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夏休み特別編 妹、おともだちの別邸にお泊り!? でも兄たちが“護衛隊”として同行中!?

アリアが仲良しの友人・エマに招かれて、彼女の家の別邸へ“お泊まり”に行くことになったのは、初夏の終わり頃だった。


「わたし、人生初めての“友だちのおうちでお泊まり”ですっ」


興奮気味に荷物をまとめるアリアの横で、兄たちは異様なまでの真剣さで議論を繰り広げていた。


「エマ嬢の別邸は王都から馬車で二時間。周囲は森に囲まれている。想定される危険は……」

「小動物、盗賊、そして――恋愛フラグだ」


「いや、最後のは完全に妄想でしょ!? というかやめて!」


出発当日、豪華な馬車がレイフォード邸を出た。その後ろを追いかけるのは、なぜか数台の護衛馬車。


そして到着後――


「兄様たち、なんで庭にテント張ってるの!?」


アリアが絶句したその視線の先では、レオンとノアが魔導テントを設営中。既に周囲は照明石で囲まれ、護衛兵が点在していた。


「当然だ。何かあったら即時対応できるよう、寝ずの番だ」


「エマがドン引きしてるからぁ!!」



◆ ◆ ◆


エマの別邸は、小高い丘の上に建てられた静かな石造りの邸宅。庭には花が咲き乱れ、テラスにはティーセットが並べられていた。


「わぁ……素敵……」


アリアが目を輝かせてそう呟いたのも束の間、兄たちが「危険予測魔法」を発動し始めた。


「この鉢植え、転倒の可能性あり」「テーブルの脚、ぐらついている」


「どんな“過保護フィルター”で世界を見てるの!?」


エマは笑ってはいたが、その目には「想定以上」の色が浮かんでいた。



◆ ◆ ◆


夜。女子会らしく、パジャマ姿でお菓子を食べながら恋バナを始めようとしたその瞬間。


「アリア、もう夜遅いからそろそろ就寝の準備を――」


「レオン兄様っ!? なんで入ってくるの! ノックしてええええ!!」


「いや、声が聞こえたから何かあったかと……」

「ちょっとでも笑い声が大きいと“非常事態”にされるとか、何この女子会……」



◆ ◆ ◆


翌朝。


エマの使用人が朝食を用意している中、既に別邸の庭では“兄たちの朝礼”が始まっていた。


「警備交代は五時、周囲の巡回ルートは二重に重ねて……」

「おはようってレベルじゃないよ!? ここ別邸、普通の貴族の家だよ!?」


エマの母親までもが「これがレイフォード家の“妹愛”なのね……」と遠い目をしていた。



◆ ◆ ◆


帰り道。


エマがこっそりアリアに耳打ちする。


「アリア、今度のお泊まり……また、うち来る?」


「……そのときは、兄様たちを置いてくる。絶対」


アリアは硬く拳を握りしめた。


こうして、彼女の“普通のお泊まり会”は兄たちのせいで伝説となり、エマ家の召使いたちの間で長く語り継がれることとなったのだった。


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