第三十六話 妹のテスト結果発表! まさかの首席に兄たち騒然!? “ごほうび騒動”勃発です!!
学園の空気が、どこかそわそわしていた。
それもそのはず、今日はテスト週間の“結果発表日”。初等部一年生の生徒たちも例に漏れず、朝から緊張で背筋が伸びていた。
アリア・リュミエール・レイフォードも、教室の一角でそっと息を吐いていた。
(ど、どうしよう……やっぱり、出来てなかったら……)
その横で、リリィが励ますように手を握る。
「アリアちゃん、大丈夫だよ! あれだけ勉強してたじゃない!」
「うん……ありがとう、リリィ」
教壇に立ったのは、初等部の主任教師、リリアナ先生。
「皆さん、お待たせしました。定期確認テストの結果を、これから掲示板に貼り出します」
一斉に教室を飛び出す生徒たち。アリアもドキドキしながら掲示板へ向かう。
そして――
「……!? い、一位!? 私が……!?」
そこには、堂々と“首席:アリア・リュミエール・レイフォード”の文字が踊っていた。
◆ ◆ ◆
その情報は、瞬く間に家へと伝わった。
「アリアが首席!? 当然といえば当然だが……!」
ノアがテーブルを叩く。
「お祝いだーっ!! 豪華なご褒美企画だぁぁあ!!」
レオンが叫び、紙に“アリアごほうびプラン案”を書きなぐる。
「温泉旅行! 屋敷全体お姫様デー! ケーキビュッフェ! スイーツパレード!」
「落ち着けレオン、まずは本人の希望を……」
そのとき、階段からゆっくりとアリアが降りてきた。
「ただいま……え? なにこの空気……」
「アリア! 首席おめでとう!」
「我が妹ながら、よくやった!」
兄たちが次々とハグしにくる。
「う、うれしいけど……ちょっと、くるし……」
「それでだ。アリア、どんなご褒美がほしい? なんでも言ってみろ」
「えっと……じゃあ……リリィちゃんやエマちゃんと、放課後に一緒にカフェ行ってみたいなって……」
「ダメだ」
「却下」
即答。
「なっ、なんで!? 友達とお祝いしたいだけだよ!?!?」
「兄抜きで行動するなど危険すぎる」
「よって我々が同行する」
「いやいやいや、三人で行くから意味あるのっ!!」
「……では、店を貸し切ってもらおう。護衛付きで」
「お兄様たちの“ごほうび”って、なんでこう……私の自由はどこへ……」
◆ ◆ ◆
その翌日――。
貸し切りとなった人気のカフェ『白百合亭』の窓辺席。
「ほんとに貸し切っちゃったんだ……」
アリアは呆れながらも、リリィとエマと一緒に紅茶を手にする。
「でも静かで快適! ありがとう、アリアちゃんのお兄様!」
「お菓子も豪華……これ、特別メニューよ!」
三人で笑いながらティータイムを楽しむその裏では――
「双方向魔力感知魔道具、異常なし」
「入り口にて魔力結界作動中。侵入ゼロ」
カフェの裏手、見えない場所にて張り込みをするノアとレオン。
「……監視というより、もはや傍観……」
「いや、我々は彼女の自由と安全を守っているのだ」
◆ ◆ ◆
その夜。
アリアはふかふかのベッドの上で、天井を見上げながらひとり呟いた。
「首席はうれしかったし、カフェも楽しかった……でも……」
ご褒美に自由がついてこないあたり、複雑な気分だった。
とはいえ――兄たちの愛情と尽力は、誰よりも感じている。
「……次も頑張ろう」
そう決意するアリアの枕元に、ひっそりと添えられた“手書きの応援カード”があった。
『妹へ。誇りに思う。次の挑戦も一緒に乗り越えよう。兄より』
アリアはそれを抱きしめて、優しく微笑むのだった。




