第五十七話 妹の“課題作品”が兄たちの手で改造されまくり!? 完成品がもはや別物です!?
秋の終わり、学園では恒例の「創作課題提出週間」が始まっていた。
魔法刺繍、調合薬、詩作、魔道具の設計など――提出形式は自由。テーマは、“自分の魔力を活かした創作物を一つ仕上げること”。
一年生のアリアにも、その課題が与えられた。
「私は、バッグを作ることにしました!」
明るく発表したアリアに、クラスメイトのエマとクラリスは笑顔で拍手を送ってくれた。
見た目は可愛く、日常使いもできて、魔法でちょっと便利――そんなバッグを目指していた。
(前世でも少し裁縫をやっていたし、魔法刺繍も今の私ならできるはず!)
希望に満ちたその晩。アリアは何気なく、そのことを夕食時の家族の団らんで話してしまった。
「バッグか……素材は何を使うんだ?」
「どの程度の魔力を通す仕様にするつもりなんだ?」
「重量制御と防御結界も入れておいた方がいいな」
――レオン兄様(17)とノア兄様(19)による“課題対策作戦会議”が、即時開幕したのである。
「え? ちょ、ちょっと待って、これは私が作る課題で――!」
「分かっている。だからこそ、準備は完璧に」
「設計補助と試作モデルはこちらで担当する。実際の製作工程は君に任せる。つまり、ルール違反ではない」
「ズルすぎる理論きたぁぁぁ!!」
そして数日後。アリアの机には“試作品その一”が鎮座していた。
「……バッグが勝手に浮いた!? なんで!?」
「移動補助魔法だ。使用者が転倒した時、自動で立ち上がって肩に戻る」
「そんな自動帰還機能、いらないからぁぁ!」
次なる試作品には、なぜか小型キッチンが内蔵されていた。
「なにこれ!? コンロがついてる!? 鍋まである!?」
「旅先での食事に便利だろう」
「だからって、これはもはや“携帯住宅”!!」
おまけに魔力感知センサーで防犯対策も完備。
自律行動機能で夜は勝手に片付けを始める。
「……わたし、“普通の可愛いバッグ”を作りたかっただけなのに……」
もはや本人の意思などどこ吹く風。
兄たちの愛(という名の魔改造)は加速し続け、最終的に完成したのは――
・空間拡張魔法(収納容量:四畳半)
・浮遊機能(ホバリング追従)
・軽量化術(10kg → 500g)
・自動防衛(盗難時、犯人に電撃)
・夜間照明付き(光量自動調整)
・自己修復機能(切れ目・傷も自動回復)
……などなど、“携帯型魔法要塞”としか言いようのない代物だった。
「兄様たち……お願いだから、“課題”の主旨を思い出して……」
「これでこそ、アリアらしい」
「アリアの魔力量に見合った機能を組み込んだまでだ」
「兄フィルター強すぎるよぉぉぉ!!」
◆ ◆ ◆
提出当日。
バッグを持って会場に入ったアリアに、教師たちは硬直した。
「……レイフォード嬢、これは……あなたの作品なのですか?」
「はいっ! 最後の刺繍は全部、自分でやりました!」
「機能設計の緻密さが、王都の魔道具研究所レベルなのですが……」
「バッグの話をしてるんですけどおおおお!!」
あまりの完成度に教師陣は混乱し、他の生徒たちもざわざわと集まってくる。
「……バッグが浮いてる」
「なんか……喋ってない?」
「音声アシスト!? え、魔導AI搭載されてるのこれ!?」
騒然となる教室。
結局、アリアの作品は「一年生課題としては規格外」と判定され、**“特別研究作品扱い”**として別展示されることとなった。
「可愛い、普通の、バッグを作りたかっただけなのにいいぃぃ……!」
◆ ◆ ◆
その夜、レイフォード邸。
「よかったな、アリア。ちゃんと評価された」
「次は収納空間に温泉機能を追加するのもありだな」
「しません!! 絶対にしませんからぁ!!」
アリアの“課題バッグ”、その完成度と兄たちの過保護っぷりは、しばらくの間、学園内で語り草となったのだった――。




