表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/165

第三十話・後編 まるでおとぎ話の舞踏会!? 妹の笑顔に兄たちが涙した夜

誕生日当日。


アリアは、白と金の刺繍が施されたドレスを身にまとい、ノアから「ちょっとだけお散歩しない?」と誘われて庭へ出た。


「え、今日は……何かあるの?」

「さぁ、どうだろうね」


少し困ったように笑う兄に手を引かれながら、アリアは屋敷の中庭へと向かった。


扉が開いた瞬間、風が舞い、花びらが空に踊る。


「……えっ?」


目の前に広がっていたのは、まさに夢のような光景だった。


赤絨毯の上には煌びやかな灯がともり、純白のテントが並び、空には浮遊魔法で吊るされたランタンが優しく揺れていた。

中央には、大きなバラのアーチ。そして、そこを通って一歩踏み出すと――


「アリア様、お誕生日おめでとうございます!」


招待客たちの祝福の声が、一斉に響いた。


「……っ!」


息を呑むアリアの頬に、ふわりと風が撫でた。

その風の先、舞踏会用の仮設ステージの上では、兄たちが静かに一礼する。


「君が生まれてくれて、本当にありがとう」

ノアの声が、温かく響く。


「これからも、何があっても俺たちが味方だからな」

レオンも、瞳を潤ませながら笑った。


ふたりの言葉に、思わず目がうるむアリア。


そこへ現れたのは、招待されていた王太子アルヴィン。


「アリア嬢、おめでとう。……この国の未来は、きみのような人が照らしてくれると、私は信じている」


「そ、そんな……っ」


舞踏会は、甘い音楽と笑顔に包まれながら進んでいった。

美しいケーキ、贈り物、笑顔、ダンス。

けれど――そのどれよりも、アリアの心に響いたのは、兄たちの涙だった。


「ノア兄様、レオン兄様……」


「うっ……こんな立派に育って……っ」

「今日まで……どれほど楽しみにしてたか……!」


兄たちは感無量で、もはや理性を手放しかけていた。


「ちょ、ちょっと! お兄様たち! 泣かないでよ!」


「無理だーっ!!」


ふたりが顔を手で覆ってしゃくりあげる姿に、周囲の貴族たちは優しい笑いをこぼした。


そして最後に、アリアはステージの上で一礼して、笑顔で言った。


「わたし、レイフォード家に生まれて、本当に幸せです」


その言葉に、兄たちはまたも崩れ落ちた。


「もう無理……尊い……」


こうして、レイフォード家史上最大の“サプライズ(バレバレ)舞踏会”は、温かな涙と笑顔に包まれて幕を下ろした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ