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第六十話 アリア、友だちと“ひるやすみ”!? なのに兄たち乱入で昼食会がパニックに!!

初秋の学園中庭。陽だまりの芝生にシートを広げて、アリアと友人たちは楽しくお弁当を囲んでいた。


「ふふっ、この間の“演劇祭”、やっぱりアリアが主役だったって王都でも話題になってるわよ!」


「クラリス、それはやめてぇ……もう目立ちたくないのに」


「でもアリアってほんとにお姫様みたいよね。何食べてるの?」


「え、今日は自分で作った玉子サンドと……ちょっとしたサラダを」


「自分で!? アリアってお料理もできるの!?」


「……前世では、それなりに、ね……ってあっ、いまのナシ!」


エマとクラリスの笑い声が響き、アリアは頬を染めながらパンを手で隠す。


そんな平和な昼休み。


だった、はずなのに――


「……アリアの笑い声を確認」


「うむ。明らかにテンションが高い。“何かあった”に違いない」


「通常時より1.7倍の笑顔指数……!」


「……突入するか」


「突入だ」


ガシャッと音を立てて開く校門。


芝生の向こうに、レオンとノアが“昼休み突撃仕様”の軽装で現れた。


「っ!? に、兄様ぁぁぁぁああああ!!?」


アリアが叫ぶより早く、二人は軽やかに芝を駆け抜けてくる。

背後には護衛騎士まで控えていた。


「アリア、お昼は何を?」


「健康状態に問題はないか? 栄養バランスは――おや、自作弁当か。味見を」


「今ここでぇええ!?」


エマとクラリスがぽかんとする中、ノアはアリアの玉子サンドを一口食べて満面の笑みを浮かべる。


「うむ、出汁が効いていて上出来だ」


「……学園昼食警備任務、継続中……!」

レオンはアリアの背後に立ち、謎のスキャン魔法を起動していた。


「何をスキャンしてるのぉぉ!?」


「不穏な気配を探知する“対・恋愛フラグ”結界だ」


「そんな魔法存在しないからぁ!!」



◆ ◆ ◆


周囲の生徒たちがざわつき始める。


「え、あれアリア嬢の兄様たちじゃない?」


「うわ、レイフォード家の……ってことは、また“妹警備”?」


「まじか……昼飯どころじゃねえよ、威圧感で!」


なぜかアリアの周囲数メートルが“結界空間”と化し、昼食会は一気に静まりかえった。


クラリスがそっとアリアに耳打ちする。


「ねえ……あなたの兄様たち、いつもこうなの?」


「……ごめん、今日ちょっとマシな方なの」


「マシなの!? これで!?」



◆ ◆ ◆


「そういえばアリア」


「なにっ、今度は何なのっ」


「デザートがまだだな。今日はパパから託された特製アップルパイがある」


「……え、ほんとに?」


レオンが取り出したのは、温かさがほんのり残るアップルパイの箱。

レイフォード家の家令が、王都の特製工房で作らせたものだった。


「アリアにだけ特別配達だ。今、食べるか?」


「食べる……けど! これ、お昼のレベル超えてる!」


「兄として当然のことをしているまでだ」


「騒ぎになってるって気づいてよぉおおお!!」



◆ ◆ ◆


その日の午後、教職員室では教師たちがため息をついていた。


「……また昼休みに“兄乱入”事件ですか」


「いや、今回は弁当とスイーツの提供だけだったから、むしろ静かな方では?」


「静か、かな……?」


「でも、“兄たちの登場=学園の非常事態”が定着してきましたね……」


「……何より、アリア嬢がますます人気に……」



◆ ◆ ◆


放課後。


帰り道、アリアはうなだれながら呟く。


「もう……わたし、友達と普通にお弁当食べたいだけなのに……」


「でもアリア、今日のアップルパイは最高だったよ!」とエマが笑う。


「それに、あんなに“堂々と愛されてる”なんて、ちょっと羨ましい」


「そうよ。わたしも“あんな兄様”いたら、安心して生活できそうだもの」


クラリスの言葉に、アリアはむぅ、と口をとがらせた。


「……わたしは、もう少し静かな昼休みがほしいだけなのにっ!」


だがその日、学園の広報誌にしれっと書かれていた。



《本日の学園ニュース》

《レイフォード兄妹、仲良し昼食会を開催!? “愛され妹”アリア嬢の微笑みに注目集まる!!》


──アリアの“平穏な学園生活”は、いつ来るのか。

いまだ道のりは遠いのであった……。



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