第三十九話 妹の“図書委員”任命でまさかの波乱!? 読書のはずが監視と護衛がフル稼働!?
初等学園の朝礼で、学年担任のリリアナ先生が明るく告げた。
「さて、今学期の図書委員を発表します。三年生代表、アリア・リュミエール・レイフォードさん」
「――えっ」
教室中が一斉にざわついた。
「レイフォード令嬢って、あの過保護兄たちの……!?」「図書室って、静かなとこじゃないの!? 大丈夫なの!?」「騎士団が見張ってたりしないよね!?」
アリアは席に座ったまま、ぽかんと口を開けていた。
(え、ちょっと待って、なんで私!?)
先生はにこやかに続ける。
「アリアさんは成績優秀、かつ本への理解も深いので選出されました。よろしくお願いしますね」
(いや、理由はわかるけど……兄たちにどう説明すれば――)
◆ ◆ ◆
案の定、屋敷では騒動が起こっていた。
「図書委員……? アリアが? 一人で? 毎日昼休みに図書室で?」
ノアの眉がピクリと動き、レオンはすでに“図書室見取り図”を机に広げていた。
「出入口は二つ! 本棚の陰に死角が! この配置はまずいぞ、絶対に誰かが隠れるって!!」
「いや、まず常駐護衛を三人に増やすべきだ。静音魔法を使ったステルス型なら目立たない」
「あと念のため、本の間に監視式魔導具を仕込んでおく?」
アリアは、スープを飲みながら小さくため息をついた。
「お願いだから、私の“静かな時間”を奪わないで……」
◆ ◆ ◆
図書室の昼休み。
アリアは、静寂の中、借り出し記録を確認しながら机に向かっていた。
(やっぱり本に囲まれてる時間って落ち着くなぁ……)
しかし――
「アリア様! 本棚の影、異常ありませんでした!」
「こちら窓際も異常なしです!」
「……大声やめてぇぇぇ!!!」
護衛の少年騎士たちが、完璧すぎる仕事をしてくれるせいで、図書室の空気が完全に“緊張状態”になっていた。
「ちょっと、あの人たち、誰……?」
「護衛? まさかアリア様の……?」「静かにしてほしい場所で、逆に目立ってない?」
アリアは顔を真っ赤にして、机に突っ伏した。
「もぉぉぉぉ……なんで、普通に過ごすこともできないの……」
◆ ◆ ◆
その日の放課後。
アリアが帰宅すると、レオンが満面の笑みで出迎えてきた。
「今日の巡回報告だよ! 昼休みに近づいた男子はゼロ! あと、お菓子差し入れた先生がいて、感想付きリストもまとめておいたよ!」
「いらない!!!」
アリアは全力で否定した。
ノアは少しだけ微笑を浮かべる。
「安全が確保されたなら、それでいい。……だが、ストレスはためないように」
アリアは、疲れたように笑って言った。
「うん……でも、もう少し、普通の“静けさ”がほしいな……」




