表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/172

第三十五話 妹の“テスト週間”に兄たちが動く!? 過保護すぎる対策講座が始まりました!!

春の陽気もどこへやら、学園では“定期確認テスト週間”が始まっていた。


初等部一年生といえども、魔法理論・魔力制御・魔導具知識・貴族学など多岐にわたる分野での筆記や実技が課される。


アリア・リュミエール・レイフォードは、その朝――自室のベッドでぼんやりと目を覚ました。


(今日はちょっとゆっくり寝よう……昨日、授業で“先生役”やったし)


そう思ったその瞬間だった。


「アリア、起きろ! 朝の魔法理論講座が始まるぞ!!」


「えっ……まだ、夜明け前……?」


「違う! すでに五時十五分だ!」


ノアがシャツとベスト姿で入ってきて、机にプリントとペンを用意している。


「では第一問。“魔力の定常波”について簡潔に説明せよ」


「ひぃぃぃ……」


◆ ◆ ◆


一階のホールでは、レオンが魔力調整ヨガのマットを敷き詰めていた。


「アリアー! 朝の身体ほぐしタイムだよ! 魔力の流れは筋肉から! さ、深呼吸っ!」


「うう……お兄様たち、どうしてそんなに気合い入ってるの……?」


「当然だ! 君が“飛び級聴講生”である以上、他の子たちより出来て当たり前という空気がある!」


ノアが理論的に語る横で、レオンは笑顔で彼女の頭を撫でる。


「プレッシャーなんて感じなくていいよ、アリアはアリアらしく。けど、全力でサポートするからね」


◆ ◆ ◆


その後もスケジュールは容赦なく続いた。


・朝六時 詠唱訓練(短詠・中詠・連続詠唱)

・朝七時 記述演習(魔導具構造記述式)

・朝八時 テスト範囲の復習まとめ演習


「ふぇぇ……まだ朝の授業が始まってないのに……体力がぁ……」


アリアはぐったりとソファに倒れ込みながら、ブランケットに包まっていた。


「まだまだこれからだ」

ノアは淡々と次のテキストを広げる。


「お兄様……その熱意、ちょっとだけ緩めても……?」


「甘やかしてはならん。お前の未来のためだ」


「でも、この“未来”って、私の意志より兄たちのスケジュールで動いてる気が……」


「気のせいだ」

レオンが爽やかに言い切る。


◆ ◆ ◆


放課後、アリアは学園の自習室にいた。


目の前には分厚いノートと色とりどりのペン。

その横では、リリィとエマが羨ましそうにのぞきこんでいた。


「アリアちゃんって、ほんと字が綺麗で図も上手よね……」

「しかも色分け完璧! それってもしかして、お兄様方が?」


「うん……一ページ書くごとに、“ここは見やすくまとめること”って三回くらい言われて……」


「過保護っていうか、もはやプロ講師じゃない?」


「レオンお兄様は“音読は心を育てる”って、毎晩読み聞かせしてくれるし……」


「それ幼児教育の頃から変わってないのね!?」


◆ ◆ ◆


そして、テスト当日。


教室に入るアリアの後ろ姿は、なぜか背筋が伸びていた。


(あれだけやったんだもん……大丈夫)


心配と緊張はある。けれど、ノートを見返すだけで、兄たちの顔が浮かぶ。


(ノアお兄様の厳しすぎる理論指導……レオンお兄様の癒しマッサージとお菓子支援……)


「うん、頑張ろう!」


そして、教室内。


「アリア・リュミエール・レイフォード、答案提出します!」


先生が笑顔で受け取り、目を通すと、少しだけ目を見張る。


(なんて整然として、深い内容なの……七歳の答案とは思えない)


アリアは、にっこりと笑って席に戻った。


ノアとレオンの兄バリアは過剰だったけれど――その愛と努力は、ちゃんと実を結んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ