表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/101

第六話 ──初等魔法演習! “普通にやっただけ”で先生が騒然!?

王立初等学園、飛び級特別聴講生──それが、アリア・リュミエール・レイフォード。


本来なら9歳からの入学が基準だが、彼女は7歳。

いくらなんでも早すぎる、と大人たちが首を傾げる中。


──魔法だけは別だった。


「本日は基本詠唱“ファイア・スパーク”を使って、簡易的な火球を形成してみましょう。焦らず、力を込めすぎず、詠唱を正確に――」


教師が説明を終えると、生徒たちが順に前へ出て、木製の的に火の玉をぶつけていく。


パシュン!

ぼふっ!


ほとんどが小さな火花か、煙のようなもの。

一部の生徒が、ちょっとだけ“ぽっ”と火を灯す程度。


(ふむふむ……このくらいでいいんだ)


アリアは心の中で強く“セーブしよう”と誓った。

なぜなら彼女の“基礎魔法”は――


王都魔術研究院で「高位術の一歩手前」と以前診断されたことがある。


「それでは、アリア・レイフォード嬢」


「はい。……ファイア・スパーク」


彼女が杖を構える。

詠唱は短く、淡々と、だが迷いはない。


(ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ……)


ぽんっ。


その瞬間、空間が一度揺れた。


――ゴォオオォォ!!


轟音とともに、直径2メートル級の炎柱が地面から吹き上がり、木製の的どころか、

的ごと背景の魔法耐久壁まで黒焦げになった。


教室、沈黙。


先生:「…………え?」


生徒:「…………え?」


アリア:「…………あれ? セーブしたのに……」


(えっ、あれで七割減だったのに……?)


先生:「あ、アリア様! 今のは“高位初級術”に分類される出力です!?」


アリア:「へ、えっ……? でもこれは、“ファイア・スパーク”で……」


先生:「ちょ、ちょっと魔力量測り直しましょうか!? ついてきてくださいっ!!」


その後の測定室。


教師陣:「……常人の三倍以上の魔力量。詠唱速度は理論限界付近。制御力は“意図的に出力を下げている”レベル……」


所長:「この子、なんで初等学園に……?」


教師陣:「王族じゃありません……ただの伯爵家の娘さん……」


「“ただの”って言うのやめてください……」とアリアは小声でツッコんだが、

彼らには届かなかった。




その日の夕方、レイフォード家。


ドアが開いた瞬間、二人の兄が飛び込んでくる。


「アリア!! “壁が燃えた”ってどういうこと!?」


「聞いたよ!? 炎柱!! 柱ってなに!?」


「ち、ちがうの! ちゃんと加減したの! してたの! したつもりだったの!!」


「妹がまた“したつもり”で事件起こしてるうぅぅ!!」


「で? 先生はなんて?」


ノアが冷静に尋ねると、アリアはもじもじと答えた。


「“指導方法を個別に変えます。あと、将来的に王立研究院との兼任も検討中”って……」


「……つまり、“この子だけ別枠”認定されたってことか」


「アリアすごーい! って言いたいけど、心臓に悪いよぉ……!」


「……でも、アリアが傷ついてないなら、それでいい。問題はない」


そう言って、ノアはアリアの頭をぽんと撫でた。


レオンも満面の笑みで抱きついてくる。


「今度さ、うちの庭の岩を全部溶かしてみない!? 派手に!!」


「ダメ!! それ怒られるやつ!!」


 


──こうして、魔法実技の“演習”はアリアにとって、

もはや“災害管理訓練”と化していくのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ