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第五十八話 妹と“発明コンテスト”に出場!? 兄たちの過保護アイデアがとんでも魔導具に進化中!?

秋学期のある日。初等学園の教室で、アリアは先生からこう告げられた。


「アリアさん、今年の発明コンテストに、ぜひ出てみませんか?」


「……え? わ、私が、ですか?」


「推薦です。前回の提出課題――あの“魔導バッグ”を拝見しました。大変ユニークで、創造性に満ちていました」


(あれは、兄様たちの“魔改造”が盛り盛りだったのに……)


そんな経緯で、アリアは魔法学部門の発明コンテストに、クラス代表として出場することになってしまった。



「今回は、私一人で、やりたいんです。兄様たちの手は借りずに」


レイフォード家の応接間で、アリアは意を決してそう宣言した。


レオン兄様とノア兄様は、一瞬だけ真顔になったが、すぐに頷いた。


「わかった。見守るよ、アリアの挑戦を」


「口も手も出さないって、レオンと誓い合ったからな」


――だがその翌日。


「兄様、それ……魔導工作台ですか……?」


「うん。“使わない”けど一応、万が一に備えてな」


「……それ、設計図ですよね。わたしの発明とは無関係なはずの……」


「まあ……うん。“イメージの参考”くらいに……」


アリアの“単独挑戦”は開始一日で揺らぎを見せていた。



それでも、アリアは踏みとどまった。


自分で考え、自分で作ること。

魔法が苦手な子でも楽しめる、小さな魔導具――


「そうだ。“魔法筆記ペン”……前世で、弟が書き取り練習を嫌がってたの思い出したかも……」


アリアが考えたのは、魔力で動き、使う人に合わせて字が書きやすくなる補助機能付きの筆記ペンだった。難しい魔術は使わず、癒やし系の魔素を組み込んだ“気持ちが伝わる魔法ペン”。


作業は地味だったが、アリアは夢中になって取り組んだ。



そして、発明コンテスト当日。


会場には上級生たちの豪華な作品が並んでいた。


「こちら、“高速で洗える自動食器スライダー”です!」


「“魔導光線メイクミラー”! 肌の調子を自動診断します!」


その中で、アリアのペンはとても地味に見えた。


(大丈夫、地味でいい。目立たなくてもいい。ただ、ちゃんと伝われば……)


審査員の一人が、アリアのペンを手に取って書いてみた。


その瞬間――


「……ふむ。これは……なんだろう、字を書くのが楽しく感じられる。不思議な安心感があるね」


「魔力に反応して、使う人に合わせて滑らかさが変化するんです。あと、ペン先の色も、気分によって変わります」


「それは素敵だ。子供や初心者に向けた魔導具として、とても完成度が高い」


結果、アリアのペンは「癒やしと創意の賞」を受賞することとなった。



「やったぁ……わたし、ひとりでやれた……」


表彰後、学園の庭園でほっと一息つくアリア。


だが次の瞬間、背後からふわっと誰かの気配が――


「アリア! 見たよ、よく頑張った!」


「うわああ!? お兄様!?!?」


振り向けば、レオンとノア。しかも二人ともなぜか“発明家の白衣姿”だった。


「これは……俺たちが参考用に作ってた“プロトタイプ版”! なんと、声に反応して文字が飛び出す魔導ホログラムつき!」


「補助機能に“自動翻訳”も入れたんだ! 国際会議対応モデルだよ!」


「それ、もう筆記ペンじゃないから!!」


結局、兄たちは全力で“応援していただけ”だった……らしい。



帰宅後。


アリアは、自作ペンの試作品をそっと机に置いた。


兄たちの魔改造も楽しいけれど、自分の想いだけで作ったこの一本は――


「……やっぱり、私だけの、特別な宝物、です」


小さく笑ったその表情に、また一つ大人びた影が宿っていた。



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