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第四十九話 妹、魔法で“絵本”を作る授業!? でも完成したのが“絵巻物バトル叙事詩”だった件

初秋の風が心地よく吹き抜ける昼下がり。アリアが通う初等学園では、魔法演習の特別授業として“魔法絵本の制作”が行われていた。


「えほんって……あの、絵とお話がいっしょになってるやつですよね?」


アリアが手を挙げて尋ねると、担任のリリアナ先生がやさしく微笑みながらうなずいた。


「その通りよ。今日は、自分で考えたお話を魔法で表現して、“絵本”として完成させてもらいます。文字も絵も、魔力を込めて描いてね」


生徒たちは色とりどりの魔法ペンを手に取り、さっそくワクワクしながら取りかかっていた。


「わたしはお姫様とドラゴンの話にしようかな!」

「ぼくは魔法剣士が冒険するお話!」


そんな中、アリアは一人、静かに考え込んでいた。


(うーん……楽しいお話っていったら、前の世界で読んだあの冒険物語……)


前世の記憶がふんわりと蘇り、アリアの手が動き始める。魔法ペンから放たれる魔力が紙の上に文字と絵を生み出していき、それはページごとに立体的な描写として浮かび上がっていった。


(勇者、魔王、裏切りの賢者……それから、禁断の大魔術……)


どんどん集中していくアリア。その周囲には静かな魔力の奔流が漂い始め、教室内に不思議な緊張感が走る。


「……アリアちゃんの絵本、なんか分厚くない?」

「え? まだ描いてるの?」



ついに授業終了の鐘が鳴るころ――


「アリアさん、できましたか?」


リリアナ先生が声をかけると、アリアはふわっと微笑んで一冊の分厚い本を差し出した。


表紙には、燦然と金の魔力文字でこう書かれていた。


『魔導戦記カグラ・クロニクル~光と闇の叙事詩~』


「……叙事詩!?」


中を開けば、精密な魔法陣の図解、国家間の戦略地図、詳細な魔術理論に裏切りと戦争、友情と悲劇が交錯する――


完全なる“魔導戦記文学”だった。


「なにこれ……これもう、読み聞かせどころか大学講義じゃない!?」


さらにページをめくるたび、魔法が発動し、立体映像が空中に展開されていく。


「映像つき!? 音響まであるんだけど!?」

「……これ、授業じゃなくて劇場で上映すべき作品では?」


クラスメイトたちは口をぽかんと開け、ただただ呆然とアリアの魔導絵本を見つめていた。


「わたし、ほんとにただ“たのしいお話”を書いたつもりだったのに……」


アリアは困ったように眉を下げて、小さく肩をすくめた。



だが――


その作品は瞬く間に教師陣の間で話題となり、魔法理論の専門教官に回覧され、ついには校長にまで届くことに。


「レイフォード嬢の作品……これはもう教育を越えた芸術だ」

「というか魔力量、初等部の限界値を超えてますよ。むしろあぶない……」


もちろん、例のごとく兄たちにも即時報告が届いた。


「アリアが……戦記物の魔法絵本を?」

「200ページ超え!? 音声付き、映像付き、立体魔導演出つきだと!?」


「まず印刷所の手配を! いえ、その前に書籍登録と著作権申請を……!」


「ちがあああううう!! おえほん! ただのおえほんなんですぅぅ!!」


アリアの絶叫が、教室中にむなしく響いた。


こうして、“魔法絵本制作”の授業は、またしてもアリアの“無自覚チート”によって、伝説の回となったのであった――。



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