第四十二話 妹の“野外学習”は一泊二日!? 兄たちの過保護警備が大騒動に!!
若葉が濃く茂り始めた、初夏の爽やかな朝。アリアの通う初等学園では、学年行事の一環として「一泊二日の野外学習」が実施されることとなった。
「今回は王都郊外のエルダの森キャンプ地に向かいます! 魔法植物の観察や共同炊事など、実地体験を通じて協調性を学びましょう!」
リリアナ先生の声に、生徒たちが一斉に「おーっ!」と応じる。
一方で、教職員の背後――そこには“何故か”並んでいるレイフォード家の黒衣従者たち。そしてその中心には、
「アリア。虫除け魔法の追加刻印と、結界展開用の護符、配布完了」
「テントの設営訓練はしたな? 万が一のために“王都方面への緊急転移式”も携帯しておけ」
ノアとレオンが、真顔で妹の荷物点検をしていた。
「え……兄様たち、ほんとに来るの!?」
「当然だ。アリアが“寝泊まり”するイベントと聞いて、無視できるわけがない」
「あと、食事は持参した。調理班は信用できない」
「……私、学園行事に参加するんですけど!!」
◆ ◆ ◆
現地に到着し、テント設営や班活動が始まる中。
アリアが目を離した隙に、兄たちは“護衛用隠し監視塔”を森の端に設営していた。
「赤外線感知式魔法陣、設置完了」
「監視班A、森側を担当。Bは炊事場周辺を巡回」
(ちょっと待って!? これってもはや軍事演習!?)
生徒たちは「すごいテント!」「なんかかっこいい大人がいる!」とワクワクしていたが、リリアナ先生だけは片眉をひく。
「……あの、あれって正式な参加者では……」
「うちの兄たちです。気にしたら負けです」
夜。キャンプファイヤーを囲むひととき。
歌やゲームに興じる生徒たちの中、アリアもようやく笑顔を取り戻しかけていたが――
「姫、虫が近づいています」
「距離12メートル、緑色の羽根付き、接近」
兄たちの過保護サーチが作動。
ばさっ! と飛んできたただの蛾に対して、護衛魔法が全展開された。
結果――
「わぁっ!?」「火の玉!?」「先生! なんかすごいの飛んできましたー!!」
翌朝。疲労困憊で寝ぼけ眼のアリア。
「……兄様たち、今夜は別の場所で寝て。ほんとに」
「ええい、撤収だ。次は“夜間飛行警備型”で来よう」
「ドローン型魔導装置の導入を検討するか……」
レイフォード兄たちの過保護は、今日もどこまでも高高度飛行中――。




