第四十六話 秋の学園祭準備! 妹の“出し物決定”で兄たちが張り切りすぎて大混乱!?
秋の風が心地よく吹き抜ける中、初等学園では今、最大のイベント――秋の学園祭の準備が進んでいた。
教室には装飾の布やら画用紙やら、魔導照明やらが散乱し、誰も彼もがバタバタと動き回っている。
「ねえねえアリアちゃん、どんな出し物にするか、もう決めた?」
クラスメイトのエマが、リボンを口にくわえながら話しかけてくる。
「えっと……候補は出てたけど、まだ多数決で決めるって先生が」
「楽しみだねぇ。アリアちゃん、絶対メイド役似合うよ~!」
「め、メイド!?」
エマの声に反応した他のクラスメイトたちも一斉に集まり、
「うんうん、アリアちゃんが紅茶運んできたら一生忘れないわ~」
「私はあえて“無表情なツン系”でお願いしたい」
「お姉さん風でもいいな……!」
「リクエスト多すぎぃぃぃ!!」
ざわつく教室。そこへ、担任のリリアナ先生が入ってきた。
「みんな、出し物は“魔法おばけ屋敷”に決定よ。反対意見は?」
「やったー!」
「これなら男子も全力出せるー!」
……というわけで。
アリアのクラスは『魔法×ホラー』をテーマにした“おばけ屋敷”を出し物とすることになったのだった。
「ふう……意外と怖いの、得意かも」
放課後、アリアは魔法演出係として、煙や光の効果を調整していた。
光の明滅、浮遊するマネキン、重力制御でのドア開閉――
魔法を使うといっても、演出には繊細さと制御力が必要だった。
そこへ――
「妹が“ホラー役”を!? 即刻、対策会議だ」
「観客が怖がりすぎて何かしでかしたらどうする。最低でも防護結界は三重」
アリアの背後に、私服に変装した兄たちが、ちゃっかり現れていた。
「なんでいんのぉぉぉぉ!!?」
「そろそろ来る頃かと思って、張っていた」
「張ってないで帰っててぇぇ!!」
その夜、レイフォード邸では学園祭に向けた兄たちの暴走会議が幕を開けていた。
「学園に無断で設備を搬入するのはどうだ? 光結界スクリーンでアリアを実体視できる安全モニター設置」
「いや、妹の分身を使って“お化け役”を演じさせれば、本人が疲れなくて済む」
「本体がいなきゃ意味がないのでは!?」
「ではこうしよう。本人をステージ中央に“常駐”させ、出番のときだけ幻影を投影する形式で」
「ややこしすぎるのよぉぉ!!」
結局、アリアの“全力土下座”により、学園への「物理的介入」は禁止となった。
だがその代わり――
「監視用魔導ハトを十羽配備しました」
「客の中に不審者がいた場合、兄弟たちが即時乱入可能な位置で待機」
(なにが“おとなしい”だ……!)
そして――学園祭当日。
校門には既に人の波ができていた。
初等・中等・高等部が合同で開催する年に一度の祭典とあって、街の名士や上級貴族、果ては王族の顔もちらほら。
アリアのクラスも、朝からおばけ屋敷の設営と確認に大忙し。
「よし、煙魔法OK! 光のゆらめきも自然! ドア、勝手に開いた!」
「それ事故じゃない!?」
クラスメイトたちは準備に張り切るが、その一方で――
「観客の流れを計測中……」
「怪しい視線を確認。警戒レベル、上げろ」
校舎の屋根から、双眼鏡を覗くレオン。
「やめてええええぇぇ!! 目立つから!!」
学園祭は大盛況だった。
子どもたちの元気な声、露店から立ち上る湯気、魔法演出によるステージショー。
アリアのクラスも順調に客をさばいていた。
「キャー! なにこれ本格的ー!」
「え、宙に浮いてる!? 魔法演出!? すごーい!」
アリアは“おばけ役”で、観客の背後にふわっと現れる演出をこなしていた。
「――お楽しみいただけましたか?」
「ひぃぃぃいいい!! でも美しい幽霊……!」
「よし、好評です!」
そのころ校舎の外では――
「……ふむ。妹の演技、なかなかだな」
「泣き出した子もいたぞ」
「褒めてんのか怒ってんのかわかんないよ!!」
夕暮れ。
祭りの終わりが近づく頃。
最後の観客を送り出したアリアは、クラスメイトたちと一緒に控室でぐったりと座り込んでいた。
「アリアちゃん、すっごく頑張ってたよ~!」
「ほんとほんと、来年もよろしくね!」
「ええっ、もう“来年も”って決まってるの!?」
そのとき。
「……アリア、お疲れ様」
そっと差し出されたのは、冷たいレモネード。
「レオン兄様……」
「今日は我慢してた。すぐに駆け寄りたかったけど……お前の頑張る姿を見ていたかった」
「……ありがとう」
(少しだけ、お兄様たちも成長したのかもしれない……)
そう思った瞬間。
「とはいえ、次回からは入場者には全員身元証明魔導石を――」
「台無しぃぃぃ!!」
こうして、アリアの秋の学園祭は幕を閉じたのだった。




