第八話 ──初恋の気配!? 兄たちの“恋愛警戒レベル”が非常事態宣言に突入!!
「あ、アリアさん。えっと……今日の詠唱、すごくきれいだったよ」
「え? あ、ありがとう……!」
その日、アリアは放課後の廊下でひとりの男子生徒に話しかけられていた。
少し緊張した表情で髪をかき上げながら、勇気を振り絞ったような声。
名前はユリウス・エルメロイ。準男爵家の息子で、真面目で物静かな少年。
(え、なにこの雰囲気……ちょっとドキドキする……!?)
ほのかに顔が熱くなるアリア。
しかし彼女は知らなかった――この瞬間、王立初等学園に警戒アラートが発令されていたことを……!
その日、レイフォード邸・兄弟専用作戦室。
バァン!!
「レオン兄様! アリアが“男の子と話していた”との報告だ!!」
「な、なんだってぇぇぇ!?!?」
ノアが机に報告書を叩きつけ、レオンが椅子から転げ落ちる。
「誰!? どこの馬の骨!? 家名は!? 将来性は!? 性格は!?!?」
「落ち着け! 我らは貴族! まずは調査だ!!」
即時、私設情報網(執事含む)を駆使し、ユリウス少年のプロフィールが割り出される。
ユリウス・エルメロイ(9)
・準男爵家の三男
・趣味:読書と魔法書収集
・成績:魔法理論上位、実技やや劣る
・性格:内向的、でも頑張り屋さん
・妹好き(姉兄なし)
「妹好き……っ!? おのれぇぇぇ!!!」
「わかるぅぅぅ!!! でも許さんっ!!!」
すでに理性がギリギリである。
翌朝。学園の廊下にて。
「お、おはようアリアさん……あの、もし良かったら今度いっしょに、図書室で──」
「──ユリウス・エルメロイ君、だね?」
ぬっ……と背後から現れるのはノア(完全制服装備)とレオン(“教師っぽい服”を着ているがバレバレ)。
「ア、アリアさんの……お兄様、ですか……?」
「君にお兄様と呼ばれる筋合いはない」
「まて…」
「ん、とりあえず…」
「ああ。妹がお世話になっているようだね」
「で、なに話してたの? どのくらい仲いいの? ねえねえねえ?」
肩に手をかけ、にこぉぉぉぉ……と笑うレオン。
ユリウス:「あ、えっと……あの……お友達として……っ」
ノア:「そうか。“お友達”か」
レオン:「じゃあまだ“恋”ってほどじゃないってことだよね!? そーかぁそーかぁ!!」
アリア:「兄様たちぃぃぃぃ!!」
飛び出してきたアリアが、顔を真っ赤にして叫んだ。
「やめてよぉぉぉっ!! せっかくがんばって話してくれたのに!!」
ユリウス:「ご、ごめんアリアさんっ! ぼく、余計なこと言っちゃって……!!」
「ちがうの! ユリウスくんはなにも悪くないの! むしろ……その……がんばってて、うれしかったのに……っ」
(……あ、言っちゃった)
「……ノア兄様。やばい。妹、今“恋愛フラグ”立った」
「……恋愛警戒レベル、コードレッド」
「非常事態宣言発令!!」
「制圧部隊――もとい、妹観察部、全員配置につけ!!」
アリア:「つけなくていいぃぃぃっ!!!」
その日の夜、兄弟作戦会議。
「……でも、ユリウスくんは悪い子じゃないよ。
困ってる子にも優しいし、わたしの魔法にもちゃんと向き合ってくれてた」
アリアの言葉に、兄たちは黙りこくる。
「……そっか。なら、しばらく静観しよう」
「ただし! “妹に触れたら即刻失格”の原則は守ってもらう!!」
「失格って何の資格よ?! だれが決めたのそれぇぇぇ!?!?」
──こうして、レイフォード兄弟による**“恋愛非常事態”**は、
とりあえず保留という名の“監視付き観察期間”に突入したのだった。
……ちなみにユリウスくん、
後日「兄姉がいる人の気持ち、なんとなくわかってきた……」とポツリとつぶやいたという。




