声が響く。


「私はアリア嬢を害するつもりは毛頭ありません。むしろ……」

そこでアルヴィンは少し笑みを浮かべる。

「お二人の“防衛強化”は、彼女の社交性を損なう恐れがあります。これは、彼女の未来にとって好ましいことではない。」


ノアが腕を組み、冷静に答える。

「未来のために守るんです。」


レオンも頷く。

「誰であろうと、妹を泣かせることは許さない。」


二人の断固たる姿勢に、アルヴィンは苦笑しながらも少しだけ目を細めた。

「……では、彼女が望む形での“保護”という折衷案を模索しましょうか。」



アリアの小さな決意


夕方、自室。

窓辺で夕日を見ながら、アリアは一人呟いた。


「兄さまたちも、殿下も……みんな、わたしを大事にしてくれるのはわかってる。だけど、このままじゃわたし、自分で動けなくなっちゃう。」


その瞳に小さな決意の光が宿る。

(次は、わたしが二人を“説得”する番だ)



■ 結末はまだ見えない


翌日、学園の廊下で。

アリアは兄たちに向かってにっこりと笑い、こう言った。


「今日は、友達と一緒に行動する日ですから。」


その笑顔の裏に、彼女なりの強い意志があった。

ノアとレオンは顔を見合わせたが、しぶしぶ頷く。


――しかし、それは兄たちの“監視”が減ることを意味しない。

遠くからじっと見守る二つの視線に、アリアは思わず苦笑するのだった。



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