第七十三話 妹を巡る王太子と兄たちの静かで激しい攻防!? 資料室の空気が凍りつく――!!
■ 資料室の扉の前で
三人は王立学園の広大な図書館棟へと足を進めていた。
ノアが手でそっと扉を開くと、外の廊下のざわめきは嘘のように静まり返った空間が広がる。
大理石の床に並ぶ背の高い書架、天井からは細かなステンドグラスの光が優しく降り注ぎ、静謐さと厳粛さを醸し出す。
アルヴィンは無言のまま一歩踏み込み、ノアとレオンも続く。
アリアは二人の兄の間に挟まれ、息を整えながら資料を探し始めた。
「……ここなら、安心して話ができるだろう。」ノアの声は低く、重みがあった。
アルヴィンはわずかに微笑む。
「……そうですね。では、外の騒ぎは忘れて、この場で冷静に話しましょう。」
■ 緊張の再燃
アリアが書架の間を歩きながら資料を手に取り始めると、二人の兄が背後で話を始めた。
その声は低く、けれど確かに張り詰めていた。
「殿下、妹の安全は我々の最優先事項です。ですが、あなたの接近が過剰なものと判断されれば――」
「我々レイフォード家の誇りに関わります。決して見過ごすことはありません。」
アルヴィンは背を向け、ゆっくりと振り返る。
「誇りとは、守るべきものだけではありません。時に、それは足かせにもなります。」
レオンが険しい目で応じた。
「足かせか。妹の未来を背負う者が、それを言うのか?」
■ アリアの葛藤
アリアは手にした分厚い魔法書のページを繰りながら、心の内に迷いが広がっていた。
兄たちの愛情は確かに大きく、彼女を守り育ててくれている。
しかしその“愛”が重く、窮屈に感じることも増えていたのだ。
アルヴィンとの関係も、単なる学友以上のものに見られている現状が、彼女の肩にのしかかる。
「……兄さまたちも、殿下も、わたしのことを想ってくれてるのはわかってる。だけど、みんな違う方向を向いていて、わたしはどこに行けばいいのか、わからなくなっちゃう。」
その小さな呟きが、しんとした室内にほんの少し響いた。
■ 緊迫の対話
ノアがゆっくりとアリアに近づき、優しく肩に手を置いた。
「アリア。君の意志を尊重するのは当然だ。だが、この世界は簡単ではない。守るためには時に、力を見せることも必要だ。」
アルヴィンは反論する。
「力だけでは解決できない問題もある。時に説得と理解が何よりの武器になることを、私は知っている。」
レオンが両者を見渡しながら言った。
「説得も理解もいい。だが、それが妹の安全を脅かすなら我々は容赦しない。」
緊張の糸が再び張り詰めるが、その中にどこか、互いの信念が尊重される気配も感じられた。
■ アリアの決意
その瞬間、アリアは決めたように顔を上げた。
「わたしは、どちらの意見も大切だってわかってる。兄さまたちの強さも、殿下の柔軟さも。だから、わたしは自分の力で、その間をつなげたい。」
「そして……みんながわたしを支えてくれたら、それ以上に心強いことはないよ。」
ノアとレオンは互いに目を合わせ、やがて軽く頷く。
アルヴィンも微笑み、柔らかく言った。
「その意志、必ずや未来を切り拓くだろう。」
■ 新たな協調へ
その日、資料室は静かな決意の場となった。
三人の男は互いに意見を交わし、やがて固い信頼の絆を再確認することになる。
廊下に戻ったとき、アリアの表情はどこか晴れやかで、自信に満ちていた。
彼女の背後で、兄たちも王太子も、それぞれに固い決意を胸に秘めていた。
これから訪れるであろう様々な試練に備え、静かに歩みを進める三人の姿が、朝日に照らされて輝いていた。




