夏休み特別編 妹、森で迷子!? なのに“古代ダンジョン”を発見しちゃいました!?
夏休みの中盤。アリアたちは避暑地の別荘から、森の奥にある“天然の湖”へとピクニックに出かけていた。
「今日こそ兄様たち抜きで、静かに過ごしたいな……」
アリアがそう呟いたのも束の間、後ろから「護衛班A、定時報告を」とレオンの声が。
木陰にはすでに魔法迷彩を施した監視テント、上空ではノアが操作する魔導飛行機が静かに旋回していた。
「お兄様たち、せめて“自然”くらいは自然のままにしてえぇぇぇ!!」
アリアの叫びは、森に吸い込まれていった。
アリアは森の奥にひっそり咲く、珍しい花を見つけた。
護衛の目を一瞬かいくぐった彼女は、ひとりでそっと花のもとへ。
「きれい……これ、図書館で見た『月光草』……」
指先が触れた瞬間。
――ゴゴゴゴゴゴ……!
地面が微かに揺れたかと思うと、花の足元の地面がくぼみ、丸い石のフタがせり上がった。
そこに刻まれた古代文字。
「“レイ=アルカ・ルーン遺構”……?」
学園で習ったばかりの文字をたどるアリアの頬に、風が吹きつける。
ふと足元を見ると、ぽっかりと地面が開いていた。
「えっ、これ……入口!?」
◆ ◆ ◆
「アリアが……いないだと……?」
レオンの声に、ノアの瞳が鋭く細められた。
「全班、警戒レベルSSに移行! 魔法探査網を展開、周囲1キロを網羅しろ!!」
「すぐに見つけ出すぞ、妹を!!」
空中には監視魔導具が飛び交い、地面には熱探知魔法が走る。
あっという間に森林一帯が“非常事態モード”に突入していた。
そのころ、アリアはダンジョンの中。
ひんやりとした空気と、仄かに光る魔法鉱石の壁が幻想的な雰囲気を醸していた。
「うわあ……すごい。絵本で読んだ遺跡そのもの……」
進んでいくと、魔法式で起動する扉、トラップ解除装置、浮遊する石盤など、魔道文明の痕跡が随所に。
「これ、たぶん“精霊の試練”を受けた人が通る儀式の道……」
アリアの頭に、前世で読んだ冒険譚の知識がよみがえる。
そして――
「……なんか、光ってる?」
小さな祭壇の上で、薄く光を放つクリスタルを見つけた。
触れると、そこからふわりと風の精霊が現れる。
『そなたは、風の加護を求める者か……』
「え……わ、わたし、そんなつもりじゃ……」
『だが、そなたは“試練をくぐり抜ける心”を持っている。ならば問おう。――そなたは、大切なもののために力を使うか?』
アリアは少しだけ考えて、しっかりと頷いた。
「はい。……わたし、守りたい人たちが、います」
すると精霊は笑った。
『ならば――祝福を授けよう』
その瞬間、アリアの魔力が静かに震え、光が胸元に集まっていく。
そして彼女は、新たな魔法属性《風精霊術》の加護を受けたのだった。
◆ ◆ ◆
地上――
「地下の反応を発見! アリアの魔力反応です!」
「直ちに突入準備! 魔法防壁展開、エリア制圧班を前進!!」
過保護な兄たちは、完全武装で地下遺跡へ突入。
その頃アリアは祭壇の横で、まだ余韻に浸っていた。
が、次の瞬間――
「アリアァァァアアア!!!」
「無事か!? 怪我は!? ダンジョン内の空気成分は!? 毒ガスはないか!?」
レオンとノアが、ほこりまみれで飛び込んできた。
「ちょ、落ち着いて!? 今すごく神聖なシーンだったのに!?」
◆ ◆ ◆
その日の夜。
「……でも、わたし、本当に危ないことはしてないよ?」
「だとしても、妹が“ひとりで古代ダンジョンを攻略”なんて、父上に知られたら……!」
ノアが震える中、レオンが真顔で言う。
「この場所……もう“立入禁止指定”にするべきだな」
「まって!? これ、国の文化財じゃないの!?」
精霊の加護を受けたことは、しばらくアリアの“ひみつ”として胸にしまわれた。
ただし、王都に戻った後、なぜか魔法省からの“個別面談依頼”が届いたのは、また別のお話である――。




